「ロジカルシンキング」や「問題解決」などを勉強した人はご承知と思いますが、「意思決定プロセス」のアプローチとして、「リスクベースシンキング」があります。

今回は、「リスクベースシンキング」について、以下に事例を上げて、解説しました。

 

《リスクベースシンキングとは何か》

「リスクベースシンキング」とは、リスクを組織の意思決定プロセスに組み込むアプローチのことです。

この考え方は、不確実性を認識し、それに伴うリスクを前もって特定、評価、そして管理することに重点を置いています。

リスクベースシンキングを取り入れることで、組織はリスクに対してより積極的に対応できるようになり、未然に問題を防ぐことが可能となります。

 

この考え方の核心は、リスクを単なる否定的な側面だけでなく、機会として捉えることにあります。

つまり、リスクを適切に管理することで、新たな機会を発見し、利用することが可能です。

リスクベースシンキングは、ISO規格(例えばISO 9001:2015)にも取り入れられ、組織の品質管理システムの重要な部分となっています。

 

《“リスクベースシンキング”が活かされた事例》

例えば、製薬会社において、新しい医薬品の開発プロジェクトを進めていたとします。

このプロジェクトチームは、リスクベースシンキングを用いて、プロジェクトの各段階で発生可能なリスクを特定し、それに対する対策を立てました。

 

◆リスクの特定:

チームは、新薬の研究開発段階での科学的な不確実性、臨床試験の成果、規制当局の承認プロセス、市場への導入の可否など、様々なリスク要因を特定しました。

 

◆リスクの評価と優先順位付け:

特定されたリスクは、その影響度と発生確率に基づいて評価されました。例えば、臨床試験での有害な副作用が発見されるリスクは、非常に高い影響をもたらす可能性があるため、高い優先順位が付けられました。

 

◆リスク対策の策定と実施:

高リスク項目に対しては、より詳細な臨床試験の実施、追加の安全性評価、規制当局との早期のコミュニケーションなどの対策が策定されました。また、市場導入のリスクに対しては、マーケティング戦略の見直しや、潜在的な市場のニーズに関する追加研究が行われました。

 

このように、リスクベースシンキングを活用することで、製薬会社は不確実性に効果的に対処し、プロジェクトの成功率を高めることができました。さらに、リスク管理プロセスを通じて、新たな機会の発見や、プロジェクトの効率化にも繋がりました。リスクベースシンキングは、単にリスクを管理するだけでなく、組織の成長と進歩に寄与する重要な要素となります。

 

また、この事例では、リスクベースシンキングを通じて、製薬会社は以下のような利点を享受しました。

 

1)事前のリスク評価

プロジェクトの初期段階でリスクを特定し評価することで、予期せぬ問題に迅速かつ効果的に対応できるようになりました。

 

2)対策の最適化

リスクの優先順位に基づいて対策を策定し、リソースを効率的に配分しました。これにより、最も影響の大きいリスクに集中的に取り組むことができました。

 

3)機会の識別

リスク評価プロセスを通じて、新たなビジネス機会や改善の余地を見出しました。例えば、市場ニーズのより深い理解や、製品の差別化の機会などです。

 

4)コンプライアンスと品質の向上

規制要件への準拠や製品の安全性と有効性に関するリスクを管理することで、製品の品質を保証し、規制当局の承認を得やすくしました。

 

5)ステークホルダーの信頼性向上

効果的なリスク管理により、投資家、顧客、規制当局などのステークホルダーの信頼を高めました。

 

リスクベースシンキングは、こうした製薬産業に限らず、あらゆる業種で適用可能であり、組織の持続可能な成長と競争力の向上に不可欠な要素となります。組織が外部環境の変化に迅速に対応し、内部プロセスを改善するための強力なツールとして機能します。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ891号より)


 

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