2024年6月10日に、新聞やテレビなど各メディアで、「国立市に建設された10階建てマンションの引き渡し直前の取り壊し」の報道がありました。

以下に、この報道について、テレビ朝日の記事を要約し、考察しました。

 

《記事の要約》

国立市に建設された10階建てのマンションが、完成間近にもかかわらず解体されることになり、多くの驚きと疑問を呼んでいます。

この異例の事態は、周囲の環境への配慮が不足していたためとされています。

 

このマンションは、その地理的な特性から富士山の絶景をウリに販売されていましたが、建築が進むにつれ、富士山の景観が大きく損なわれることが明らかになりました。

特に、地元で親しまれている「関東の富士見100景」の一部を失うことに対して市民の間で不満が広がっていました。

 

さらに、解体の背後には他にも深刻な問題がありました。

地元住民の間では、建物によって日照権が侵害されるという問題が生じていました。

特に、マンションの建設により、冬場に雪が溶けないほど日陰が深くなる家が出現し、住民生活に支障をきたしていました。

このような問題を抱える中、住民からはプライバシーの侵害を懸念する声も上がっていました。

 

国立市の審議会では、これらの問題を検討し、地元住民の日常生活に配慮した建築計画の必要性を訴えていましたが、最終的には積水ハウスが解体を決定しました。

積水ハウスは「周辺への影響を十分に検討ができていなかった」と公式に認め、計画の見直しと解体に踏み切ったのです。

 

これには地元で反対運動を行っていた住民も驚きを隠せませんでした。

多くの住民が訴訟に発展することを予想していた中での解体決定は、前向きな解決とはいえ、計画段階の欠陥を指摘される形となりました。

 

長期にわたる反対運動が積水ハウスに圧力をかけ、最終的には企業側が事業計画の誤りを認める形で決着がついた例は、日本の不動産開発の歴史においても非常に珍しいケースです。

この出来事は、開発事業者にとっても地元住民にとっても重要な教訓となり、将来の都市計画や建築プロジェクトにおいては、より周到な事前調査と地域住民との対話が求められることになるでしょう。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

この報道は、私自身は、数日前にネットニュースで知りました。

あくまでも、報道されている範囲の情報からですが、「積水ハウスは、今後のリスクを総合的に考えて、すごい英断をした」と感じました。

また、「自分が積水ハウスのこのマンション建設に関する責任者だったら」という目線で想像すると、相当悩んだ末の決断なんだろう、と思います。

 

このマンションについては、状況的には、

・マンションは、高さ制限のない商業地に建設されている

・国立市への建築申請は、許可されており、法的な違法性はない

・住民からは、日照権やプライバシー面で懸念の声が上がっていた

・・・

といった状況だったようです。

 

つまり、このマンションは、「違法性はないが、今後、住民から訴訟を起こされるリスクが高い」物件なのです。

目先の利益を考えれば、「違法性はないんだし、完売しているから、当初計画通り、購入者にマンションを引き渡して終了」という積水側の選択もありです。

しかし、仮に、日照権、プライバシー、景観毀損などによる、近隣住宅街や商業地の価値低下を理由に「長期戦の裁判」になることを考えたら、このマンション建設で得られる利益は簡単に飛ぶでしょうし、企業イメージも損ないます。

 

ただ、「引き渡し直前の解体」は、マンション購入者にとっては、「終の棲家」として、将来設計を立て、現在の住居を処分している等の問題もあり、マンション購入者からの「訴訟リスク」もあるでしょう。

 

おそらく、こうした「さまざまなリスク」を総合的に考慮して積水ハウスは「解体」を決定したので、マンション購入者(18戸)とは、購入代金プラスαのお詫び料など、話が付いているのではないかと想像します。

 

月並みですが、マンション建設計画時に、積水ハウスは、こうしたあらゆるリスクを想定して、各リスクを見積もって、地域住民の意向確認や調整ができなかったものかと思います。

マネジメントシステム的には、「積水ハウスのマンション建設の企画・設計プロセスの有効性、妥当性検証」をしてみたい事例です。

 

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