2024年12月8日付の読売新聞オンラインが、
『開業100年の熊本市電、ドア閉めず走行や脱線などトラブル続き…運転士の非正規化で教育不十分』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、トラブルが続く熊本市電について、考察しました。

《記事の要約》
2024年に開業100年を迎えた熊本市電が、トラブルの多発で揺れています。
今年1月以降、ドアが開いたままでの走行や脱線、赤信号の見落としなど、重大インシデント3件を含む14件のトラブルが発生しています。
熊本市民や観光客にとって重要な移動手段である市電に対し、抜本的な対策が求められています。

◆トラブルの詳細と運営体制の課題
<重大インシデント>
熊本市電では今年、以下の重大トラブルが発生しました。

・ドアが開いたまま90メートル走行
・脱線状態で5メートル進行
・赤信号を無視して交差点に進入

これらの事案を受け、国土交通省九州運輸局は9月に市交通局へ改善指示を出しましたが、11月にも赤信号無視の事案が2件発生。
全国の鉄道で認定された重大インシデント5件のうち、熊本市電が3件を占めています。

<運転士不足と教育体制の問題>
運転士の多くが非正規職員であり、2004年度以降、正規職員の新規採用は行われていません。このため、人員は2023年4月の86人から2024年4月には75人と約1割減少。
運転士の入れ替わりが激しく、体系的な教育が十分に行われていなかったことが問題視されています。

検証委員会の吉田道雄会長(熊本大学名誉教授)は「長期的な安全教育と意識改革が必要」と指摘。
市は検証委員会の報告を基に、上下分離方式の導入計画を再検討する方針です。

<利用者への影響>
人員不足の影響で運行本数は減少。2024年6月から15%の減便が実施され、通勤・通学時間帯には車両に乗り切れない乗客が軌道上にあふれる事態も発生しました。
市は大型新型車両を導入し、問題解消を進める方針です。

<他地域の路面電車でも課題>
路面電車を巡るトラブルは熊本市電だけではありません。
長崎市では2022年7月に停止信号を無視した後続車両が衝突事故を起こし、今年6月にも追突事故が発生。
鹿児島市電でも停車中の車両への追突や脱線事故が報告されています。

日本大学の綱島均特任教授(鉄道工学)は「運転士は車の注意や乗降確認、料金収受など多くの業務を担い、負担が大きい」と指摘し、運転士の負担軽減や働きやすい環境作りの必要性を訴えています。
(記事の要約、ここまで)

《筆者の考察》
【熊本市電のトラブルの原因と再発防止策】
1. トラブルの原因
(1) 運転士不足と教育の不備 
非正規職員の運転士が多く、短期雇用や人員の入れ替わりが激しい状況では、十分な教育や経験の蓄積が困難です。
これにより、信号の見落としや誤操作などの人的ミスが発生しています。

(2) 運転士への過剰な負担 
路面電車の運転士は、前方の車両や歩行者の注意に加え、乗客の乗降確認や料金収受といった多くの業務を一人で担っています。
この負担の大きさがミスの温床となっています。

(3) 老朽化した設備 
市電は100年の歴史を持ちますが、老朽化した設備や車両が更新されないまま使用されている可能性があります。
これにより、脱線や信号不具合といった問題が発生するリスクが高まっています。

(4) 減便による運行過密化 
運転本数が減少したことで、通勤・通学時間帯には過密な運行が求められています。
これが運転士のプレッシャーやトラブル発生時の迅速な対応を難しくしている要因と考えられます。

2. 再発防止策
(1) 人員の確保と教育体制の強化
・正規職員の運転士採用を再開し、長期的な雇用を実現することで、運転士の経験と技術を蓄積します。
・教育プログラムを整備し、非正規運転士を含む全職員への定期的な訓練を実施します。
・シミュレーターを活用した緊急時対応訓練を導入し、現場での対応力を向上させます。

(2) 運転士の負担軽減
・車掌を復活させ、運転士の業務を分担します。特に乗降確認や料金収受を別の担当者に任せることで、安全運行に集中できる環境を作ります。
・自動ブレーキや自動運行システムの導入を検討し、運転士の判断に頼らない安全対策を強化します。

(3) 設備の更新
・老朽化した車両や設備を計画的に更新します。
・信号システムや軌道のメンテナンス頻度を増やし、機械的なトラブルを未然に防ぎます。

(4) ダイヤの見直し
・減便の影響を最小限にするため、朝夕の通勤・通学時間帯の増便を優先的に行います。
・新型大型車両の導入を進め、輸送効率を向上させます。

(5) 利用者との連携強化
・定期的に利用者の意見を取り入れ、安全対策やサービス改善に反映します。
・トラブル発生時の迅速な情報提供と対応を徹底し、利用者の不安を軽減します。

<結論>
熊本市電のトラブル多発は、人員不足や教育体制の不備、運転士への過剰な負担が主な原因と考えられます。
市は運転士の確保や設備更新など長期的な対策を講じるとともに、利用者の信頼を取り戻す努力が必要です。
これにより、安全かつ効率的な運行を実現し、熊本市の交通インフラとしての役割を果たしていくことが求められます。

 

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