2025年1月16日付の朝日新聞デジタルが、
『出願目前で入試とりやめ、清泉女学院大 文科省「ルール違反では」』
と題した見出しの記事を報じていました。
一般入試を目指して清泉女学院大への入学を目指していた受験生にとっては、「酷い話し」ですが、感覚的には、大学側は、「少子化で経営面を考えたら推薦、AO入試等でできるだけ確実に定員を確保したい」、「文科省のお達しで定員順守が厳格化されており、定員がすでに確保出来たので、一般入試を実施しても入学させられない」、「一般入試でうち(清泉女学院大)を第1志望にしている人は限定的」・・・などの判断の結果ではないかと思います。
以下にこの記事を要約し、「大学定員順守の厳格化」とその影響などについて、考察します。
《記事の要約》
長野県長野市にある清泉女学院大学(2025年4月から「清泉大学」に改名予定)が、新設する人文社会科学部の一般選抜入試を今月予定していたにもかかわらず取りやめたことが明らかになりました。大学は「昨年中に実施した総合型選抜や学校推薦型選抜で、予定の定員に達したため」と説明しています。しかし、文部科学省は「受験生に不利益となる変更を行わない」という大学入試のルールに反するとして問題視し、大学から事情を聴取する方針を示しました。
募集終了の発表は昨年12月23日に大学の公式ホームページで公表されました。今回対象となった人文社会科学部は、清泉女学院大学が共学化するにあたり新設された学部で、計32人プラス若干名を募集予定でした。しかし、大学独自の奨学金制度を伴う特待枠やAO(アドミッションズ・オフィス)入試によって定員が満たされたため、一般選抜を中止する判断が内部でなされたということです。
中止に対しては受験生の保護者や進路指導担当者から「受験しようと思っていたのに」という不満の声が寄せられています。同大学の事務局長は「2024年内の入試で定数が満たされるという想定外の結果となった。受験生や保護者には申し訳なく思う」と説明しています。
文科省は「異例の事態」として、一般入試の中止を問題視しています。この一件は、定員超過や大学運営の厳格化が背景にあると考えられ、今後の大学経営にも影響を与える可能性があります。
(記事の要約、ここまで)
※筆者注:
東京都品川区に「清泉女子大学」は、清泉女学院大を運営する「学校法人清泉女学院」から1973年に分離独立(学校法人清泉女子大学)しましたが、2025年4月に「学校法人清泉女学院」と統合し、清泉女子大学は「学校法人清泉女学院」の設置大学として存続します。
また、清泉女学院大は、全学科の共学化により、2025年4月から大学名が「清泉大学」に変更になります。
《筆者の考察》
<一般入試中止の背景と影響、同様の問題が他大学で発生する可能性>
清泉女学院大学の一般選抜中止には、日本の大学を取り巻く厳しい現実が背景にあります。
ここでは、今回の問題の背景や、同様の事態が他大学で発生する可能性、そして影響について分析します。
「背景」(少子化と文科省の大学定員規制)
少子化が進む日本では、大学全入時代が現実となりつつあります。
その結果、多くの大学が定員割れを起こし、経営難に直面しています。
一方で、文部科学省は大学の定員を厳格に管理する姿勢を強め、定員超過が続いた場合には私学助成金を削減する措置を導入しました。
この助成金カットは大学経営にとって大きなリスクとなり、多くの大学が定員管理を厳格化する要因となっています。
清泉女学院大学が一般選抜を中止した理由の一つは、すでに定員が埋まっていたことです。
一般選抜で追加合格者を出すと定員超過のリスクが高まり、結果として助成金削減の対象となる可能性がありました。
これを避けるために、一般選抜を断念したと考えられます。
「一般選抜中止の影響」
このような突然の一般選抜中止は、大学の信用失墜を招くリスクがあります。受験生や保護者からの信頼を失い、翌年度以降の志願者数減少につながる恐れがあります。
また、一般選抜の実施は学力を軸とした選抜の基本であり、これを中止することで大学の評価が低下する可能性もあります。
特に共学化を控える清泉大学では、新たなイメージ作りが必要な中でのこの決定は、戦略的に逆効果だったと考えられます。
「同様の問題が他大学で発生する可能性」
今回のケースは清泉女学院大学に限った話ではありません。
少子化に伴い、特に地方の私立大学では同様の問題が多発する可能性があります。
大学が推薦入試やAO入試に力を入れることで早期に定員を確保する流れが広がれば、一般選抜が後回しにされ、場合によっては今回のように中止されるケースが増えるでしょう。
また、入試の多様化が進む中で、入試制度そのものが複雑化し、受験生や保護者に不透明感を与えることも懸念されています。
「老舗大学の教訓と将来の課題」
長期的に見て、一般選抜を軽視することは大学の存続にマイナスの影響を与える可能性があります。
学力に基づく公平な選抜を中止することで、「多様性」という名目の下、大学の基準が曖昧になる懸念があります。
また、一般入試を避けた受験生が他大学に流れることで、他の大学にも競争が波及し、教育の質が低下するリスクがあります。
<結論>
「大学運営の透明性と受験生への配慮が求められる」
清泉女学院大学の一般選抜中止問題は、少子化と定員管理の厳格化が引き起こした象徴的な事例です。
今後、同様の問題が他大学で発生しないよう、以下の点が重要です。
1)早期に明確な入試方針を発表する
受験生や保護者に不安を与えないため、入試制度を明確に示し、入試中止などの変更が必要な場合でも、早い段階で公表することが必要です。
2)文科省の柔軟な対応
文科省は定員管理の厳格化を進めていますが、一律的なルールだけでなく、地方大学や小規模大学の実情を踏まえた柔軟な支援が必要です。
3)長期的な大学経営の視点
目先の定員確保だけでなく、教育の質や大学ブランドを維持するための取り組みを進めるべきです。
特に一般選抜の重要性を再認識し、学力選抜の公平性を維持する努力が必要です。
日本の高等教育が変化する中で、今回の事例が大学運営のあり方を見直す契機となることを期待します。
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