本コラムの読者は、ISOマネジメントシステム認証組織関係者や認証機関の方が多いので、認定機関が認証機関に対して実施する認定審査に関する規定には、あまり馴染みがないかもしれません。
今回は、認定機関が認証機関に対して実施する組織審査を立会する場合のIAFの規定(IAF MD17:2015)について、少し触れておきたいと思います。
IAF MD17については、JABのWebサイトから、参考訳が掲載されているので、気になる項目について、以下に概略を挙げてみます。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.10 ある特定の活動の目的を部分的な立会いによって達成することができる場合以外は、通常は、現地審査の全部に立会わなければならない。
※筆者補足コメント
現在、日本の認定機関であるJAB(公益財団法人日本適合性認定)では、IAF MD17の2.4.10の規定(現地審査の全部に立会わなければならない)にしたがって、認証機関が実施する通常の審査(初回審査、サーベイランス、再認証審査)では、現地審査の全プロセスを組織審査立会することになっているようです。
つまり、認証機関の審査チームが、2人で3日間の審査を計画していたとすれば、認定機関の認定審査員も組織審査立会に2人配置することになります。
ただし、コロナ禍においては、組織審査立会を受入れる組織の要望もあり、認定審査チームの配置人数を絞り込むという措置も一部では取られたようです。
MD17の規定を厳密に運用するならば、「規定通りではない」と言うことになりますが、組織審査立会が軒並み成立しなくなるので、「コロナ禍におけるやむを得ない措置」という扱いだったようです。
それから、認証機関の審査計画では、サイトが多い割に審査工数が少ないケースがあり、極論ですが、「5人の審査チームで審査工数トータル5人日」といった審査があります。
こうした審査は、現状、よっぽどの事情がない限り、まず、組織審査立会のサンプリングにならないのではないかと思います。
理由は、認定審査員をひとつの組織審査立会に5人も配置することが難しいからです。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.11 立会いが完了した時には、審査によるあらゆる所見/不適合を含む、認証機関 の パフォーマンスに関するフィードバックが、認証機関 の審査チームに対して与えられなければならない。当該フィードバックには、認定機関 による報告プロセス、認証機関 による回答/対応プロセ ス及び 認定機関 の決定プロセスの概要が含まれることが望ましい。可能な場合、当該フィードバ ックは、認証機関 のマネジメントにも提供されることが望ましい。これは、必ず 認証機関の依頼者が 同席しない状況で、審査の終了後に行われることが望ましい。
※筆者補足コメント
組織審査立会で、認証審査終了後に、通常、組織の会議室をお借りして、認定機関の認定審査チームが、認証機関の審査チームと同行者に対して、フィードバックを実施します。
フィードバックは、JABの場合、指摘区分が、不適合(重大、軽微)、観察事項、改善の機会の4区分なので、指摘候補の説明と指摘までは至らなかった所見(例:よい点や検討が望まれる点)やその他、審査方法や規格の解釈等に対する意見交換を30~60分ほど実施します。
認証機関の審査チーム、あるいは、同行者が、例えば、認証機関の審査部長クラスだと、その場で、不適合候補に対して、「同意」がもらえます。
しかし、最近の認証機関は、事務局に現地審査の経験を積ませる意識が強いのか、役職のない職員が同行者になるケースが多く、つまり、認証審査後の会議では不適合があった場合、「同意がその場でもらえない」ので、別途後日に終了会議を開催するケースが多いようです。
また、MD17の規定に「必ず 認証機関の依頼者が 同席しない状況で、審査の終了後に行われることが望ましい」とあります、
認証審査後の会議は、通常、組織の会議室をお借りするので、大抵は、壁で仕切られた部屋をお借りできるので問題ないのですが、組織によっては、会議室がなく、パーテーションで区切られた応接室が会議の場所となる場合もしばしばあります。
要は、応接室での話しが、「組織に丸聞こえ」状態です。
MD17によれば、この事態は避けなければなりませんが、私の知っている範囲では、このような場合は、小声で話すか、あるいは、別途、喫茶店や外部の貸し会議室を借りるなどの対応を認証機関が取るケースがあるようです。
認証機関、認定機関の会議は、双方、冷静に進めてはいますが、ベテランの認証審査員は、プライドが高く、自分にネガティブな評価が出されると、激高する場面もあり、壁で仕切られていない応接などは、会議室として適さない場所であることも多いようです。
(その6に続く)
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ835号より)
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