IAF MD5:2019(品質、環境及び労働安全衛生マネジメントシステム審査工数決定のためのIAF基準文書)では、複数サイトの組織に対する審査工数算定ルールが規定されています。

おさらいですが、MD5の「9. 一時的サイト」では、以下の規定があります。

 

(以下、MD5の9.2より引用)

9.2一時的サイトは、大規模なプロジェクトマネジメントサイトから小規模なサービス/据付サイトまであり得る。このようなサイトを訪問する必要性及びサンプリングの程度は、QMSが製品又はサービスアウトプットの管理に失敗するリスクの評価、又は EMS が環境側面及び影響の管理に失敗するリスクの評価(省略)に基づいていることが望ましい。

QMS及びEMSについては、選定されたサイトのサンプルは、活動の規模及び種類、並びに、進行中のプロジェクトの各種段階及びそれに伴う環境側面及び影響を考慮した上で、依頼者の認証範囲、力量の必要性及びサービスの多様性の範囲を代表していることが望ましい。(以下、省略)

(引用ここまで)

 

つまり、審査する一時的サイトの定義や選定基準は、

◆一時的サイトには、大規模なプロジェクト、小規模なサービス、据付サイトがある

◆一時的サイトを訪問する必要性及びサンプリングの程度の根拠はリスク評価に基づく

◆QMSでは、製品又はサービスアウトプットの管理に失敗するリスクの評価

◆EMSでは、環境側面及び影響の管理に失敗するリスクの評価

◆選定したサイトのサンプルは、以下の点を考慮し、代表的なものである必要がある

・活動の規模及び種類

・進行中のプロジェクトの各種段階

・各段階に伴う環境側面及び影響を考慮する

・依頼者の認証範囲、力量の必要性及びサービスの多様性の範囲を考慮する

ということになります。

 

正直な所、私の知る範囲では、結果としては「3年間の認証サイクルの中で、(まあまあ)適切な一時的サイトを訪問して審査していると言えるかな」の状態だと思います。

しかし、論理的な手順書と一時的サイトの選定根拠の適切性を審査プログラムや審査報告書で、客観的に正当性をしっかり示せるか・・・、という観点でチェックすると、殆どの認証機関が「微妙」だと思います。

 

詳細は省きますが、例えば、組織が建設業の場合、

・認証範囲が、「土木工事、建築工事の施工」なのに、建築の現場には、訪問していない

・訪問した一時的サイトが、実質的に完成物件で、業務が殆ど終了している

・訪問した一時的サイト(道路舗装)が、当日、雨天のため施工が延期になっていた

・認証表記が、工種(橋梁工事、トンネル工事)だが、審査計画していない工種がある

・緊急事態など環境リスクが低い施工現場しか訪問していない

・・・

といったケースは、MD5の規定上、適切に一時的サイトを審査しているとは、言い難いと思います。

 

このように、「一時的サイトの審査」について解説する私ですが、私が認証機関の職員だった時代を振り返れば、当時は、もっといい加減でした。

当時は、まだ、IAF MD5のような国際的な一時的サイトの審査に関する基準文書はありませんでした。

ISOマネジメントシステム規格の認証審査は、初期の段階では、製造業が多かったため、審査は、「サイト内」でほぼ完結できたのです。

しかし、私の経験では、プラント設備の施工をしている組織の審査を担当することになり、現地施工する設備や機器は、工場で製造していますが、それらの設備・機器の施工や試運転は、顧客先であり、結論としては「現地施工や試運転業務は訪問して審査するべきだろう」となりました。

 

しかし、いくつかの認証機関の関係者に聞いた範囲では、当時は、「現地施工を訪問して確認する」という発想は、業界的に希薄だったと思います。

また、「一時的サイトの訪問」をしていた私の所属していた認証機関でも、「とりあえず、現地施工のプロセスを訪問しておけばいい」という考えで、「選定した一時的サイトが適切か」と問われれば、選定基準はなかったので、担当審査員に依存していたと思います。

そして、審査報告書にも、訪問して審査したことは記載していますが、具体的に、このような観点でサイトを選定し、このような点を確認したから、適切なサイトの選定だった、という主張できるような記述は微妙でした。

 

そもそも、世間的には「組織のマネジメントシステムの規格への適合性を審査し認証する」という価値が、多くの人に知られていないので、このような議論は、業界関係者内のマニアックな議論になってしまうかもしれませんが、業界人の矜持としてこだわりたいと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ841号より)

 

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