2024年8月8日付の読売新聞オンラインが、
『日清食品、「カップヌードル」店頭価格の一律引き上げ強要か…公正取引委員会が近く警告へ』
という見出しの記事を報じていました。
以下の、この記事を要約し、考察しました。
《記事の要約》
公正取引委員会は、大手食品メーカー「日清食品」が、カップヌードルなどの主力商品について小売業者に全国一律の販売価格を強要した疑いがあるとして、独占禁止法違反の警告と行政指導を行う方針を固めました。
これは、消費者が価格競争によって安く購入する機会を失う可能性があるためです。
日清食品は、2022年と2023年に、全国のスーパーやドラッグストアに対して、卸業者を介して販売価格を引き上げるよう要求しました。
日清食品は、商品の値段を自ら設定し、小売業者が特売セールを行う際の価格も決定していたとされます。
この行為は、「再販売価格の拘束」として独禁法で禁じられており、消費者の選択肢を狭めることになります。
関係者によると、日清食品は「ほかの店舗にも同様の要請をしている」と説明しており、原材料費や燃料費の高騰を背景に、小売業者への出荷価格を引き上げました。
小売業者は、日清食品との関係を悪化させたくないため、この要請に従ったとされます。
日清食品の主力商品5品目は、要請後の2022年6月と2023年6月に、5%から13%の価格上昇が見られました。
このような行為は、卸業者からの値下げ圧力を避けるため、全国で統一された価格を維持する目的で行われたと考えられます。
即席麺市場において、日清食品の市場占有率は40.6%に上り、2024年3月期の年間売上高は約2279億円に達しています。公正取引委員会の調査を受けていることを認めた日清食品ホールディングスは、「詳細についてはコメントできない」としています。
この事案は、消費者の利益を損なう可能性があるため、公取委の迅速な対応が求められています。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
報道の通り、即席めんメーカーである日清食品が、卸売業者からの値下げ要求を避けるために、小売業者に対して、小売価格や特売セール価格の設定を指示していたなら、現行の法規制では、「独占禁止法違反」に問われる可能性は、高いでしょう。
独占禁止法で「再販売価格の拘束」を規定しているのは、言わずもがなですが、「消費者が、最も安い価格設定した小売店を探して、購入する機会が奪われ、消費者の不利益が生じる」からです。
おさらいですが、小売価格には、「定価」、「メーカー希望小売価格」、「オープン価格」があります。
「定価」は、“メーカーが小売価格まで設定するもの”ですが、「書籍」などを除き、独占禁止法に抵触するので、現在はありません。
「メーカー希望小売価格」は、メーカーが小売業者に対して「これくらいの価格で販売してほしい」と提示する希望価格で、「オープン価格」は、“小売業者が自由に値段をつけることができる”価格です。
結果的には、「メーカー希望小売価格」と「オープン価格」は、価格設定にメーカーからの拘束力はありません。
では、家電量販店などでよく見かける「メーカー希望小売価格」と「オープン価格」のメリット、デメリットには、どのようなものがあるが、下記に整理しました。
【メーカー希望小売価格】
このシステムでは、メーカーが商品に対して推奨する販売価格を設定します。
この価格はあくまで「希望」であり、法的な強制力はありません。
小売業者は市場の状況や競争に応じて、この希望価格より高くまたは低く商品を販売することができます。
<メリット>
・消費者にとって価格が透明であり、商品の価値が一定の基準で評価されるため理解しやすい。
・メーカーにとってはブランドイメージを維持しやすく、価格戦略を通じて市場に影響を与えることができる。
<デメリット>
・市場の需要や供給の変動に対して柔軟に価格を設定しにくい。
・小売業者が希望価格に従わない場合、価格の一貫性が損なわれる可能性がある。
【オープン価格】
「オープン価格」では、メーカーが特定の価格を推奨せず、価格設定を完全に小売業者に委ねます。
これにより、小売業者は市場の動向、在庫状況、競争状況に基づいて価格を自由に設定することができます。
<メリット>
・小売業者がより大きな柔軟性を持って価格を設定できるため、市場の変動に迅速に対応可能。
・消費者にとっては、価格競争が促進される可能性があり、より低価格で商品を購入できる場合がある。
<デメリット>
・価格の変動が大きく、消費者が価格について混乱することがある。
・メーカーにとっては、ブランド価値が損なわれるリスクがあり、市場での価格競争が過熱しやすい。
要は、今回の「日清食品の小売店に対する価格設定要請」は、「ブランド価値の定価」と「卸売業者からの値下げ要求に対する予防対策」だと考えられます。
メーカーの立場で捉えれば、小売業者間の価格競争が激化し、小売業者が利益を出すために、卸売業者に値下げ要求し、その結果、卸売業者からの突き上げで、メーカーの出荷価格低下に繋がるのを避けたかったという考えは、理解できます。
しかし、消費者目線で捉えれば、不利益を被ることとなり、独占禁止法違反の可能性は、明らかなので、個人的には、「なぜ、日清食品で、小売業者への価格設定要請は、独禁法違反にあたりコンプライアンス違反になる」との統制力が働かなかったのか、不思議です。
まさか、日清食品は、「独禁法違反になるかもしれないが、原料価格、人件費が高騰している現代社会において、熾烈な価格競争をまねくことは、日本経済全体のためにならない」といった「信念」があったわけではないでしょう。
したがって、日清食品のマネジメントシステム上の問題点は無いのか、といった検証も必要ではないかと思います。
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