2024年8月3日付のテレ朝NEWSが、
『不祥事相次いだ鹿児島県警への特別監察終了 再発防止へ警察庁が本部長の研修など強化』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、鹿児島県警が発表した再発防止策について考察しました。
《記事の要約》
2024年8月2日、警察庁は鹿児島県警の不祥事に関する特別監察を完了したと発表しました。
この監察は、幹部による情報漏洩などの一連の問題を受けて行われました。
今後、警察庁は再発防止に向けて、各警察本部長の研修を強化するとしています。
鹿児島県警では、元生活安全部長が個人情報を含む内部文書を漏洩し、逮捕・起訴されるなどの事件が発生しました。
また、大麻所持、強制性交、わいせつ行為、盗撮事件で警察官が逮捕される事例も相次いでいます。
これらの事態を受け、警察庁は2024年6月から8月2日まで、これらの事件の原因を究明し、再発防止策の指導を目的とした特別監察を実施しました。
その結果、警察庁は今後、全国の警察本部長への研修をさらに充実させることを決定しました。
具体的には、赴任前の捜査指揮研修を強化し、赴任後も警察庁幹部による個人面談を実施し、状況に応じた助言や指導を提供します。
この決定に先立ち、鹿児島県警は組織内の意思疎通の向上や適切な職務評価を目的とした再発防止策を公表しました。
警察庁は、「今後、県警の再発防止対策が確実に実施されることが極めて重要であると考えており、実施状況については随時フォローアップを行う」とコメントしています。
これにより、警察組織の信頼回復と公安の維持が期待されます。
(記事の要約、ここまで)
《鹿児島県警が発表した再発防止策の有効性》
鹿児島県警は、再発防止策として、これらの再発防止対策を実行するために「改革推進委員会」と「改革推進研究会」を新設し、警部補以下が本部長に直接、組織上の問題などを提言できる仕組みが設けられる方針を示しました。
しかし、階級組織である警察において、組織の問題点を上司に提言できる仕組みは、「組織内の不満分子をあぶり出す」仕組みで、効果的に、機能しない、つまり、「形式的な再発防止策」であると言われています。
以下に、その理由をいくつか挙げて考察します。
1) 階級制度の強固な組織構造
警察組織は、基本的に階級制度が厳格に定められており、上下関係がはっきりしています。
このため、下位の警官が上位の警官、特に本部長などの高位の階級に対して直接意見を述べることが困難です。
提言する「改革推進委員会」や「改革推進研究会」が設けられたとしても、実際に自由な意見交換が行われ、それが組織の改善につながるかどうかは疑問です。階級が上の者に意見することがキャリアに悪影響を及ぼす可能性があるため、積極的な意見表明が抑制されがちです。
2)「不満分子」としてのレッテル
再発防止策として提案された意見提言システムが、組織内の「不満分子をあぶり出す」手段として機能する恐れがあります。
つまり、不満を持つ警官が上層部に意見をすること自体が、異端視されるリスクを孕んでいるのです。
これは、実際の問題解決に向けた建設的な議論を促すどころか、組織内での自己防衛の意識を強め、結果的に真の問題解決から遠ざかる可能性があります。
3)実行力の欠如
形式的な策に留まる最大の理由は、実行力の欠如にあります。改革推進委員会や研究会が設けられたとしても、具体的な実行計画や責任の所在が曖昧であれば、その効果は限定的です。
実際に意見が上層部に届いても、それがどのように処理され、どのように具体的な行動に落とし込まれるのかが不透明であるため、組織の本質的な問題解決には至らない可能性が高いです。
4)透明性の不足
警察組織の透明性が不足している点も問題です。内部の意見がどの程度開かれた場で議論され、どのように公表されるのかが明確でなければ、外部からの信頼を得ることは難しいでしょう。
組織改革が形式的でないと評価されるためには、プロセスの透明化が不可欠です。
これらの問題点を踏まえると、鹿児島県警が提案する再発防止策が形式的であるとの批判には一定の根拠があると言えます。
実効性のある改革を実現するためには、これらの問題に対する具体的かつ実行可能な解決策の提示が求められます。
少し話題は逸れますが、私の経験では、数年で異動があるキャリア組の幹部職員の「思考」としては、「在任中に今後の出世に影響がある問題発生はゼロにしたい」という発想です。
また、部下の職員たちも、数年で居なくなるエリート幹部は、「立つ鳥跡を濁さず」で、あまり内部事情に顔を突っ込んで、下手に組織をかき回さないで欲しい、という判断が働きます。
そもそも、「現場の問題点」について「改善を提案すること」は、キャリアに傷を付けたくないエリート幹部からしたら「聞きたくない情報」であり、現場職員は、提案しても、「本質的には何も変わらない」のが分かっているし、入職時の「キャリア・ノンキャリア」(一般企業なら総合職と一般職)で出世スピードは違うし、減点主義が強い役所文化では、評価されないので、「だったら、おとなしく黙っていよう」という考えになるでしょう。
つまり、今回の鹿児島県警の一連の「組織犯罪の隠蔽」は、警察庁および各都道府県警察の採用・人事異動・昇格・職員評価制度などと深く関係しており、小手先の改革案では、実質的に何も変わらないだろう、と思います。
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