熊本市電と熊本県内の私鉄、バスが、Suicaなど交通系IC決済を廃止するという報道を読売新聞(2024年5月29日付)報じていました。
また、長野県のしなの鉄道は、2025年度中に「Suica」を導入する方針を固めた、という報道をNHK(2024年5月23日付)が報じていました。

以下にこれらの記事を要約し、考察しました。

 

《読売新聞の記事の要約》

熊本市は2024年5月28日、市交通局が運行する市電の支払い方法を変更し、2026年4月より全国交通系ICカードの使用を停止する方針を発表しました。

この変更は、熊本県内で路線バスと電車を運行する他の5事業者も年内に追随する予定です。

廃止の理由は、交通系ICカードシステムの更新コストが非常に高額であることにあります。

市電では約2億円、他5社で計約12億円の費用が予測されています。

これに代わり、よりコスト効率の良いクレジットカードのタッチ決済を導入する計画です。

熊本市長は、この高額な更新コストが他の事業者や自治体にも同様の決断を迫る可能性があるとコメントしています。

 

《NHKの記事の要約》
長野県の第三セクターである「しなの鉄道」は、2025年度中にすべての駅でSuicaなどの交通系ICカードが使用できるようにする計画を進めています。

この方針は、JR東日本が長野県内でSuicaの使用可能駅を拡大する予定に合わせたものです。

しなの鉄道は、北陸新幹線開業時に全国初の並行在来線として開設され、現在は軽井沢駅から長野駅、さらに長野駅から妙高高原駅を結ぶ路線を運営しています。

これまでICカードの導入を見送っていましたが、沿線の人口減少と向き合い、利便性向上を図ることでより多くの利用者を引きつけることを目指しています。

導入には約16億円が見込まれ、費用はしなの鉄道、地元自治体、国の補助金を含む複数の資金源から捻出される予定です。しなの鉄道は、この投資が利用者増加につながり、経営の安定化を図る一助となることを期待しています。

(記事の要約、ここまで)

 

《筆者の考察》
交通系ICカードは、利用者に便利な一体化された決済手段を提供し、公共交通の効率を高める技術として広く導入されています。しかし、地方交通におけるこのシステムの導入や維持は、経済的な負担や地域特性に大きく左右されるため、全国一律の策が取りにくいのが現状です。熊本市電やしなの鉄道の事例を通じて、地方交通の将来像と交通系IC運営会社の方向性について考察します。

 

熊本市電および周辺の私鉄、バス会社では、2026年に交通系ICカードの使用を廃止する方針を打ち出しています。これは、システム更新に伴う高額なコストが主な理由で、これによる経済的負担が現実的でないと判断されたためです。代わりに、よりコストパフォーマンスが高いクレジットカードのタッチ決済への移行を計画しています。この決定は、地方交通機関が直面している財政難と、限られた予算内での最大効率を求める現実的な選択を反映しています。

 

一方、長野県のしなの鉄道は、全駅でのSuicaの導入を進める計画を立てています。これは、北陸新幹線開業に伴う利用者の増加や、首都圏からのアクセスの向上を見込んでの戦略です。地元自治体や国の補助金を含めた複数の資金源を活用して約16億円の投資を行い、沿線の活性化と利便性の向上を図ることが目的です。この場合、大きな初期投資が必要ですが、長期的な収益向上と地域経済へのプラスの影響が期待されています。

 

これらのケースから、地方交通における交通系ICの導入や維持は、その地域の経済状況、交通ネットワークの構造、将来的な発展の見込みに基づいて異なるアプローチが求められることが明らかです。熊本のケースではコスト削減が、しなの鉄道では地域のインフラ整備と観光振興が主眼になっています。

 

交通系IC運営会社の将来像としては、技術の進化や代替決済手段の台頭を考慮に入れた柔軟な戦略が必要です。デジタル決済の普及が進む中で、ICカードシステムのコストパフォーマンスや、地域ごとの特性を考慮したカスタマイズが求められるでしょう。また、利用者データの分析を活用したマーケティングや、他のサービスとの連携による新たな価値創出も重要な戦略の一つになります。

 

地方交通の持続可能な発展と利用者の利便性向上を図るためには、技術的な進展と地域社会との協働による実践的な解決策の模索が不可欠です。これには政府の支援や地域全体の戦略的な取り組みが必要とされるでしょう。

 

 

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