ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム規格)では、「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」について、「労働安全衛生パフォーマンスの向上につながり得る状況または、一連の状況」と定義しています。
今回は、「博物館・美術館」の事例について、考察します。
《博物館・美術館の労働安全衛生機会》
「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」は、職場での安全や健康を向上させるための可能性を探る概念です。博物館や美術館においては、独自の業務特性があり、それに合わせた労働安全衛生機会を提供することが重要です。以下に、博物館・美術館での労働安全衛生機会について具体的に説明します。
1. 人間工学(エルゴノミクス)の改善
博物館や美術館での作業には、長時間の立ち仕事や繊細な作業が伴うことが多いです。エルゴノミクスに基づいた作業環境の整備は、職員の筋骨格系障害のリスクを軽減する大きな機会です。
例えば、展示物の取り扱いや設置作業で使用する台車や持ち運び用具の改善、作業高さを調整可能なテーブルの導入、適切な座り仕事用の椅子の提供などが考えられます。
2. 化学物質の安全管理
保存修復作業などで使用される化学物質の取り扱いは、特に注意が必要です。
適切な保管、取り扱い、換気システムの整備を行うことで、職員が有害物質に曝露するリスクを減少させることができます。
また、化学物質の安全データシート(SDS)を職場で容易にアクセスできるようにし、定期的な安全教育を提供することが労働安全衛生機会を活用する方法です。
3. 精神的健康の支援
博物館や美術館の職員は、しばしば高い期待とプレッシャーのもとで働いています。
ストレス管理のワークショップ、職場内でのカウンセリングサービスの提供、リラクゼーションエリアの設置は、職員のメンタルヘルスをサポートする大切な労働安全衛生機会です。これにより、職員の仕事の満足度が向上し、職場全体の士気が高まります。
4. 緊急対応手順の強化
博物館や美術館は一般公開される場所であるため、火災や自然災害、その他の緊急事態に迅速かつ効果的に対応できる体制を整えることが重要です。
緊急避難訓練の定期的な実施、非常用設備の適切なメンテナンス、職員全員が緊急時の役割を理解し実行できるようなトレーニングが必要です。
5. 作業環境の物理的安全性向上
展示物の設置や交換時には、重い物の持ち運びや高所作業が伴うことがあります。
適切なリフティング機器の提供、作業時の安全ハーネスの使用、床の滑り止め処理など、物理的な安全性を高める対策も重要な労働安全衛生機会です。
6. 健康促進プログラムの展開
健康診断の定期的な提供、運動プログラムや健康的な食事の推奨など、職員の健康を促進するプログラムもまた、職場の生産性と職員の満足度を高める重要な機会です。
これにより、長期的に病欠を減少させ、労働力の維持が可能になります。
これらの労働安全衛生機会を積極的に捉え、実行することで、博物館や美術館はより安全で健康的な職場環境を提供することができ、従業員の働きがいや生産性の向上につながります。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ910号より)
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