2024年6月20日付けの読売新聞が、

『デザインやり直し2万4600回、下請けに無償で要求…シール・ラベル印刷最大手に公取委勧告』

という見出しの記事を報じていました。

以下に、この記事を要約し、考察しました。
 

《記事の要約》

公正取引委員会は2024年6月19日、下請け法違反の疑いで大阪の印刷業界大手「大阪シーリング印刷」に対して再発防止を勧告しました。このケースは、下請け法における「やり直しの禁止」規定が適用される初の事例です。同社は、2022年4月から2023年10月までの期間に、食品メーカーから受注した食品容器のラベルやパッケージ製造を請け負い、デザイン作業をフリーランスのデザイナーや36の下請け業者に再委託していました。

 

問題が浮上したのは、これらの下請け業者に対して、顧客からの修正要求に応じて無償でデザインのやり直しを要求していたことです。公取委の発表によると、この無償の修正作業は合計で24,600回に及びました。初めにデザインが提出された際は問題がないとされていましたが、顧客の要望に応じて修正を求めた際、追加料金を支払わずに作業を要求していたのです。

 

公取委の調査を受けて、大阪シーリング印刷は下請け業者に対し、これまでの無償での作業に対する対価として合計980万円を支払いました。同社の持ち株会社である「OSPホールディングス」は、法令への理解が不十分だったと認め、「再発防止を徹底する」とコメントしています。

 

この事例は、下請け業者に対する適正な取り扱いの重要性を示すものであり、業界全体に警鐘を鳴らす出来事となりました。公正な取引環境の確保は、特に複数の業者が関与する製造業において重要であり、今後の業界の対応に注目が集まっています。
(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》
大阪シーリング印刷が下請法違反で公正取引委員会から勧告を受けた事件について、発生した原因と今後の再発防止策を検討します。

 

「原因」

1)業界慣習の問題

特定の業界では無償での作業や修正が「常識」として受け入れられているケースがあります。このような慣習が、公正な商取引を阻害する要因となっていることが明らかです。

 

2)権力の不均衡

フリーランスや小規模事業者は大手企業に対して交渉力が劣っており、無償での追加作業を強いられることが多いです。これは権力の不均衡が原因であり、下請け業者が不利な立場に置かれています。

 

3)認識の欠如

大阪シーリング印刷のケースでは、法令遵守に対する認識が不十分であったとの自己申告があります。
企業内での法令教育が不足している可能性が指摘されます。

 

「再発防止策」

1)明確な契約の策定

改善改善として、修正作業に対しても明確な契約を結ぶべきです。
具体的には、初めの契約で修正回数や範囲を明確にし、それを超える場合には追加料金が発生するという条件を設けることが有効です。

 

2)教育と意識改革

社内のスタッフ教育を強化し、下請け業者に対する適切な扱いや業務の難易度を理解させることが必要です。特に管理職や担当者に対する継続的な法令遵守教育が重要です。

 

3)通報システムの導入

下請け業者が不当な要求を受けた際に安全に通報できるシステムを設置することで、問題が早期に発見・対処されるようにします。

 

4)定期的な監査の実施

内部監査を定期的に実施し、下請け業者への不適切な要求がないかをチェックすることが効果的です。これにより、企業文化の透明性が向上し、法令遵守の意識が高まります。

 

5)公正取引委員会との連携

事例によっては、公正取引委員会と連携してガイドラインを作成し、業界全体の慣習を見直すことも一つの手段です。

 

これらの対策を通じて、大阪シーリング印刷のような問題が再発しないよう努めることが企業の社会的責任として求められています。また、業界全体の健全な発展にも寄与することになるでしょう。

 

《その他》

話題は少し逸れますが、弊社のような零細企業には、公正取引委員会や中小企業庁などから、よく、調査書が届きます。

忙しいときは、その全てに返信できませんが、こうした調査結果をもとに、ニュースになることで社会的に影響の多い企業には、こうした政府系機関は積極的に立ち入り調査して、問題点に対して是正指示をしているのかもしれません。


ちなみに、大阪シーリング印刷は、多くの認定、認証を取得している組織です。
HPに記載されている認定、認証には、以下のものがあります。

 

《マネジメントシステム認証》

◆ISO9001、対象:全部門、認証機関:株式会社GCCJapan

◆ISO14001、対象:全部門、認証機関:株式会社GCCJapan

◆ISO45001、対象:福岡工場、認証機関:中央労働災害防止協会

◆ISO22000、対象:門司工場、認証機関:株式会社GCCJapan
◆ISO27001、対象:IT推進部、企画製版本部製版部製版管理課、認証機関:株式会社GCCJapan

◆ISO22301、対象:大阪シーリング印刷株式会社 本社・門司工場 OSPレーベルストック株式会社 滋賀工場、認証機関:BSIグループジャパン株式会社

 

《その他の認定》

◆軟包装衛生協議会 認定工場、対象:岡山工場、門司工場、認証機関:軟包装衛生協議会

◆FSC®森林認証(CoC認証)、対象:八尾管理センター、栃木工場、岐阜工場、滋賀工場、大阪工場、福岡工場、各営業所、イノベーションセンター、認証機関:SGS Hong Kong Limited

◆バイオマスマーク、適用範囲:バイオマスインキを使用したシール・ラベル・フィルム印刷物、バイオマス粘着剤を使用したシール・ラベル。天然物系自着性接着剤。(条件を満たす製品に表示)、認証機関:一般社団法人日本有機資源協会

◆生分解性プラ、バイオマスプラ【BP】、認証機関:日本バイオプラスチック協会

 

ISO認証以外の制度上のルールが分かりませんが、ISO認証機関は、今回の「下請法違反」を受けて、大阪シーリング印刷への調査し、その結果、臨時審査の必要性や次回審査への申送り、臨時審査結果次第によっては、認証の一時停止等の対応を取るでしょう。
「下請法違反」なので、少なくとも、ISO9001、ISO45001認証には、今後の認証審査になんらかの影響があるかもしれません。

 

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