介護施設における送迎バスとISOマネジメントシステム審査における一時的サイト

2024年5月4日付で、山陰放送が、

『動き出したマイクロバスのドアに挟まれ運転手死亡　介護施設の利用者送迎で　シフトレバーをドライブにしたまま車輪止めを外し、車が発進』

と言う見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、考察しました。

《記事の要約》
2024年5月3日、島根県浜田市の介護施設で、運転手の男性が自ら運転していたマイクロバスに挟まれ、死亡するという痛ましい事故が発生しました。

被害者は68歳の男性会社員で、当時介護施設の利用者を送迎していました。

事故は午後3時44分頃に起こりました。男性はマイクロバスを発進させようとしましたが、シフトレバーをドライブのままにし、車輪止めを外し忘れたことに気付きました。

外している最中にバスが動き出し、開けた運転席ドアが施設の建物柱に衝突しました。この衝撃で男性はドアと車体の間に挟まれてしまい、骨盤骨折による出血性ショックで亡くなりました。

この事故の際、男性は事故直後には意識があり、会話も可能だったと報告されていますが、その後急変し、同日午後9時39分に病院で死亡が確認されました。

事故現場では、マイクロバスが再び車輪止めされた状態で発見され、男性が最後に車輪止めを行ったと見られています。

現場にいた介護施設の利用者が外で声を聞きつけ、男性が倒れているのを発見しました。

施設がすぐに警察に通報し、救急処置が行われました。

この悲惨な事故について浜田警察署が詳細な原因を調査中です。

この事故は、車両運転時の注意義務の重要性を改めて示すものであり、今後同様の悲劇を防ぐための警鐘ともなっています。
（記事の要約、ここまで）

《筆者の考察》

坂道に停車する場合を除き、私用の自家用車では、殆どのドライバーが、「車輪止め」はしないのではないでしょうか。

私は、仕事柄、業務用の車両をみると、品質や安全面の観点から「車輪止めの有無」を自然とチェックしていますが、今回のケースも、おそらくマイクロバスの運転管理手順に、「停車中は車輪止めをすること」というルールがあったのでしょう。

ドライブに入れたまま車輪止めを外そうとしたことが、最大の問題点で、安全なのは、「一度エンジンを切る」ことだったと思います。

一般論ですが、以下に「再発防止策」を説明します。

1）安全教育の強化:
運転者は定期的に安全運転研修を受けるべきです。特に、エンジンを始動した状態で車外に出る際のリスクについての教育を徹底する必要があります。

2）安全チェックリストの導入:
車両運行前には安全チェックリストを使った確認を義務付けます。これには、シフトレバーの位置、車輪止めの使用状況、ドアの閉鎖状態などが含まれます。

3）技術的改善:
車両に安全機能を追加することを検討します。例えば、ドアが開いたまま車両が動き出すことを防ぐために、ドアセンサーと連動した自動ブレーキシステムを導入することが考えられます。

4）緊急対応手順の策定:
事故や異常が発生した際の緊急対応プロトコルを策定し、全スタッフに周知徹底します。状況に応じて迅速かつ適切な対応ができるようにすることが重要です。

5）定期的な車両メンテナンス:
車両の定期的なメンテナンスを徹底し、機械的な故障が事故の原因とならないようにします。特に車輪止めやシフトレバーの機能に異常がないかを確認することが重要です。

6）フィードバックシステムの導入:
事故や危険な状況に遭遇した際のフィードバックを収集し、それを安全対策の改善に活かします。運転手や関係者からの意見や提案も定期的に聞き、安全管理体制の向上に努めるべきです。

これらの再発防止策を適切に実施し、日々の安全管理に留意することで、同様の事故を未然に防ぐことが可能です。また、事故発生時の対応もスムーズに行えるよう、訓練と準備を怠らないことが求められます。

話は、少し逸れますが、ISOマネジメントシステム審査で、認証機関に対して、「一時的サイトの審査」という要求があります。

介護事業者が、ISO認証審査を受審する場合、当然、「このような介護施設利用者の送迎プロセス」も審査対象です。

しかし、一部の機関は、「送迎は一時的サイトではない。」と主張し、審査を聞き取りや車両日報のみの確認で済ませています。

おそらく「一時的サイトではない」と主張する理由は「仮設等のサイト施設がない」ためだと思いますが、個人的には、「常設サイト以外でサービス提供を実施する行為」は、どう考えても「一時的サイトの活動」でしょう。

介護施設の場合、送迎担当者が、単に運転免許保持者と言うことだけでなく、車両の安全管理や送迎時の介護者に対する考慮事項を理解して業務に当っているか、書類だけでなく、現場での審査が必要なのは、明らかだと思います。

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