2023年5月3日付の日テレNEWSが、

「りんご340トン廃棄…“日本一”青森の農協 冷蔵設備の故障で腐敗か」

という見出しのニュースを報じていました。

 

このニュースによれば、(※筆者が要約)

・五所川原市の「ごしょつがる農協」で、特殊な冷蔵庫が故障した

・故障により、により340トンものりんごが腐敗し、処分されることになった

・農協は250の農家に謝罪し、被害には保険で補償するとしている

・農家の中には去年育てたりんごを出荷していた人もおり、被害は大きい

・取材に答えたりんご農家は、今後このようなことがないように対策してほしいと語った

・・・とのことです。

 

おそらく、「特殊な倉庫」とは、「鮮度保持効果があるCA貯蔵という特殊冷蔵技術を使った倉庫」でしょう。

「CA貯蔵」とは、

・通常の冷蔵機能に加えて、貯蔵庫の大気の組成を「低酸素・高二酸化炭素」にする

・低酸素・高二酸化炭素で、りんごの呼吸作用を抑えて、品質の低下を防ぐ貯蔵方法

のことです。

 

通常の大気の組成は、「窒素78.08%・酸素20.95%・アルゴン0.93%・二酸化炭素0.03%・その他0.01%」という状態ですが、一般的にCA貯蔵の大気の組成は、酸素が2~10%・二酸化炭素2~10%という状態に制御して保管しているそうです。

 

このように、「品質維持」には、絶大な効果がある「CA貯蔵」ですが、デメリットは、

・倉庫の建設費用が高い

・倉庫の運転コストが高い

・倉庫の大気コントロールが難しい

という点が挙げられます。

つまり、小規模な農家では、CA貯蔵は、無理です。

したがって、同一品種を大量生産する青森県の農協でないと、なかなか、CA貯蔵は難しいのでしょう。

 

私は、長野県産のいくつかの品種のリンゴが好きで、「春先まで食べたいなぁ」と思うのですが、以前、お取り寄せしている農家に、冗談っぽく、長期保存について聞いたら、“うちのような小規模生産者では(CA貯蔵は)無理”と一刀両断でした。

確かに、全国にファンがいるようで、お取り寄せ注文で、生産したりんごは、ほぼ完売するようですので、長期保存するメリットはないでしょう。

 

話しは全く変わりますが、今回の「りんごの大量廃棄」について、マネジメントシステム的に捉えれば、「廃棄物の発生」、「悪臭の発生」という点で、「環境影響大」です。

 

以前、倉庫業のコンサルを数社担当していたときに、「環境影響が出る緊急事態として、冷蔵倉庫の故障にともなう農産物等の大量廃棄や悪臭が、あるのでは?」と提案しましたが、そのうちの何社かからは、「そのような緊急事態は、滅多にない。リスクとして洗い出して、手順を作れと言われたら、キリがない」と反対され、「みなさんが、“万が一”のレベルのことで、発生リスクは低いというなら、わかりました」と折れた事があります。

 

しかし、現実には、このように、おそらく、「万が一」よりは「千が一」ぐらいの頻度で発生しうる緊急事態だと思うので、緊急事態として想定し、対応手順を作り、定期的に訓練をして、設備管理能力など、関係者の対応力を高めておく必要があると思います。
 

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