2024年11月24日付けの読売新聞オンラインが、
『神戸港沖合の船舶衝突、押し船の乗員1人を船内で発見し病院へ搬送…意識あり』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、事故原因等について、考察しました。
《記事の要約》
2024年11月23日午後6時10分ごろ、神戸市沖でマーシャル諸島船籍の貨物船(全長約230メートル、約4万3300総トン)と押し船「奨栄丸」(約14メートル、19総トン)が衝突しました。
この事故で押し船に乗っていた乗員3人のうち、船長の田代正和さん(73)が死亡し、行方不明だった男性船員(62)は約7時間後に転覆した船内で救助されました。救助された男性は病院に搬送され、意識があるとのことです。
一方、貨物船の乗員21人にけがはありませんでした。
今回の事故は夜間に発生し、双方の位置関係や避航義務に関する詳細はまだ明らかになっていません。神戸海上保安部は事故原因を調査中です。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
1. 予想される事故原因
(1)避航義務の不履行
船舶の衝突回避には、船同士の位置関係や航行の状況に応じた「避航義務」が存在します。
例えば、港内では特定の船に優先権が与えられる場合があります。また、貨物船のような大型船舶は舵効きが悪く、すぐに進路変更や速度調整が困難であるため、小型船舶が優先して回避すべき状況も考えられます。
本件では、押し船「奨栄丸」が避航義務を果たせなかった可能性が指摘されます。
(2)視認性の低下と夜間特有の錯覚
事故が夜間に発生しているため、暗闇の中で貨物船の黒っぽい船体や動きが視認しづらかった可能性があります。
航海灯やレーダーがあっても、都市の光や周囲の船の灯りにより、視覚的な混乱が生じることがあります。他船の動きが誤認され、「衝突コース」に気づくのが遅れた可能性も考えられます。
(3)通信不備
通常、船舶間の衝突回避には無線通信(VHF)や警笛の使用が奨励されます。
しかし、押し船と貨物船の間で適切な連絡が取れていなかった場合、双方の意図が伝わらず、衝突を招いた可能性があります。
(4)運航管理や見張りの不十分さ
押し船が大型貨物船の航路に接近している際、船上での見張りが不十分であった可能性もあります。
また、貨物船側でも見張りや警戒態勢が適切でなかった場合、衝突回避行動が遅れた可能性があります。
(5)航行計器やレーダーの使用不足
現在の船舶運航では、レーダーや自動識別装置(AIS)による位置確認が重要です。
これらの機器が適切に使用されていなかった場合、接近してくる船の存在に気づけなかった可能性があります。
2. 再発防止策
今回の事故を踏まえ、再発防止には以下の対策が考えられます。
(1)避航ルールの徹底教育
海上交通のルールである「国際海上衝突予防規則(COLREGs)」を徹底的に教育することが必要です。
特に、夜間や港内など特殊な環境下での優先権や避航義務を明確にし、船舶の運航者に周知徹底を図るべきです。また、地元の海上保安部は、航路ごとの注意点や事故防止策を定期的に訓練や講習会を通じて共有する必要があります。
(2)夜間航行時の視認性向上
船体や航海灯の視認性を向上させるため、大型船舶や押し船には以下のような対策が求められます。
・船体の塗装に反射材や目立つ色を使用。
・船舶用の強力な航海灯やLEDを導入し、他船からの視認性を高める。
・見張り役の配置を強化し、暗闇での視覚的錯覚に備える。
(3)通信プロトコルの強化
VHF無線を用いた船舶間の連絡手段を改善し、接近時には必ず意図を共有する仕組みを強化すべきです。
また、緊急時の警笛や信号の使い方を訓練で徹底させる必要があります。
(4)運航管理体制の見直し
貨物船・押し船の双方で見張り役の配置を強化し、航行中は常に周囲の船を監視する体制を維持するべきです。
レーダーやAISなどの電子機器の使用を義務付けるだけでなく、これらの操作に習熟した人材を確保することも重要です。
(5)船舶同士の距離管理
夜間や視界不良時には、一定の安全距離を確保することが重要です。
港内外問わず、船舶間の距離を適切に管理し、接近しすぎない航行を徹底するべきです。
(6)事故後の救命体制の充実
今回、船内に閉じ込められた船員が発見され、救助されましたが、より迅速な救命対応が求められます。
船舶には非常用の酸素マスクや防水懐中電灯を備え、乗員全員が緊急時に対応できるように訓練を行うべきです。
<結論>
今回の衝突事故は、夜間特有の視認性の問題、避航義務の不徹底、通信不足などが絡み合った可能性が高いです。
再発防止のためには、国際海上衝突予防規則に基づく避航ルールの遵守を徹底するとともに、視認性向上、通信強化、見張りの徹底など、運航管理体制を見直す必要があります。
また、事故発生時の迅速な救命体制を整備することで、人的被害を最小限に抑えることが可能です。
海上交通の安全性を向上させるため、現場の声を反映した実効性のある対策を講じることが求められます。
【好評発売中!】
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001