2024年11月18日付の読売新聞オンラインが、
『多発する銅線ケーブル盗、「金属くず」の不正買い取り横行か…警視庁などが業者4社を一斉捜索』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、「窃盗品の不正買取り」について、考察しました。

《記事の要約》
2024年11月18日、警視庁は栃木県と茨城県の金属くず買い取り業者4社を「盗品等有償譲り受け」の容疑で一斉捜索しました。
この捜索は、太陽光発電施設から盗まれた銅線ケーブルを違法に買い取った疑いがあるとして行われたものです。

<銅線盗難の実態>
捜査では、2024年8月から10月にかけて窃盗容疑で逮捕されたタイ人の男7人が、関東地方の太陽光発電施設から約100回にわたり銅線ケーブルを盗んだことが明らかになりました。
盗品は栃木や茨城の4業者に持ち込まれ、約4600万円で売却されていたとされています。
タイ人グループは「顔パス」で取引を行い、買い取り業者は盗品と知りながらも受け入れていたと供述しています。

<金属価格高騰による被害拡大>
金属価格の高騰が窃盗を助長しており、特に銅は電気自動車(EV)の需要増加を背景に1キロあたり約1131円と高値で取引されています。
このため、銅線ケーブルを狙った盗難被害が急増し、昨年の金属ケーブル盗の被害額は約109億円に上りました。
今年上半期だけで4161件が報告され、被害の約9割が茨城、栃木、群馬に集中しています。

<買い取り業者への規制の課題>
現在、古物営業法で盗品の流通防止のために本人確認が義務づけられていますが、切断されたケーブルは「金属くず」として扱われ、この法律の適用対象外となっています。
全国17道府県では条例で本人確認を義務づけていますが、全都道府県での適用には至っていません。
こうした抜け穴が窃盗団と買い取り業者の不正取引を助長していると指摘されています。

<対策としての素材転換> 
被害を防ぐため、銅からアルミに素材を切り替える動きが広がっています。
アルミは銅の約6割の電気伝導率しかありませんが、ケーブルを太くすることで機能を保てるため、代替素材として注目されています。
一部施設ではアルミケーブルが盗まれても「金にならない」として放置されるケースも報告されています。

<業界と行政への要望>
被害を受けた太陽光発電施設の管理者は「買い取り業者への規制を強化し、法整備を急いでほしい」と訴えています。
一方、警察庁は摘発を強化し、法規制の在り方を検討する有識者会議を設置しましたが、実効性のある対策が求められています。

《筆者の考察》
~盗まれた銅線の買取り販売を防ぐための行政と法整備の対応策~
金属価格の高騰が引き金となり、銅線の盗難と違法取引が相次いでいます。
この問題に対処するためには、行政とリサイクル業界が連携し、盗品の流通を徹底的に防止する仕組みを構築することが重要です。
以下では、行政が取り組むべき方策と法整備の方向性について論じます。

1. リサイクル業者への規制強化
(1)本人確認の義務化の拡大 
現在、古物営業法に基づき本人確認が義務づけられていますが、金属くずに関しては法律の適用外です。
このため、切断された銅線などが違法に取引される余地が生じています。
法改正により、金属くずも本人確認の対象に含めるべきです。
すべての都道府県で本人確認を義務化することで、盗品がリサイクル市場に流れるリスクを減らすことができます。

(2)取引記録のデジタル化 
リサイクル業者に対し、すべての取引をデジタル化して記録し、一定期間保管することを義務付けるべきです。
これにより、違法取引が疑われる場合に迅速に追跡できる体制が整います。
行政がこれらの記録を定期的に監査することで、不正の抑止力を高めることが可能です。

(3)違反業者への厳罰化 
盗品と知りながら買い取った業者に対して、厳しい罰則を設ける必要があります。
現在の罰則では抑止力が不十分であるため、営業停止命令や高額な罰金、違反業者の公表などを行い、業界全体の透明性を高めるべきです。

2. 盗品防止のための技術的対応
(1)銅線の素材転換 
銅の代わりに安価で需要が少ないアルミを使用する動きが広がっています。
アルミケーブルは盗難の抑止効果が期待でき、業界全体で積極的に採用するべきです。
ただし、アルミの使用にはコスト増や技術的課題が伴うため、政府が補助金を通じて導入を支援することが望まれます。

(2)盗難防止のセキュリティ強化 
太陽光発電施設や電線を管理する企業に対して、防犯カメラの設置や遠隔監視システムの導入を推進するべきです。
これにより、窃盗団の行動を未然に防ぐだけでなく、被害が発生した際の迅速な対応が可能となります。

3. 国際的な連携と摘発の強化
窃盗団の多くはSNSを通じて組織化されており、国際的なネットワークを形成していることが明らかになっています。
このため、警察庁は国際刑事警察機構(インターポール)や近隣諸国の警察機関と連携し、窃盗団の摘発を強化する必要があります。
また、外国人技能実習生や短期労働者の不正利用を防ぐため、入国管理制度の見直しも重要です。

4. 法整備の必要性
金属盗難問題に対応するための法整備も不可欠です。以下のような方向性が考えられます。

1)盗品の取り締まり対象の拡大
古物営業法の適用範囲を広げ、金属くずも対象に含めることで、取引時のチェック体制を強化します。

2)全国統一の規制導入
現在、本人確認を義務づけている自治体は一部に限られています。
全国統一の規制を導入し、条例に頼らない仕組みを作るべきです。

3)罰則の厳格化
違反業者に対する厳しい罰則を設けることで、不正取引を未然に防止します。

<結論>
銅線盗難と違法取引の拡大は、金属価格の高騰や法の不備によるところが大きいです。
行政はリサイクル業者への規制強化と技術的対応を進めると同時に、全国統一の法整備を推進し、盗品の流通を防ぐ仕組みを確立する必要があります。
特に、本人確認や取引記録の義務化、罰則の強化が喫緊の課題です。
こうした取り組みにより、業界の透明性を高め、被害を根本的に抑えることが求められます。

 

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