2024年11月21日付の朝日新聞デジタルが、
『黙秘の被告に「引きこもり」と検事暴言 「不適正」認定、首相襲撃で』
という見出しの記事を報じていました。
検察の取り調べが可視化されたことで、被告の弁護側からの苦情の申立を検察側が認めたわけですが、現行犯逮捕された被告の「黙秘権」について、ネット上ではさまざまな意見が飛び交っています。
以下に、この記事を要約し、考察しました。
《記事の要約》
2023年4月、和歌山市の選挙演説会場で岸田文雄首相(当時)の近くに爆発物が投げ込まれた事件で、現行犯逮捕された木村隆二被告(25)の取り調べを担当した検事が、「家に引きこもって社会に貢献できない」などの侮辱的発言を繰り返していたことが判明しました。
この取り調べの録画映像を確認した最高検は、「不適正」と認定しました。
・検事の問題発言と不適正な取り調べ
問題の取り調べを行ったのは和歌山地検の男性検事(36)です。
木村被告が黙秘を続けていたため、検事は「木村さんはかわいそうな人」や「引きこもりのまま人生を終えるなら社会にマイナスは与えない」など、被告を侮辱するような発言を繰り返しました。
また、被告が目を閉じて黙っている間、「肯定なら目を開けて」「否定なら目を開けて」と2時間以上も一方的な質問を続けました。
黙秘中の被告に対して、こうした心理的圧迫を与える取り調べは、憲法で保障されている黙秘権を侵害しているとの指摘があります。
2023年5月、被告の弁護人が「被告の尊厳を傷つけた」として苦情を申し入れ、最高検は録画映像を確認し、この取り調べが不適正であったと認定しました。
その後、検事に対する指導が行われました。
・事件の概要と今後
木村被告は当初、威力業務妨害で現行犯逮捕されましたが、地検は爆弾の殺傷能力から殺人未遂など五つの罪状で2023年9月に起訴しました。
この事件は2025年2月に和歌山地裁で裁判員裁判が始まる予定です。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察:被告の黙秘権のあり方と検事の対応について》
黙秘権は憲法で保障された基本的権利です。しかし、今回の事件では、現行犯逮捕された被告に対する検事の不適切な取り調べが明るみに出ました。
この事例は、黙秘権の重要性や検事の適切な対応の在り方について、私たちに再考を促します。
1. 黙秘権の意義とその保障の重要性
黙秘権は、日本国憲法第38条で保障される基本的人権の一つです。
自己負罪拒否特権とも呼ばれ、捜査機関の強制や圧力によって自ら不利な証拠を提供することを防ぐために設けられた権利です。
この権利の背景には、戦前の司法制度における拷問や暴力的な取り調べの反省があり、現代では心理的圧迫も黙秘権の侵害と見なされます。
今回の検事の発言は、黙秘権を行使する被告を侮辱する形で心理的圧力を加えたものであり、明らかに不適切です。憲法および刑事訴訟法が求める適正手続に反しており、取り調べのあり方そのものが問題視されるべきでしょう。
2. 現行犯逮捕と黙秘権の特殊性
現行犯逮捕の場合、犯行現場での目撃や証拠が確実であるため、一般的には容疑者の関与が明白とされます。
そのため、黙秘権を行使する被告に対して「黙秘する意味がない」といった批判的な意見も見受けられます。
しかし、黙秘権は事件の全容解明や証拠の適法性を守るために必要な権利です。
たとえ現行犯であっても、事件に関する詳細な動機や背景は慎重に解明されるべきであり、被告が黙秘すること自体を非難するのは妥当ではありません。
3. 黙秘する被告に対する検事の適切な対応とは
黙秘する被告に対して検事が適切に対応するためには、以下のポイントが重要です。
(1)証拠収集による立証の強化
黙秘を崩すことに固執せず、科学的捜査や物的証拠、目撃証言の積み重ねによって事件の全容を立証することが求められます。
現代の捜査環境では、防犯カメラ映像やDNA鑑定など、客観的な証拠が得られる機会が増えています。
検事は自白に依存する捜査から脱却し、証拠に基づいた論理的な立証を進めるべきです。
(2)心理的圧迫を避けた公正な取り調べ
検事は取り調べの過程で被告の人権や尊厳を損なう行為を避けるべきです。
黙秘権の行使を尊重しつつ、質問内容や取り調べの進め方において冷静で中立的な姿勢を保つ必要があります。
今回のような侮辱的発言や心理的圧迫は、冤罪のリスクを高めるだけでなく、取り調べの正当性を損ないます。
(3)録画・録音の徹底と透明性の確保
取り調べの全過程を録画・録音し、第三者が検証可能な環境を整えることで、公正性と透明性を担保します。
今回の事件では録画映像が不適正な取り調べを明らかにしましたが、これを予防するために取り調べ体制そのものを改革することが求められます。
4. 黙秘権と量刑への影響
黙秘権を行使する被告に対して、黙秘を「反省の欠如」と見なす見解も一部にあります。
しかし、黙秘は被告の権利であり、量刑に不利な影響を与えるべきではありません。裁判では物的証拠や目撃証言に基づいて事実認定が行われるべきであり、被告が黙秘したこと自体を量刑の判断材料とするのは公平性に欠けます。
〈結論〉
黙秘権は憲法で保障された基本的人権であり、被告の権利として尊重されるべきです。
検事が心理的圧迫や侮辱的発言を通じて黙秘を崩そうとする行為は、適正な取り調べの範囲を超えており、厳しく戒められるべきです。
検事は自白に頼らず、科学的捜査や物的証拠の積み重ねによる客観的な立証を目指すべきです。
また、取り調べの透明性を確保するため、録画や録音の徹底とともに公正な取り調べ手法を確立する必要があります。
犯罪の重大性が明らかであればこそ、捜査機関には法と権利を遵守しながら、被告人が裁判を通じて適切に裁かれるような体制を整えることが求められます。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ934号より)
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