2024年1月14日付けの時事通信社が、
「知財で稼げ、ブランド果樹 海外へライセンス展開 農水省」
という見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、考察しました。
《記事の要約》
農林水産省は、ブランド果樹などの国産農産物の海外展開において知的財産権を活用する新しい戦略を打ち出しています。
これまでは優良品種の流出防止に注力してきましたが、今後は生産・販売ライセンスを海外の信頼できるパートナーに供与し、ライセンス収入を品種開発の投資に再利用します。
この計画では、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などが、植物の新品種に関する「育成者権」という知的財産権を管理・保護する専門機関を設立。
この機関が海外パートナーにライセンスを供与し、権利使用料を徴収します。
農水省が策定した「海外ライセンス指針」によると、日本の品種を季節が正反対の南半球でライセンス展開することにより、年間通して海外市場へ供給し、日本産品の輸出拡大につながるとしています。
また、海外市場での権利侵害を監視する体制も強化されます。
ライセンス供与には、日本国内生産者との競合を避ける措置や流出時の損害賠償規定の設定も含まれます。
過去には「シャインマスカット」など日本産品種が海外に流出し、大きな影響を与えてきました。農水省は、適切なライセンス契約により得られる収益を年間100億円と試算し、知財戦略による巻き返しを図る方針です。
(要約、ここまで)
この農水省の政策である「育成者権」という知的財産権の管理と「海外へライセンスを供与して収入を得る」というビジネスモデルは、
・今後の日本の人口減少による内需減少を外貨獲得によりカバーする
・海外にライセンスを供与することで、品質の高い優れた日本の農業品種の知名度と需要拡大
に繋がるよい方策だと思います。
ただし、「農産物の品種登録」は、各国単位なので、真面目な海外の生産者にライセンスを与えて、生産量に応じたライセンス収入を得ることと同時に、「違法業者(育成者権を保有する人に無断で生産する業者)」を取り締まるためには、各国での「農産物の品種登録」を進めなければ、「中国におけるシャインマスカット」のように、無断で生産されても、「指をくわえて黙っているしかない」でしょう。
世界中の消費者や卸売、小売業者が、「育成権者に無断で、農産物を栽培し生産する業者」については、「コンプライアンス上の観点から、一切、農産物を受入れません」という価値観になるのが、本来の姿でしょう。
しかし、現実には、「品種登録された農産物が、育成権者が保有する知的財産権を侵害して無断で栽培・生産されている」という要件に該当しない限り、各国の当局は、取り締まりをしないでしょう。
したがって、「各国での品種登録」と「海外ライセンスの供与」は、少なくとも同時進行で進めなければ、国益を損ねることになるのだと思います。
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