2025年2月2日付の「IT Mediaビジネス」が、
『認知症の利用客に、どう対応する? 1万9000人の従業員をサポーターに育てたヨーカ堂の狙い』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、イトーヨーカ堂のビジネスや社会に与える影響について考察しました。

《記事の要約》
<イトーヨーカ堂、認知症対応を強化 従業員研修や地域連携でサポート体制構築>
イトーヨーカ堂は、認知症の来店客に配慮した対応を強化している。
2014年から導入している「認知症サポーター養成講座」を通じて、従業員の意識向上と対応力の向上を図るとともに、地域との連携を深めている。

◆従業員の不安を軽減し、適切な接客を実現
認知症のある顧客が店舗を訪れた際、「小銭の計算が難しい」「出口が分からなくなる」といったケースが発生し、従業員が対応に苦慮する場面があった。
こうした事態を解決するため、同社は従業員向けに認知症に関する正しい知識を学ぶ講座を実施。地域包括支援センターと連携し、1万9000人(全従業員の6割)が受講している。

この研修では、認知症の症状や特性、適切な接客方法を学び、ビデオ研修や質疑応答を通じて理解を深める。
参加した従業員からは「声のかけ方が分かるようになり、安心して接客できるようになった」との声が上がっている。
さらに、受講内容が家族の介護にも役立つ という意見もあり、従業員の私生活にも良い影響を与えている。

◆利用者の声を活かした店舗改善
イトーヨーカ堂は、認知症当事者の声を活かし、より利用しやすい店舗作りを進めている。

八王子店(東京都):2022年、市内の認知症当事者に実際に買い物してもらう「練り歩き隊」を実施。不便な点をヒアリングし、店内表示の改善を行った。
桂台店(横浜市):「スローショッピング」を月1回開催。高齢者が自分のペースで買い物できるよう、送迎バスやボランティアの介助を提供。
従業員からも「高齢者向けのフロアマップの作成」や「消耗品・日用品の陳列位置の見直し」などのアイデアが寄せられ、実際の店舗運営に反映されている。

◆他社にも広がる高齢者対応の取り組み
認知症サポーター養成講座は、総合スーパーや金融機関など、高齢者との接点が多い業種で導入が進んでいる。

「イオン」
サービス業向け資格「サービス介助士」の取得を推進。埼玉県のイオンレイクタウンでは、高齢者向けの案内サインや優先ベンチを整備。
「平和堂」
イトーヨーカ堂と同様の講座を導入し、従業員の対応力向上に取り組む。
これらの施策はCSR(企業の社会的責任)の一環であると同時に、高齢者の外出機会を増やし、売上向上にも寄与することが期待されている。
(記事の要約、ここまで)

《筆者の考察》
<イトーヨーカ堂の施策がビジネスや社会に与える影響>
高齢化が進む日本社会において、小売業界は「買い物しやすい環境」の提供が求められている。
イトーヨーカ堂の認知症対応策は、企業の社会的責任(CSR)を果たすと同時に、顧客層の拡大や企業イメージ向上にもつながる。
以下に、ビジネス面と社会面での影響 を整理し、今後の展開について考察する。

1. ビジネスへの影響
1)高齢者市場の開拓
日本では 65歳以上の人口が3,600万人を超え(2024年時点)、高齢者向けビジネスの重要性が増している。
認知症対応を進めることで、イトーヨーカ堂は高齢者層の取り込みに成功 し、他のスーパーとの差別化を図ることができる。

また、高齢者が外出を控えると、買い物機会が減少し売上にも影響が出る。
買い物しやすい環境を整えることで、高齢者の「外出控え」を防ぎ、来店頻度を維持する ことが可能となる。

2)従業員のスキル向上と労働環境の改善
認知症サポーター養成講座を受講することで、従業員は接客のスキルを向上 させ、安心して仕事ができるようになる。
また、接客ノウハウを持つことで クレーム対応の負担が軽減 される可能性がある。

さらに、認知症のある家族を持つ従業員にとっても、この講座は介護の参考になるため、企業の福利厚生の一環としても有効 だ。

3)地域との関係強化
イトーヨーカ堂は地域包括支援センターと連携し、認知症支援ネットワークを構築している。
これは、単なるビジネスではなく、地域社会に貢献する企業 という評価につながる。

また、自治体との協力を強化することで、地域の高齢者福祉政策にも貢献し、企業の存在価値を高める効果がある。

2. 社会への影響
1)認知症への理解促進
イトーヨーカ堂の取り組みは、従業員だけでなく、地域社会全体の認知症理解を深める効果がある。
認知症のある人が買い物をしやすくなることで、社会全体の受け入れ体制が整い、認知症当事者の生活の質(QOL)が向上 する。

2)高齢者の自立支援
買い物は、高齢者にとって重要な社会参加の機会 であり、認知症予防にもつながる。
ヨーカ堂の「スローショッピング」などの施策は、高齢者が「自分で選び、購入する喜び」を得られる場を提供している。

これにより、高齢者の自信回復や生活の質の向上 が期待される。

3)企業の社会的責任(CSR)のモデルケース
イトーヨーカ堂の取り組みは、他の企業にも影響を与え、認知症対応を企業活動の一環とする流れを加速 させる可能性がある。
イオンや平和堂が既に同様の施策を導入しているように、今後、さまざまな業界で高齢者対応が広がるだろう。

3. 今後の展開
イトーヨーカ堂の施策は、単なるCSRではなく、ビジネス戦略としても有効 だ。
今後、以下のような展開が予想される。

・認知症に対応した店舗デザインの強化(案内表示の改善、買い物サポートの充実)
・デジタル技術との融合(AIチャットボットや音声案内の導入)
・他企業・自治体との連携拡大(介護事業者や医療機関との協力)

高齢化が進む中、イトーヨーカ堂の取り組みは、今後の小売業界の在り方を示す重要なモデルとなるだろう。


 

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