共同通信社(2023年9月3日付)が、
「社員の奨学金、企業が肩代わり 21年開始、千社近く利用」
という見出しの記事を報じていました。
この記事の概要は、以下の通りです。
《記事の概要》
企業が社員の大学生時代に受け取った日本学生支援機構の奨学金を返済する「奨学金返還支援制度」の導入が増加している。
2021年4月に開始され、2023年7月末時点で972社がこの制度を利用しており、近々千社を超える見込みである。
人手不足が問題となっている業界では、この制度が求人の魅力を高める要因となり、また離職率の低下にも繋がっている。
従来は給与の上乗せが一般的だったが、新制度では企業が支払方法を選び、直接機構に送金する形式が取られている。
これにより、法人税の控除も可能である。
ただし、企業の支払いが遅れた場合、社員が残りを返済する義務がある。
松本土建という建設会社は、社員の奨学金返済を最大15年間、月2万円補助しており、これにより優秀な人材の確保を目指している。
制度利用者の数は年々増加しており、2023年度7月末時点で2057人となっている。
記事をもとに、「奨学院返還支援制度」のメリットとデメリットを整理してみました。
《制度のメリット》
◆人材獲得:
企業は、この制度をアピールポイントとして優秀な人材を魅了しやすくなる。
◆離職率低下:
経済的負担の軽減により、社員の満足度が向上し、離職率が低くなる可能性がある。
◆税制の利益:
企業は、この制度による支払いを法人税の控除対象として利用できる。
《制度のデメリット》
◆経済的負担:
企業は社員の奨学金返済の一部または全部を肩代わりするため、その分の経済的な負担が発生する。
◆送金の滞納リスク:
企業が制度に基づく送金を滞納した場合、社員が返済の義務を負うことになり、これが社員の負担や不信感を生む可能性がある。
◆選考の難しさ:
すべての社員の奨学金を補助するわけではない場合、誰を対象とするかの選考が難しく、不平等感を生む可能性がある。
仕事柄、多くの組織を訪問し、経営層のお話を聞く機会が多いですが、「徐々に事業規模を均衡縮小して自分の代で廃業してもよい」と内心考えている企業を除き、安定的な経営を長年してきている多くの中堅企業の経営者の「求人難」に対する危機感は相当なものです。
したがって、求人難に悩む企業側の視点で捉えれば、この制度を利用することで、優秀な人材が採用できるチャンスが増えるので、喜ばしい制度でしょう。
ただ、この記事について、ヤフコメを見ると、「何十年も働いてきた社員はやっと少し給料が上がったのに、新入社員は奨学金肩代わりとか、ふざけてるんでしょうか?」とか「子供に奨学金を背負わせたくないという思いで一生懸命働いて学費やら寮費やらを負担しているのに、お金を借りた方が得をするなんて。なんとなく報われない気持ちになる」といった「なんともやるせない心情を吐露」するコメントが多いです。
生まれた時代によって、「損得」が出てしまうのは、やむを得ないこととは分かっていても、恨み節が出てしまうんでしょうね。
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