本コラムの読者は、ISOマネジメントシステム認証組織関係者や認証機関の方が多いので、認定機関が認証機関に対して実施する認定審査に関する規定には、あまり馴染みがないかもしれません。
今回は、認定機関が認証機関に対して実施する組織審査を立会する場合のIAFの規定(IAF MD17:2015)について、少し触れておきたいと思います。
IAF MD17については、JABのWebサイトから、参考訳が掲載されているので、気になる項目について、以下に概略を挙げてみます。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.12 立会いの目的及び範囲に関連する場合は、認定機関の審査員は、認証機関による審査報告書(及びあらゆる必要な追加情報)を入手し、かつレビューしなければならない。
※筆者補足コメント
認定機関は、この規定に従い、認証機関の前回審査報告書や前回審査の指摘事項及びその是正処置結果を事前に取り寄せてチェックします。
ただ、「2.4.12」には「立会いの目的及び範囲に関連する場合」とあるので、組織の事業活動や製品・サービスの一部が認証範囲外の場合は、その理由やどのように認証機関が適用範囲や認証範囲の適切性を判断したのかに関する情報を事前に要求することが必要なのかもしれません。
しかし、適用範囲や認証範囲については、組織と認証機関の営業プロセス(申請前段階)で決められていることも多く、審査報告書の「認証範囲の適切性」の項目は、「認証範囲と構築されたマネジメントシステムの範囲は一致しており適切である」と「適切である理由が、実質的には評価されていない報告書」ばかりです。
したがって、組織審査立会で、認証範囲の適切性を認証審査チームがしっかり確認したか、という観点で認証審査をチェックすると、私の感覚では、「これだけ組織に確認してくれたなら安心」という審査は、10件中1~2件です。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.14 認定機関の審査員は、認証機関 の審査を審査中に非常に重大な切迫したリスク(例えば、安全衛生または環境)となり得る可能性のある状況に気づいた場合には、いかなる場合でも、認証機関の審査チームリーダーが 認証機関 のプロセス及び法的義務に従い組織と共にその脅威に対処することを期待して、認証機関 の審査チームリーダーに脅威の可能性について知らせるために、緊急の非公式会談をもつことを要求しなければならない。
※筆者補足コメント
2.4.14のケースは、「非常に重大な切迫したリスク(例えば、安全衛生または環境)となり得る可能性のある状況」と規定されていますが、例えば、建設現場や重工業の製造部門、化学工場、食品工場、廃棄物処理業等において、審査員、コンサルタント等の立場で、このような状況に遭遇したことがないので、イメージが具体的に湧きません。
例えば、「工場でボヤが発生している」、「食品衛生法の禁止薬物が配合されていた」といった状況は、「リスク」というより「重大な切迫した状態」のように思うので、「緊急の非公式会談」を「審査員に耳打ちして伝える」ことも「非公式の会談」とするなら別ですが、審査を止めて、打ち合せをすることがそもそも難しいと思います。
以前、私が担当した審査で、廃棄物の中間処理、最終処分業者がありました。
詳細は省きますが、後日、私が審査で訪問していた時に、一部の従業員が、違法に埋め立て(最終処分)していた廃棄物があったそうです。
つまり、結果として、審査期間中に、組織が法律違反をしていたのですが、それに私は気づかなかった(敷地が広大なので、私が確認しなかった範囲で不正が行われていたらしい)のです。
仮に、この時、認定審査(組織審査立会)が実施され、認定審査員が、組織の不正に気づいていたら、「認証機関と認定機関で非公式の会談」を実施して、認証機関は、対処することが求められることになるのだと思います。
(このシリーズ(MD17)終わり)
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