ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム規格)では、「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」について、「労働安全衛生パフォーマンスの向上につながり得る状況または、一連の状況」と定義しています。
今回は、「ホテルサービス業」の事例について、考察します。
《ホテルサービス業の労働安全衛生機会》
ホテルサービス業におけるこの概念の適用は、従業員の安全と健康を促進し、業務の効率を高める多くの機会を提供します。
1. エルゴノミックな作業環境の整備
ホテル業界における労働安全衛生機会の一つは、エルゴノミクスに基づいた作業環境の整備です。フロントデスクの高さ調整、ハウスキーピング用カートの改良、適切な掃除機やその他の清掃機器の導入など、作業効率を向上させるとともに、従業員の身体への負担を軽減します。これにより、筋骨格系障害のリスクを減少させることができます。
2. 安全教育と訓練プログラムの強化
ホテル従業員に対する安全教育と訓練を定期的に実施することも重要な労働安全衛生機会です。消火器の使い方、緊急時の避難訓練、衛生管理に関する教育などを通じて、従業員が自身の安全だけでなく、宿泊客の安全も確保できるようにします。これは事故や災害発生時の対応能力を向上させるとともに、全体の安全文化を育成します。
3. 健康促進活動の展開
従業員の健康を促進する活動も、ホテル業界における大きな機会となります。例えば、健康診断の提供、ストレスマネジメントのセミナー、フィットネスクラブの利用割引、健康的な食事オプションの提供などが挙げられます。これらの活動は、従業員の健康を維持し、長期的には病気による欠勤を減少させる効果があります。
4. 精神的健康支援の強化
ホテル業務は顧客サービスが中心であり、高いストレスを伴うことがあります。メンタルヘルスの支援を強化することは、従業員の心理的負担を軽減し、職場の士気を向上させます。カウンセリングサービスの提供、心理的サポートのためのホットライン設置、リラクゼーションエリアの整備などが考えられます。
5. 労働条件の改善
シフト制の見直しや労働時間の適切な管理、休憩時間の確保など、労働条件の改善も労働安全衛生機会の一環です。これにより、従業員の過労を防ぎ、仕事と私生活のバランスを取りやすくします。結果的に、従業員の満足度が高まり、離職率の低下にもつながります。
6. テクノロジーを活用した労働安全の強化
デジタルツールやモバイルアプリを活用して、従業員が安全情報を簡単にアクセスし、リアルタイムでフィードバックを得られるシステムを構築することは、労働安全衛生管理を効果的に行う上で大きな機会です。例えば、オンラインでアクセス可能な安全マニュアル、事故報告アプリの導入などがあります。
これらの機会を積極的に活用することで、ホテル業界における労働安全衛生パフォーマンスの向上が期待できます。ISO 45001の枠組みを用いて組織的にこれらの機会を管理し、実行することが、従業員だけでなく宿泊客の安全と満足度向上にも寄与します。
以上が、ホテルサービス業の労働安全衛生機会の事例です。
ISO45001の審査やコンサルティング、自社のマネジメントシステムへの導入の参考になれば幸いです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ904号より)
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