2024年8月3日付のスポーツ総合サイト「THE DIGEST」が、

『「自分は日本に帰れるのか」柔道・斉藤立が敗戦嘆く...解説の穴井氏は日本柔道界へ“警鐘”「日本人同士の稽古をやってるようじゃ...」』

という見出しの記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、考察しました。

 

《記事の要約》

パリ五輪柔道100キロ超級の試合が2024年8月2日に行われ、日本代表斉藤立は激戦の末、3位決定戦で敗退しました。これにより、個人戦でのメダル獲得は叶わなかった。

 

斉藤選手の挑戦は2回戦から始まり、東京五輪金メダリストのルカシュ・クルパレク(チェコ)との対戦で見事な大内刈からの内股で一本勝ちを収めました。準々決勝では、アンディ・グランダ(キューバ)との消耗戦を大外刈りで制し、勝利をおさめました。

 

しかし、準決勝で今年の世界選手権王者キム・ミンジョン(韓国)との対戦では、試合終盤にキムの背負い投げに敗れ、決定的な一本負けを喫しました。この敗戦に斉藤選手は明らかな落胆を見せ、畳に突伏して悔しさを露にしました。

 

その後の3位決定戦では、アリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)との対戦で、変則的な速攻に対応できず、大外刈りで一本負けを喫しました。

 

試合後のインタビューで、斉藤選手は「情けない」と自己批判をし、応援してくれた家族への責任感を表しながらも、自身の不甲斐なさを悔やみました。1984年と1988年の五輪金メダリスト、故斉藤仁氏の息子としての重圧も感じているようでした。

 

天理大学柔道部監督の穴井隆将氏は、今後の日本柔道に対する警鐘を鳴らし、「世界と戦う上では、従来の稽古方法を見直し、国際基準に適応したトレーニングが必要」と指摘しました。

 

パリ五輪の柔道競技は、日本勢がメダル7個という過去最低タイの成績に終わりました。これは、国際柔道のトレンドが変化していることの証左であり、日本柔道界にとっても変革の時期が迫っていることを示しています。
(記事の要約、ここまで)

《筆者の考察》
パリ五輪の柔道競技は、残すところ混合団体戦となり、個人戦の男女各7階級は、終わりました。
日本選手の結果は、メダル7個(金3、銀1、銅3)と、前回東京五輪の11個(金9、銀1、銅1)、8年前のリオ五輪の12個とメダル獲得数は、激減しました。
また、今回のパリ五輪では、男女14階級の金メダル14個は、11ヶ国が獲得しました。

私は、出場した日本人14選手の試合をほぼ、全試合、リアルタイムで視聴しました。

私は、柔道に関しては、競技会に出場したことがない素人ですが、率直な感想として、いわゆる「不可解な判定」はあったものの、現在の国際大会の主流となっている「組み合わない柔道」、「指導狙いの反則勝ち狙いの柔道」、「変則的な組手によるジャケットレスリング的な柔道」に日本人選手の多くは、対応できていなかった、と感じました。

 

その原因のひとつと私が考えるのは、「早すぎる代表内定と国内調整」です。

あくまでも、各メディアの記事を元にした意見ですが、日本選手は、「手の内を見せないため」に、例えば、阿部詩選手や素根輝選手は、代表内定後は、ほぼ国際大会に出場していませんでした。

素根選手の場合は、怪我の影響もあったと思いますが、素人目にも、阿部選手、素根選手とも「勝負勘」が鈍っていて、不用意な攻めや受けが試合中に見られました。

「国際大会不参加」や解説の穴井氏が指摘する「日本人選手とばかりの練習」の弊害として、次に、「変則的な組手をする海外選手対応の弱さ」が露呈しました。
日本人の柔道選手は、幼少期から「柔道はお互いに組み合って試合をするもの」との基本をたたき込まれています。

つまり、乱取り練習も、基本的には、しっかり組み合って練習しています。

また、「代表内定選手」に「怪我」をさせるわけに行かないので、練習相手は、変則的な柔道はしないでしょう。

しかし、海外の選手は、特に「日本人選手とまともに組み合ったら負ける」ことを自覚しているので、基本的に「組み合わない柔道」です。
 

したがって、海外選手は、相手に有利な組手になった場合は、「指導を取られないように、うまく、偽装的な攻撃を仕掛け、流れを切る」ことをします。

この海外選手の「指導を取られにくい偽装的な攻撃」は、多くの日本人が「組み合えよ~」とイラッとする感覚ですが、良く言えば「技術的にすぐれた偽装的攻撃」で、おそらく、こうした練習をしっかり、じっくり練習しているのでしょう。

 

こうした「組み合わない柔道」に対応していたのは、金メダルを獲得した角田夏実選手、阿部一二三選手、永瀬貴規選手です。

角田選手は、自分の得意な組手でなくても、相手をつかんだ瞬間に巴投げに入ります。

また、阿部一二三選手や永瀬選手は、「組み合う→技を仕掛ける」という動作ではなく「組合ながら技を仕掛ける」というスピードをしっかり、鍛え抜いてきたように感じました。

 

柔道は、練習を含めて、自分の得意の組手から豪快に技を掛ければ、スッキリしますし、「得意技」の技術は磨かれるでしょう。

しかし、そんな「自分の得意な組手」など、国際大会では、実力が均衡する選手同士の間で、成立するはずがありません。

今回、敗退していった日本人選手の敗因を素人的に捉えると、

1)自分の得意な組手にならない限り技が出せない

2)せっかく得意な組手になっても技を掛けるのが遅く、相手に流れを切られる

3)攻撃のパターンがワンパターンでバリエーションがない

4)技のバリエーションがないため、攻撃が単調で消極的に見えて指導を受ける

5)同じ階級でも身長が低く、奥襟を取られると、「首抜き」(反則)になりやすい

6)腕力、背筋力に勝る海外選手の変則的な組手に対応できず、裏投げを食らう

7)現状の海外審判のジャッジ傾向に合わせた柔道ができない
8)国際大会に出場せずランキングを上げなかったためベスト8までに有力選手と対戦する

・・・・
といった点が挙げられます。
要は、ひと言で言えば、柔道連盟の戦略ミスです。
五輪出場選手の強化対策、海外選手対策、海外審判傾向の対策、不可解なジャッジに対する英語力対策、国際柔道連盟におけるプレゼンス向上対策など、「全日本柔道連盟が抱える課題」への対応は不十分だったと思います。

もちろん、多くの日本人が感じるように、「本来柔道は、組み合って試合するもの」、「柔道は武道であり、レスリングではない」、「腰が引けた姿勢は醜く、美しい柔道をすべき」、「指導狙いのポイントjudoは柔道ではない」・・・といった多くの試合の現状を「健全な姿に戻すべき」というルール改正や審判技術の向上も必要でしょう。

しかし、スポーツとして国際化した「JUDO」ですから、「現状のルールにどう対応するか」という視点で抜本的な対策を日本として取らない限り、リオ五輪や東京五輪の時のような「メダル量産」とはならないだろう、と思います。
 

 

 

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