組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「組織に該当する産業分野と審査員の力量」について。
このテーマは、何度も本コラムで話題にしていますが、ISO認証審査において「組織に該当する産業分野」と「審査員の力量」についての考え方が「ごっちゃ」になっているケースが、未だあります。
結論から言えば、
・「産業分野」と「審査員の力量」は、必ずしも一致するわけではない
・組織の「産業分野」は、提供する製品・サービスに対する分野である
ということになります。
多くの認証機関では、「産業分野」と「審査員の力量分野」を一致させています。
多くの場合は、例えば、建設業(分野28)であれば、建設業に従事していた審査員に対して「分野28の力量あり」として審査員管理し、建設業の審査に配置していると思います。
このように、「産業分野」と「専門分野」を一致させておくことは、「審査員の配置計画」をする上で便利です。
要は、「分野28」の審査チームを選定する場合、「分野28の力量を持った審査員」の中から審査チームを選べばいいので、計画担当としては、楽です。
ただ、実際には、「産業分野」は、「経済活動分類」の側面が強く、必ずしも「その分野の力量を付与されている審査員が審査に適しているか」と問われれば、微妙な場合があります。
例えば、自動車製造業は「分野22その他輸送装置」です。
過去に自動車製造業に勤務し、エンジン開発をしていた、工場で生産管理経験がある・・・といった経歴の審査員なら「分野22の力量」を付与されるでしょう。
しかし、現在の自動車、特に電気自動車は、「走るコンピュータ」といわれ、専門的知識は、「分野19電気的及び光学的装置」や「分野33情報技術」の力量を持った審査員の方が適しているかもしれません。
このように、「産業分野」=「審査員の力量」とは言えないケースが、多いのです。
例えば、前述した自動車製造業のケースで言えば、エンジンがモーターに変わっても、燃料がガソリンから電気に変わっても、産業分野は、「分野22その他輸送装置」です。
しかし、認証機関によって、「審査に必要な力量」の考え方は異なるので一概には言えませんが、「分野22に加えて、分野19や33の力量を持った人を配置しなければならない」とするならば、それでいいのです。
けれども、「産業分野=審査員の力量」として管理しようとすれば、これまで「産業分野22」だった組織に「分野19や33」を付与することになり、おかしなことになります。
したがって、繰り返しになりますが、
・「産業分野」と「審査員の力量」は、必ずしも一致するわけではない
・組織の「産業分野」は、提供する製品・サービスに対する分野である
という結論になるわけです。
私のこれまでの経験では、研究開発部門を持つ組織だから「分野34産業分野に割り当てなければならない」と主張されていた方がいました。
しかし、「研究開発部門が認証範囲である」=「産業分野34」ではありません。
(注:顧客に提供する製品として、研究開発結果があり、それが認証範囲なら産業分野は34です)
「研究開発プロセスを理解できる審査員を割り当てなければ適切な審査ができない」という考えなら「その通り」かもしれませんが、それは「分野34の力量を有した審査員を配置するべき」という話であって「産業分野」は、あくまでも「顧客(市場)に提供する製品・サービス」で捉えるものなのです。
したがって、「産業分野」と「審査員の力量」が、「ごっちゃ」になっている方は、参考にして欲しいです。
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