近年、先進国において、社会インフラの老朽化とその維持管理が大きな課題となっています。
日本においても、道路、橋梁、トンネル、空港、港湾、上下水道施設、学校、病院、プラントなどは、損傷や劣化が軽微な段階で適切な維持・補修を行うことができれば、より長寿命化、ライフサイクルコストの低減が期待できます。
逆に言えば、目先のコストの低減のため維持補修を先送りすれば、後々、膨大な維持補修コストが生じるでしょう。
アセットマネジメントシステム規格(ISO55001)は、組織がもつアセットを、コストとリスクとパフォーマンスの3つのバランスを考慮し、そのライフサイクル期間で最大の資産価値を生み出すことを目的として制定された国際規格です。
なお、現在のISO55001は、2014年版ですが、CD2の投票が終わり、2023年5月のDIS作成に向けて検討・作業中だそうです。
話題は少し逸れますが、ISO55001は、「組織の価値創造とESGの観点」からも注目されているそうです。
以下に要点を整理してみました。
◆国連の「持続可能な開発目標(SDG)」を達成しようとする組織にとって、優れたアセットマネジメントの実施は重要な要素となる。
◆アセットが提供する価値のフレームワークに、SDGsを考慮した企業の社会的責任(CSR)の目標を組み込むことにより、SDGsを成功基準としたアセットマネジメントシステムの構築が可能となる。
◆アセットマネジメントは、財務、環境、社会的影響、リスク管理、サービスの質、パフォーマンスなどの基準をアセットのライフサイクルを通じて最適化することによって、アセットからの価値を実現する。
◆優れたアセットマネジメントは、アセットが組織のCSRを果たすことを保証し、次の事項を要求する。
-要求する目標・性能を組織の目標に結びつけるプロセスを開発・実施すること
-全てのLCSにおいてアセットの能力を保証するプロセスを導入すること
(LCS:ライフサイクルステージ)
-モニタリングと継続的改善のためのプロセスを導入すること
-成功のために必要なリソースと有能な人材を提供すること
◆優れたアセットマネジメントは、SDGsの7つの項目に本質的に貢献する。
◆アセットマネジメントは、経費や活動を効果的に管理し、事業やパフォーマンスの持続可能性など、短期的および⾧期的に意図した成果を達成することで、組織の持続可能性を向上する。
◆アセットマネジメントのプロセスを通じて、排出量の削減、資源の節約、気候変動への適応能力を向上することにより、社会的責任と倫理的なビジネス慣行を明確に示す。
◆CSRの目標とSDGsの成果を達成するために必要なアセットマネジメントの7つの項目は、以下の通り
・6:安全な水とトイレを世界中に
・7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
・8:働きがいも経済成長も
・9:産業と技術革新の基盤を作ろう
・11:住み続けられるまちづくりを
・12:つくる責任つかう責任
・13:気候変動に具体的な対策を
現在、JABのWebサイトによれば、ISO55001の登録組織は76件登録されています。
しかし、日本の場合、登録76件の殆どが、サービスプロバイダといって、アセット所有者ではなく、ISO 55001に基づいて、顧客が所有するアセット(資産)の管理を担当する組織です。
つまり、サービスプロバイダは、顧客の要件に合わせて、資産の最適な管理方法を提供し、その有効性に責任を持つことが求められます。
サービスプロバイダの認証件数が増えることは、日本の特徴ですし、制度普及のために必要ですが、公共施設等の保有者である自治体や鉄道会社、航空会社などのアセットオーナー組織が、もっとISO55001の価値を理解して、登録してほしいものだと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ846号より)
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