組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

今回のテーマは、「シフト審査をしない正当な理由について」について。

 

IAF文書(IAF MD5:2019 3.7)では、シフト審査について、以下の規定があります。

(以下、MD5より引用)

QMS 及びEMS については、製品又はサービス実現プロセスがシフトベースで行われる場合は、CABによる各シフトの審査の程度は、各シフトで行われているプロセス、依頼者によって実証されている各シフトの管理水準によって決まる。

効果的な実施を審査するため、少なくともシフトの一つを審査しなければならない。

他のシフト(例:通常の業務時間外のシフト)を審査しない場合、それを正当化する理由を

文書化しなければならない。

(引用ここまで)

 

この規定の「キーワード」を列記すると、

・QMS 及びEMSの「製品又はサービス実現プロセス」

・依頼者によって実証されている各シフトの管理水準による

・少なくともシフトの一つを審査する

・他のシフトを審査しない場合は、それを正当化する理由を文書化する

ということです。

 

通常の勤務時間帯が、例えば、「9時~17時30分」(通常シフト)の会社において、「17時~25時30分」、「25時~9時半」というシフト勤務があった場合、

1)他のシフトが「製品又はサービス実現プロセス」かどうかを検討する

2)他のシフトの審査の必要性を検討する

3)他のシフトを審査しないのであれば、審査しない正当性を明確に文書化する

というステップを踏む必要があります。

 

まず、上記1)、2)についてですが、他のシフトの業務内容が、製造業の場合、廃棄物管理やシステムメンテナンス、製造プロセス以外の清掃業務、社員食堂業務など・・・つまり「製品実現プロセスではない」のであれば、「他のシフト」の審査を検討する必要はないでしょう。

ただし、これらの業務が、通常シフトで原則的には、実施しない業務である場合は、製品実現プロセスに与える影響度合いによって、審査の必要性を検討する必要があるでしょう。

 

上記3)ですが、審査を実施しなくてよいケースが、「審査実施規定」等で規定できれば、手順書として「これらのケースは他のシフトの審査を○○の理由により実施しなくてよい」と規定しておけばよいでしょう。

また、組織の個別事象・・・つまりケースバイケースで審査の実施を検討し、「他のシフトの審査をやらない」とする場合は、「実施しなくてよいと判断した理由」を例えば、審査工数計算書、審査プログラム、審査報告書等に記録しておくことが必要です。

 

よく「審査しない理由の記録はこれです」と見せられる事例として、審査プログラム等に、

『交代夜勤の為必要なしと判断した』

といった記録をよくみます。

しかし、この記述では、「他シフトを審査しに正当性の理由」としては、不十分でしょう。

「交替勤務のため」というのは、ローテーション勤務・・・要は、「夜勤専門の社員」など「シフト固定要員がいないので、通常シフトを審査すればOK」と言いたいのだと思いますが、ポイントは、そこだけではないと思います。

 

MD5では「各シフトの管理水準」とあるので、「業務に従事する要員管理」としては、「シフトによる差異はない」と言えますが、例えば、製造業の基本の「4M」で考えるなら、「手順」、「材料(原料)」、「設備・機械」について「他のシフト固有の事象があるかどうか」を確認しなければ、「シフト毎の差異がないので、通常シフトのみを審査すればOK」とは言えないでしょう。

 

したがって、他シフトの審査要否の判断ポイントは「シフト毎に固有のプロセスがあるかどうか、及びその管理の程度」だと考えられます。

正当性の理由を個別に判断し、記録する場合は、審査員に「審査が必要なケース」、「審査が不必要なケース」を事例紹介し、正当性の理由の例文を複数提示して、教育するのが一般的ではないかと思います。

 

余談ですが、審査する側の立場で言えば、社員審査員、契約審査員問わず、シフト審査に対する手当等(労務環境)を整備しなければ、「できれば、通常時間帯の審査だけで済ませたい」という心理が働くのは当然です。

認証機関の経営管理者は、このような状況を理解しておかなければ、信頼性の高い審査はなかなか実現できないと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ816号より)

 

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