2025年1月16日付の朝日新聞デジタルが、
『介護事業者の休廃業、昨年612件で最多に 訪問介護が7割超す』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を引用し、介護事業者の休廃業の要因とそれによる影響、および政府や行政が取組むべき政策について考察しました。
《記事の引用》(※一部筆者が編集)
2024年の介護事業者の休廃業・解散件数は612件に達し、前年(510件)より2割増えたことが15日、わかった。
調査した東京商工リサーチによれば、データがある2010年以降で最多となった。
調査によれば、内訳は訪問介護事業が448件と全体の7割以上を占め、通所・短期入所事業が70件、有料老人ホーム25件、その他事業が69件だった。
東京商工リサーチが先行して、2025年1月上旬に公表した介護事業者の倒産件数は172件で、介護保険制度が始まった2000年以降、最多となった。
うち約半数が訪問介護だった。
訪問介護をめぐっては、2024年度に実施された介護報酬の見直しで基本報酬が引き下げられ、「在宅介護の崩壊につながる」との危機感が現場で広がっている。
今回の調査で、訪問介護は倒産のみならず休廃業も急増している実態が浮き彫りとなった。
(記事の引用、ここまで)
《筆者の考察》
<介護事業者の休廃業の要因とそれによる影響、政府や行政が取組むべき政策>
2024年の介護事業者の休廃業・解散件数が612件に達し、過去最多となりました。
特に訪問介護事業が全体の約7割(448件)を占め、深刻な状況が浮き彫りになっています。
倒産件数も172件と過去最多を記録しており、介護現場の厳しい現実が伺えます。
この状況の背景にはいくつかの要因があり、それに伴う影響も大きいです。
また、政府や行政が講じるべき対策についても検討が必要です。
1.介護事業者の休廃業・倒産の要因
(1) 介護報酬の引き下げ
2024年度に実施された介護報酬の引き下げは、訪問介護事業者に大きな打撃を与えました。
報酬引き下げは、移動時間が無報酬である訪問介護にとって特に深刻であり、事業の収益性を低下させ、経営継続を困難にしています。
地方や移動負担の大きい地域では、この影響がさらに顕著です。
(2) 人手不足
介護業界は慢性的な人手不足に直面しています。介護職員は、重労働にもかかわらず賃金が低く、待遇改善が進んでいません。
政府の支援策も現場の職員に直接届かず、離職率が高い状況が続いています。
(3) 地域格差
人口密集地域では比較的収益が安定している一方で、地方では利用者が少なく、移動時間も長いため、事業の収益性がさらに低下しています。
地方の訪問介護事業者は特に厳しい経営環境に置かれています。
(4) 経営基盤の弱さ
介護事業者の多くは中小・零細規模であり、財務基盤が脆弱です。
物価高やコロナ禍による影響を受けた結果、運転資金が枯渇し、経営が立ち行かなくなるケースが増えています。
2. 休廃業・倒産による影響
(1) 在宅介護の崩壊
訪問介護事業者の休廃業は、在宅介護を必要とする高齢者やその家族に直接的な影響を及ぼします。
訪問介護が受けられなくなることで、家族介護の負担が増し、介護離職や要介護者の生活の質の低下を招く恐れがあります。
(2) 公的介護施設への負担増加
訪問介護の崩壊により、公的施設への需要が増加することが予想されます。
しかし、施設の数や人材には限りがあり、すぐには対応できません。
その結果、介護サービスの供給不足が顕在化する可能性があります。
(3) 地域間格差の拡大
地方での訪問介護事業者の休廃業が進むことで、地域間の介護格差が一層深刻化します。
地方では、介護サービスを受けられない高齢者が増える懸念があります。
3. 政府や行政が取組むべき政策
(1) 介護報酬の見直し
介護報酬の引き下げは、経営を圧迫する大きな要因です。
在宅介護の重要性を再認識し、訪問介護を含む介護報酬の引き上げが必要です。
また、移動時間への報酬支給など、事業の実態に即した報酬体系の見直しも求められます。
(2) 賃金改善と人材確保
介護職員の待遇改善が急務です。賃金を引き上げ、労働環境を整備することで、介護職の魅力を高め、離職率を低下させる必要があります。
また、外国人労働者の受け入れ拡大や職業訓練プログラムの充実により、人材不足を解消する施策を進めるべきです。
(3) 小規模事業者への支援
中小規模の事業者に対しては、財務支援が重要です。
低金利融資や補助金の提供、経営コンサルティングを通じて、経営基盤を強化する必要があります。
(4) 地域包括ケアシステムの強化
地方での訪問介護事業者の崩壊を防ぐために、地域包括ケアシステムを推進する必要があります。
地域全体で医療・介護・福祉が連携し、高齢者を支える仕組みを整備することが重要です。
(5) DX(デジタル技術)の導入
介護事業者の業務効率化を進めるため、デジタル技術を活用する必要があります。
訪問スケジュールの最適化や記録管理の自動化を通じて、労働負担を軽減し、生産性を向上させる取り組みが求められます。
<結論>
介護事業者の休廃業や倒産は、少子高齢化社会における深刻な課題です。
訪問介護を中心に事業の崩壊が進むと、高齢者の生活の質の低下や地域間格差の拡大につながります。
政府と行政は、介護報酬の適正化、人材確保、小規模事業者の支援を通じて、持続可能な介護体制の構築に努める必要があります。
また、地域包括ケアの推進とデジタル技術の活用を組み合わせ、現場の効率化とサービス向上を実現することが求められます。
これらの対策を講じることで、介護崩壊を防ぎ、高齢者が安心して暮らせる社会を目指すべきです。
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