本コラムの読者は、ISOマネジメントシステム認証組織関係者や認証機関の方が多いので、認定機関が認証機関に対して実施する認定審査に関する規定には、あまり馴染みがないかもしれません。
今回は、認定機関が認証機関に対して実施する組織審査を立会する場合のIAFの規定(IAF MD17:2015)について、少し触れておきたいと思います。
IAF MD17については、JABのWebサイトから、参考訳が掲載されているので、気になる項目について、以下に概略を挙げてみます。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.7 立会い中は、認定機関 の審査員の活動は、認証機関 の審査チームによる審査の実施に影響を与 えないオブザーバーとしての活動でなければならない。
認証機関の審査チームがレビューする依頼者の文書は、要求に応じて、認定機関の審査員が速やかに閲覧できるようにしなければならない。
※筆者補足コメント
「認定機関は、認証審査に立ち会う場合、オブザーバーに徹しなければならない」は、鉄則です。
つまり、組織や認証機関に対して、社交辞令的挨拶や雑談以外、「じっと認証審査を見ている」ことしかできません。
組織審査立会に際して、事前に資料を入手しているので、認証審査を通じて「疑問点」が生じ、認証審査の日数が長いと途中で、認証機関に確認したいことが増えていきます。
しかし、認証審査中に認定機関が確認できるのは、「認証機関や認証審査チームの考え方や審査チームの経歴」など、認証審査に影響を与えない情報の聞き取りに限定されます。
また、例えば、審査工数の算出について、確認はできますが、「よい、悪い」の判断は、現地審査が終了するまでは、コメントできません。
それと、この規定にあるように、認証機関が確認する文書や記録について、認定審査員は、認証審査員の判断が適切か否かを判定するために、確認する必要があります。
ただ、現実的には、認証審査中に認証審査員と組織のやり取りに、認定機関の審査員が割って「その文書を見せてください」とあからさまに要求することは、審査の流れを止めることになるので、できません。
段取りのいい認証審査員なら、自分が確認した記録を見た後、認定審査員に渡してくれるのですが、中には、組織にダイレクトに返却してしまうので、後から「見せて欲しい」とは言い出しにくいです。
《立会いを実施するための一般指示事項》(※気になる項目を引用)
2.4.9 審査の結果に影響を及ぼす恐れがあるので、認定機関が認証機関の依頼者に対して直接質問することは認められていない。
認定機関の審査員は、審査が実施されている間は、認証機関に対していかなる意見も提供してはならない。
認定機関の審査員は、認証機関の依頼者に対し、いかなる時もいかなる意見も提供してはならない。
認定機関の審査員は、自身の同席及び立会い活動が認証機関の依頼者に干渉と認識されず、むしろ肯定的な見方をされることを確実にすることが望ましい。
※筆者補足コメント
「組織に対して、認定審査員が直接質問することは認められていない」ので、訪問時の挨拶や認定審査の目的等の説明、あるいは「トイレはどこですか?」、「今日は雨が酷いですが、事務所から工場までは、歩いていけますか?」といった認証審査自体に影響を与えない一般的な会話しかできません。
また、前述したように、現地審査が終わるまでは、認証審査チームに対して、雑談や経歴などの聞き取りはできても、それに「よい、悪い」の判断を加えることはできません。
「立会活動が組織に対して肯定的な見方をされること」は、認定機関側の努力では、なんとも、難しいのが現実です。
まれに、組織から「ISO認定認証制度の信頼性向上のために、立会審査に協力するのは当然と思っています」といってもらえることはありますが、おそらく、社交辞令でしょう。
多くの場合は、「立会審査があったせいで、いつもより認証審査員の審査が杓子定規で気づきが得られなかった」、「立会審査のせいで、いつもより指摘が多く出されて、迷惑だった」といった否定的な感想を持つ組織が大半でしょう。
(その5に続く)
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ834号より)
【好評発売中!】
『事例で学ぶコンプライアンスⅠ』(トータルEメディア出版)
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001