食品安全マネジメントシステム規格の「FSSC22000 Ver.5.1」の「附属書1: CB認証書の適用範囲の文言」では、認証書の登録範囲の文言について、以下の規定があります。
(以下、引用)
認証書の適用範囲の文言は:
1. スキームの適用範囲内でなければならない;
2. 認証された組織が供給し,CBによって監査されたプロセス/活動,製品タイプ及び/又はサービスを明確かつ曖昧さのないように記述しなければならない。
報告書は、適用範囲の記述にすべての活動の証拠を含まなければならない;
3. 販売促進的文言又は宣伝文句的表示を含んでいてはならない。宣伝文句的表示とは,法で義務づけられておらず,食品又はサービスが特定の性格をもつと示唆するメッセージ又は表現である。例には,健康強調表示,栄養強調表示,原産地表示,含まれていない旨の表示(例えば,アレルゲンが含有されていないという表示),有機栽培・飼育表示,品質表示がある;組織がこのような主張を行う場合,それがFSMSの一部であるときは調査しなければならないが,適用範囲の文言の中に表してはならない。
4. ブランド名は,製品認証を示唆することがあるので、使用することが許されない;
5. 英語で表記しなければならないが,別の言語を追加してよい(例えば,認証をされた組織の国の母語)。
6. 組織の法的責任外の下請負又は外部委託を記載してはならない。
7. 会社名は含まない。
8. 貿易,仲買としての活動を含んでいてはならない。
9. 非食品/飼料に関連する製品,プロセス又はサービスへの言及を含んでいてはならない(例えば,医薬品及び家庭薬,タバコ,化粧品,家庭用パーソナルケア,インクに言及してはならない)。
10. その活動,プロセス,製品又はサービスが,認証の適用範囲に定められた最終製品の食品安全に影響を与える可能性があるとき,その活動,プロセス又はサービスの除外事項を含んではならない(ISO/TS 22003:2013の9.1.1)。例外の適用が許される場合は,その理由を報告書に記載し,認証書は例外を適用範囲の文言として含めなければならない。
11. 開発と設計を,別々の活動として記載しない。
これらの活動は,加工又は製造活動の一部がFSSC 22000の認証の適用範囲及び同一法人の一部によって対象とされているときに限って許される。
(引用、ここまで)
FSSC22000認証機関や組織にとっては、上記に挙げた規定は「当たり前」ですが、ISO9001やISO14001認証機関や組織にとっては「ここまで明確な登録表記のルールが規定されていること」に驚かれるかもしれません。
実際、私の知る限りでは、ISOマネジメントシステム規格(例:ISO9001、14001、45001、22000、55001など)では、「登録範囲の文言」について、ISO規格やIAF文書で、明確な文書で規定されていません。
JABが、2011年に「マネジメントシステム認証に関する基本的な考え方 -認証範囲及びその表記-(JAB NS512:2011)」を発行している程度です。
https://www.jab.or.jp/files/items/2202/File/NS5122011V2.pdf
そもそも論ですが、ISOマネジメントシステム認証制度は、企業や組織が特定のISOマネジメントシステム標準(例:ISO 9001やISO 14001)に準拠しているかを評価・確認するための制度です。
以下に、ISOマネジメントシステム認証制度が導入された背景とその理由について、纏めてみました。
1)品質の一貫性と透明性の確保:
企業が国際的に拡大し、グローバルな供給チェーンが発展するにつれ、製品やサービスの品質に対する一貫性と透明性が求められるようになりました。第三者認証制度は、消費者やビジネスパートナーに対してその品質を確認し、保証する手段として導入されました。
2)市場の信頼の向上:
企業や組織がISOマネジメントシステム標準に準拠しているという認証を受けることで、その企業や組織の市場での信頼性や評価が向上します。
3)グローバルな標準の必要性:
世界中で異なる基準や規格が存在していたため、国際的な取引をスムーズに進めるための共通の標準が必要とされました。ISOマネジメントシステムは、このニーズに応える形で開発され、第三者認証制度はその準拠を評価・確認する手段として導入されました。
4)持続可能性と社会的責任:
近年、環境や社会的責任に関する問題への関心が高まってきました。これに対応するためのISOマネジメントシステム(例:ISO 14001の環境管理システム)が開発され、その実施・運用を確認するための認証制度が導入されました。
5)継続的な改善の促進:
ISOマネジメントシステムは継続的な改善を強調しています。認証を取得した後も、定期的な監査が行われ、企業や組織はそのマネジメントシステムの改善を継続的に行う必要があります。これにより、組織の品質や環境への取り組みが継続的に向上していくことが期待されます。
要は、ISOマネジメントシステム認証制度は、国際的なビジネスの透明性、信頼性、そして持続可能性を確保・向上させるためのツールとして導入されました。
したがって、認証機関の認定が「産業分野毎」にされている点から、認証される組織の登録範囲の表記は、「組織が提供する製品・サービス」を基本にするべきだと私は考えます。
例えば、飲食店が提供するサービスは「飲食サービス」で、産業分野は「分野30」ですが、「自分が経営する飲食店のみで使用する野菜を栽培」している場合、「分野1」(農業等)を組織に付与し、「飲食サービス及び野菜の栽培」と登録範囲を表記することは、第三者を混乱させることになります。
「登録範囲の表記」については、少し大袈裟に言えば、ISOマネジメントシステム認証制度(第三者認証制度)の根本に関わることなので、また、別の機会でも触れたいと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ875号より)
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