2024年12月25日付の産経新聞が、
『海保機長、時間余裕なく判断鈍る「ハリーアップ症候群」か 羽田事故報告で元機長ら指摘』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、ハリーアップ症候群が発生した背景を考察しました。
《記事の要約》
<羽田空港の航空機衝突事故 「ハリーアップ症候群」が影響か?>
運輸安全委員会が2024年12月25日に公表した羽田空港での航空機衝突事故の経過報告について、専門家たちは海上保安庁(海保)機の機長が「ハリーアップ症候群」に陥った可能性を指摘しています。
この心理的状態は、時間的余裕がない状況で判断力が鈍ることを指します。
<遅延によるプレッシャーが引き金か>
海保機は、機材変更などで出発が遅れ、さらに通常の滑走路全体を使わず途中から離陸する「インターセクション・デパーチャー」を選択しました。
このように、離陸準備を急ぐ状況が事故の一因と考えられています。
元日本航空機長の土井厚氏は、「原因がそれだけとは断定できないが、世界の航空事故においても、ハリーアップ症候群が引き金になったと見られるケースは多い」と述べています。
また、土井氏はインターセクション・デパーチャーがどのような経緯で決定されたのかが不明確であり、「機長が確認を曖昧にしたまま、副操縦士が管制官に応答するなど、通常の手順に違和感を覚える」と話します。
音声記録を直接聞くことで、疑問点が解消される可能性があるとも指摘しました。
<管制官の対応にも課題>
航空評論家の青木謙知氏は、「海保機が離陸順位1位と言われ、進入許可を得たと誤解した点が問題だが、管制官が海保機の動きを十分に把握していなかった責任もある」と述べています。
さらに、米国の国家運輸安全委員会(NTSB)が独立した組織であるのに対し、日本の運輸安全委員会は国土交通省の外局に属している点を指摘。
青木氏は、「経過報告とはいえ、再発防止策を提示するべきだった。海保機長も管制官も同じく公務員であるため、組織内部での対応が曖昧になっている印象を受ける」と述べました。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》(ハリーアップ症候群の背景と再発防止策)
<ハリーアップ症候群の背景>
「ハリーアップ症候群」は、時間に追われた状況で冷静な判断ができなくなる心理的状態を指します。
今回の海上保安庁機長がこの状態に陥った背景には、以下の要因が考えられます:
1)出発遅延のプレッシャー
機材変更やスケジュールの遅延により、機長が早急に出発を求められる状況に置かれたことが心理的負担を増大させた可能性があります。
2)インターセクション・デパーチャーの選択
通常の滑走路全体を使用せず、途中から離陸するインターセクション・デパーチャーは時間短縮の手段として選ばれることがあります。
しかし、この選択は操作の複雑化や確認不足を招くリスクがあります。
3)連携不足
機長と副操縦士の間で確認手順が曖昧になり、管制官への応答が不適切であった点も事故につながる要因と考えられます。
4)管制官の状況把握の不十分さ
海保機の動きを十分に追えていなかった管制官側の対応も問題を複雑化させたと指摘されています。
<羽田空港の管制官が講じるべき再発防止策>
1)管制業務の精度向上
・管制官が航空機の動きを正確に把握できるよう、レーダーや通信機器の更新を行い、動態確認を強化します。
・管制官の状況認識を高めるため、定期的なシミュレーション訓練を実施し、複数機が同時に離着陸する状況への対応力を向上させます。
2)明確な指示の徹底
・管制指示を出す際、言葉や用語が曖昧にならないよう、具体的で簡潔な指示を徹底します。
・パイロット側からの確認応答が不十分な場合、再度確認を求める手順を取り入れ、双方の認識のずれを防ぎます。
3)コミュニケーションの強化
・機長、副操縦士、管制官の間で双方向のコミュニケーションを徹底するためのガイドラインを見直します。
・「疑問点があれば必ず確認する」文化を育成し、迅速かつ確実な情報共有を目指します。
4)作業手順の見直し
・出発遅延が発生した場合でも、安全確認を優先する手順を強調し、パイロットがプレッシャーを感じない運航手順を策定します。
・インターセクション・デパーチャーのような特殊手順を選択する際には、事前確認を徹底させる規定を設けます。
5)運輸安全委員会の役割強化
・運輸安全委員会の独立性を高め、事故調査の透明性と公平性を確保します。
・経過報告段階であっても、再発防止策を提示し、航空関係者が事故を教訓として学べる環境を整備します。
<まとめ>
今回の事故は、時間的プレッシャーが作業手順や安全確認の曖昧さを招き、結果的に「ハリーアップ症候群」に陥ったことが一因とされています。
また、管制官の状況把握の不十分さや指示の曖昧さも事故の一因となりました。
再発防止には、管制業務の精度向上、コミュニケーションの改善、手順の見直しが必要です。
これらの対策を講じることで、航空機の安全運航を支える仕組みをより強固なものにすることが求められます。
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