2025年2月16日付の読売新聞オンラインが、
『立体駐車場のチェーンに油塗っていたメンテナンス会社社長、装置と壁にはさまれ死亡』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を引用し、事故原因と再発防止策を考察しました。
《記事の引用》(※一部、日付の表現を筆者が編集)
2025年2月14日午後1時30分頃、さいたま市北区宮原町のマンションの機械式立体駐車場内で、作業をしていた同市西区植田谷本、設備メンテナンス会社社長(59)が装置と壁の一部の間にはさまれ、搬送先の病院で死亡した。
埼玉県警大宮署によると、関根さんは従業員2人と機械式立体駐車場内のチェーンに油を塗る作業中、車を載せるパレットと、壁の上部にあった突起物との間にはさまれたという。
大宮署が事故原因を調べている。
(記事の引用、ここまで)
《筆者の考察》
<機械式立体駐車場事故の原因と再発防止策>
以下に、この事故の原因と、今後同様の事故を防ぐための対策について考察しました。
1. 事故の原因
本事故は、機械式立体駐車場のメンテナンス作業中に発生しており、いくつかの要因が重なった結果であると考えられる。
1)作業中の安全対策不足
機械設備の点検・修理を行う際には、機械の誤作動を防ぐために電源を完全に遮断することが原則である。
しかし、今回のケースでは、電源が完全にオフになっていなかった可能性がある。
メンテナンス時の電源カットが不十分で、機械が誤作動しパレットが動いた可能性がある。
あるいは、作業手順の省略により、意図しない機械作動のリスクが高まった。
2)駆動チェーンの注油作業の危険性
駆動チェーンの注油作業は、機械を動かしながら行った方が効率的であるため、ベテランほど危険を冒して作業を続けてしまう傾向がある。
作業を時短するために、動作中の機械に接触する作業を行っていた可能性がある。
ベテランの作業員ほど、「慣れ」により、安全対策を省略しがち、になる。
3)監視者や安全確認の不足
機械式立体駐車場は構造が複雑であり、作業中に一人が動きにくい場所に閉じ込められる危険がある。
監視者(安全管理者)が十分に配置されていなかった可能性がある。
作業は社長と従業員2人で行っていたが、監視者(第三者)の配置がなかった可能性が高い。
危険箇所での作業時には、複数人の確認を行うルールが必要だが、それが徹底されていなかったと考えられる。
4)経験豊富な作業者でも年齢による判断力の低下
社長自身が現場に出ていたことは、人手不足や業務効率化のための判断だった可能性が高い。
しかし、年齢による判断力や反射能力の低下が影響し、危険な状況を回避できなかったと考えられる。
2. 再発防止策
同様の事故を防ぐためには、作業手順の見直し、機械の安全対策強化、作業員の意識改革が必要となる。
1)メンテナンス作業の電源完全遮断の徹底
機械式立体駐車場のメンテナンス時には、以下の電源管理ルールを厳格化すべきである。
・ブレーカーの完全遮断(物理的に電力供給をカットする)
・誤作動防止策の実施(スイッチを外す、カバーを設置する、配線を抜く)
・第三者によるブレーカー管理(作業員以外が誤って電源を入れないよう管理)
・電源が完全に遮断されていない状態で作業を行うことを厳禁とするルールを徹底し、チェックリストを義務化すべきである。
2)動作中の機械への接触作業を禁止
・駆動チェーンの注油作業は、機械を完全停止させて行うルールを徹底する。
・「動作中の機械への接触禁止」ルールを社内規定に明記し、厳格に管理する。
・安全第一の意識を浸透させ、作業効率よりも安全性を優先する文化を根付かせる。
3)監視者の配置と安全確認の義務化
・作業チームには必ず監視者を配置し、危険箇所での作業時には監視者の確認を義務付ける。
・声掛けや指差し確認を徹底し、作業者同士が互いに安全を確認し合う習慣をつける。
・安全管理マニュアルを改定し、第三者が作業の安全を保証する仕組みを導入。
4)作業員の年齢に応じた業務の見直し
・ベテラン作業員の判断力や体力の低下を考慮し、負担の大きい作業はチーム制で対応する。
・50歳以上の作業員には、身体的負担が大きい作業を避けるための役割分担を検討。
・定期的な安全研修を実施し、ベテラン作業員にも最新の安全基準を学ばせる。
5)安全装置の導入
機械式立体駐車場は危険性が高い構造を持つため、より高度な安全装置の導入が求められる。
・非常停止ボタンを増設し、作業者が緊急時に素早く停止できる環境を作る。
・人感センサーを設置し、作業員が危険エリアにいる際には機械が動作しない仕組みを導入。
・カメラ監視システムの導入により、作業中の危険行動をリアルタイムで監視。
3. まとめ
今回の事故は、機械式立体駐車場のメンテナンス作業における安全対策不足が原因で発生したと考えられる。
特に、「電源の完全遮断」「動作中の機械への接触禁止」「監視者の配置」「ベテラン作業員の判断力低下への対応」、といった点が不十分だったことが、事故の要因となった。
今後、同様の事故を防ぐためには、
・メンテナンス作業時の電源遮断の義務化
・動作中の機械への接触禁止の徹底
・監視者の配置と安全確認の強化
・作業員の年齢に応じた業務の見直し
・最新の安全装置の導入
が求められる。
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