ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム規格)では、「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」について、「労働安全衛生パフォーマンスの向上につながり得る状況または、一連の状況」と定義しています。
今回は、「建設業」と「トラック輸送業」の事例について、考察します。
《建設業の労働安全衛生機会》
建設業における「労働安全衛生機会(Occupational Health and Safety Opportunity)」は、作業環境を改善し、労働安全衛生パフォーマンスを向上させる様々な機会を含みます。
これらは、単にリスクを軽減するだけではなく、職場の安全性と効率を向上させる技術や方法を導入することにより、より広範な利益をもたらすことが目的です。
以下に、建設業に特有の具体的な機会をいくつか挙げます。
1)技術の導入:
最新の安全技術を導入することは大きな機会です。
たとえば、ドローンを用いて建設現場の空撮を行い、リアルタイムで現場の安全状態を監視することができます。
これにより、高所での作業や危険なエリアでの必要性を減少させ、安全リスクを大幅に下げることが可能です。
2)バーチャルリアリティ(VR)と拡張現実(AR):
VRとARをトレーニングプログラムに組み込むことで、実際の現場でのリスクを伴わずに、危険な状況への対応を学習させることができます。
これは特に新入り労働者の事故率を下げるのに効果的です。
3)健康促進プログラムの導入:
労働者の体力と健康を維持するためのプログラムを設けることも重要な機会です。
例えば、定期的な健康診断、ストレス管理セミナー、適切な休憩スペースの提供は、労働者の疲労を減少させ、全体的な生産性を高めることができます。
4)環境配慮型の材料とプロセスの採用:
環境に優しい材料や持続可能な建設方法を採用することは、安全だけでなく環境への配慮にも繋がります。
例えば、低VOC(揮発性有機化合物)塗料の使用や、リサイクル可能な材料の利用は、作業環境を改善し、労働者の健康にも良い影響を与えます。
5)コミュニケーションと文化の改革:
安全文化の積極的な育成と、透明で開かれたコミュニケーションチャネルの確立は、安全管理の向上に直結します。安全に関する意識を高め、労働者が安全問題を自由に報告できる環境を作ることが、事故を未然に防ぐ上で非常に効果的です。
これらの機会を通じて、建設業における労働安全衛生パフォーマンスの向上を図ることができ、事故の発生を減少させるとともに、作業効率と従業員の満足度を向上させることが可能です。
ISO 45001のフレームワーク内でこれらの機会を積極的に探求し、実施することが推奨されます。
《トラック輸送業の労働安全衛生機会》
トラック輸送業においてこれを実現するための具体的な例は、ドライバーの健康、安全、及び全体的な労働条件の改善を通じて見ることができます。
1)運転支援装置の導入:
近年の技術革新により、衝突防止システムや車線維持支援システムなどの運転支援技術が開発されています。
これらのシステムをトラックに導入することで、疲労運転による事故リスクを大幅に減少させ、ドライバーの安全を向上させることが可能です。
2)健康管理プログラムの確立:
長時間の運転はドライバーの健康に様々な悪影響を及ぼします。定期的な健康診断、適切な休息、栄養指導を含む健康管理プログラムを実施することで、ドライバーの健康を保ち、病気による欠勤を減らすことができます。
3)エルゴノミックな運転環境の提供:
運転席のエルゴノミクスを改善することも重要な機会です。
適切なシート調整機能、ステアリングホイールの位置調整、適切な照明と視界確保などがドライバーの疲労を軽減し、運転中の姿勢による身体的負担を減少させます。
4)運転行動のモニタリングとフィードバック:
GPSや運転行動記録装置を用いてドライバーの運転習慣をモニタリングし、安全でない行動に対してリアルタイムでフィードバックを提供するシステムを導入します。
これにより、ドライバー自身の安全意識が高まり、事故発生率の低下に寄与します。
5)ストレス管理とメンタルヘルスサポート:
長距離運送業のドライバーは孤独やストレスを感じやすいため、カウンセリングサービスやストレス管理のワークショップを提供することで、メンタルヘルスの問題に積極的に対処します。
これらの機会を積極的に利用することで、トラック輸送業における労働安全衛生パフォーマンスの向上が期待できます。ドライバーの安全と健康が保たれることは、直接的に事故の減少、サービスの品質向上、および経済的損失の低減に繋がります。
ISO 45001の枠組み内でこれらの機会を管理し、改善策を継続的に更新することが、企業にとっての持続可能な成長を支える鍵となります。
以上が、建設業とトラック輸送業の労働安全衛生機会の事例です。
ISO45001の審査やコンサルティング、自社のマネジメントシステムへの導入の参考になれば幸いです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ902号より)
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