ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム規格)では、「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」について、「労働安全衛生パフォーマンスの向上につながり得る状況または、一連の状況」と定義しています。

 

今回は、「労働安全衛生機会の定義の詳細」と「医療サービスの事例」について、考察します。

 

《労働安全衛生機会の定義の詳細》

「労働安全衛生機会」とは、ISO45001において、労働安全衛生パフォーマンスの向上に寄与する可能性のある一連の状況を指します。

これは、単にリスクを管理することだけでなく、プロセス、技術、人材管理の革新を通じて、労働環境を改善する機会を積極的に見出し、実施することに重点を置いています。

この概念は、労働安全衛生の問題を防止するだけでなく、職場の健康促進や生産性向上にも寄与するプラスの改善を促進するために設けられています。

 

労働安全衛生機会には、新しい安全技術の導入、労働プロセスの改善、教育訓練プログラムの強化、健康増進活動などが含まれます。

これらは、事故や疾病の発生を減少させ、労働者の士気を高め、法令遵守を強化し、結果として組織の全体的なリスクを低減します。

効果的に管理された労働安全衛生機会は、職場での安全文化を育成し、従業員の満足度および保持率を向上させることができるため、組織の持続可能性に寄与する重要な要素となります。

 

《医療サービスの労働安全衛生機会》

医療サービス業、特に病院の文脈でこれを考えると、医療従事者の健康と安全を向上させることが主な焦点となります。以下に、病院における具体的な労働安全衛生機会の例を挙げます。

 

1)感染症の予防策の強化:

病院は感染症のリスクが高い場所です。感染症の予防策として、高度な滅菌技術の導入や感染防止手順の更新を行うことが労働安全衛生機会となります。

例えば、全スタッフが定期的に感染症管理トレーニングを受け、最新の防護具を使用することで、MRSAやCOVID-19といった病原体から医療従事者を守ることができます。

 

2)人間工学(エルゴノミクス)の改善:

病院のスタッフは長時間の立ち仕事、重い物の持ち運び、不便な姿勢での作業が多いため、エルゴノミクスの改善は重要です。

調整可能なベッドや椅子、適切に設計された作業スペースを提供することで、筋骨格系の障害を減少させ、従業員の快適性と効率を向上させます。

 

3)心理的健康サポートの拡充:

医療従事者は高いストレス環境下で働いており、心理的健康支援は労働安全衛生機会として特に重要です。

専門のカウンセリング提供、ストレス管理のワークショップ、リラクゼーションエリアの設置などが効果的です。

 

4)安全文化の推進:

安全な職場環境の推進は、事故やミスの減少に直結します。安全委員会の活動を活性化し、すべてのスタッフが安全に関する意見や懸念を開示できる文化を作ることが重要です。

これには、定期的な安全ミーティングの開催や匿名フィードバックシステムの導入が含まれます。

 

5)技術革新の導入:

デジタルヘルス技術、自動化された機器、電子カルテシステムの導入は、医療ミスを減少させ、情報の精度を向上させることができます。

これにより、医療提供の効率が向上し、従業員の負担が軽減されます。

 

これらの機会を通じて、病院は医療従事者の安全と健康を保護し、患者に対するケアの質を向上させることが可能です。ISO 45001の枠組みを用いてこれらの機会を組織的に管理することで、労働安全衛生パフォーマンスの持続的な改善を目指すことができます。

 

以上が、労働安全衛生機会についての定義と医療サービスの事例です。

ISO45001の審査やコンサルティング、自社のマネジメントシステムへの導入の参考になれば幸いです。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ902号より)

 

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