2024年12月14日付の現代ビジネスが、
『「スマホをパクってるのは絶対にスキマバイトの連中だろ」…150億円の赤字に転落した「ヤマト運輸」で「iPhone窃盗」が頻発している「謎」』
という見出しの記事を報じていました。

ご承知の通り、ヤマト運輸は、2024年問題を見据えて、ポスト投函サービスの「クロネコDM便」を2024年1月末で終了し、多くの個人事業主の委託配送者との契約を解除しました。
その結果、委託配送業者の多くが担当していた「早朝仕分け」の業務の質が下がり、宅配業務に遅延や荷物の損傷など問題が発生しているそうです。

以下にこの記事を要約し、問題点を考察しました。
《記事の要約》
<ヤマト運輸で配送現場が混乱 赤字転落と「スキマバイト」の影響が浮き彫りに>
ヤマト運輸の配送現場が深刻な混乱に陥っています。
東京都内の営業所では、朝の出勤時に200個以上の未仕分け荷物が積み残され、セールスドライバーが出発できない事態が日常化しているといいます。
この混乱の背景には、「スキマバイトアプリ」を利用したスタッフの急増や、コスト削減を優先した個人事業主の契約解除が大きく影響しているようです。

<2024年問題とヤマト運輸の苦境>
2024年11月、ヤマトホールディングスが2024年度上期決算で150億円の営業赤字に転落したと発表しました。
これには、荷物単価の引き上げ交渉の難航や人件費の上昇、貨物専用機導入のコストが影響しました。
また、「2024年問題」と呼ばれるトラックドライバーの労働時間規制強化を見据えた改革が業務に大きな打撃を与えています。

ヤマトは「クロネコDM便」の廃止に伴い、25,000人の個人事業主との契約を終了。
一方で、日本郵便との分業で新サービス「クロネコゆうメール」を始めたものの、これにより配送現場の人手不足が深刻化しました。

<スキマバイトがもたらす現場の混乱>
契約解除により、長年仕分け作業を担ってきたパートスタッフが辞職。その穴を埋めるために「スキマバイトアプリ」で単発スタッフを雇用していますが、不慣れな人材による作業ミスや荷物の積み込み不備が頻発しています。
以下はドライバーから挙がる不満の一部です。

・配達時間指定の荷物が積み込みの奥に配置され、遅配が発生。
・荷物が正しく仕分けされておらず、別のトラックに誤って積まれる。
・軽い荷物の上に重い荷物が置かれることで、荷物が破損する。

さらに、「iPhone」の盗難が頻発しているとの証言もあります。
これにより、高価な荷物は厳重管理が必要となり、現場の負担がさらに増大しています。

<繰り返される「宅配クライシス」>
12月初旬には、神奈川県内の営業所で大量の荷物が遅配状態に陥り、2016年に発生した「宅配クライシス」の再来を懸念する声も上がっています。
当時のネット通販急増に対応できなかった教訓が、再び浮き彫りになっています。

ヤマト運輸は、現場の混乱を収束させ、従業員のモチベーションを向上させるための抜本的な改革が求められています。
(記事の要約、ここまで)

《筆者の考察》(ヤマト運輸の問題の原因と対応策)
<問題の背景>
ヤマト運輸が抱える問題の背景には、以下の3点が挙げられます。

1)個人事業主契約の終了 
長年、配送や仕分けを支えてきた「クロネコDM便」の個人事業主との契約を終了したことが、現場の混乱を引き起こしました。
これにより、仕分け作業の担い手がいなくなり、不慣れなスキマバイトのスタッフが急増。配送の効率が大幅に低下しました。

2)コスト削減優先の経営判断 
個人事業主の解雇はコスト削減を優先した結果ですが、現場の労働力不足という重大な課題を軽視していました。
この判断により、配送遅延や荷物破損が多発し、顧客満足度が低下しています。

3)2024年問題への不十分な準備 
トラックドライバーの労働時間規制強化に対応するため、日本郵便との協業を進めましたが、業務分担の調整や新たな人材確保が不十分でした。
結果として、繁忙期に遅配が相次ぐ事態を招きました。

<本来取るべき対応策>
ヤマト運輸が2024年問題に適切に対応するためには、以下のような施策が必要でした。

1)現場の人員確保と教育 
人材の質を確保するため、スキマバイトの導入に依存するのではなく、契約社員や正規社員として安定した労働力を確保するべきでした。
また、作業手順や品質管理の教育を徹底し、ミスやトラブルを減らす取り組みが必要です。

2)個人事業主との協力維持 
コスト削減だけを優先するのではなく、個人事業主との契約を継続しつつ、業務量や条件の調整を図るべきでした。
現場で長年経験を積んだ人材の価値を再評価し、業務効率化に活用する方策を考えるべきだったと言えます。

3)物流インフラの最適化 
配送ルートの見直しや、AIを活用した効率化の取り組みを進めることで、ドライバーや仕分けスタッフの負担を軽減するべきでした。
例えば、荷物の積み込みを最適化する自動化システムの導入が効果的です。

4)顧客単価の適正化 
Amazonをはじめとする大口顧客に対して、荷物単価を適正に引き上げる交渉を強化すべきでした。
過度な値下げ競争に巻き込まれないための戦略が求められます。

<今後の課題>
ヤマト運輸は、労働環境を改善し、現場と本社のコミュニケーションを強化する必要があります。
また、短期的なコスト削減に固執するのではなく、長期的な視点で物流網の改善や従業員の定着率向上を目指すべきです。

最も重要なのは、配送の質と効率を両立させる改革を進め、顧客や従業員からの信頼を回復することです。
それが、持続可能な物流ビジネスの実現につながるでしょう。

 

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