ある組織の認証は、「○○株式会社 △△工場」を認証範囲として、化粧品メーカー向け容器の製造を行っている。

製品(容器の製造)の製品規格書の作成(設計・開発)は、本社(営業部門、製品開発部門)が行っており、当該部門は、「QMS上の顧客」として位置付けされ、QMS組織外であった。

 

したがって、この組織の品質マニュアルでは、

“「○○株式会社 △△工場」(組織)は、製造のみを担っており、設計・開発に該当する業務がないため規格要求事項QMS 8.3項を適用不可能とする”

と規定されていました。

 

つまり、この組織は、本社営業部門や製品開発部門を、いわゆる「社内顧客」としてQMS上の位置付けをして、QMSを構築しているのです。

 

「社内顧客」については、ISO9001:2015年版の「ISO 9001 改訂セミナ-」で、JABが次のような見解を出しています。

 

(以下、ISO 9001 改訂セミナーにおけるJABの説明を引用)

『認証範囲』

〈質問〉

認証では、QMS の適用範囲の決定の適切性について判断が求められることになる。

組織に都合のよいような、意図的な適用範囲の決め方は認められないが、いわゆる「社内顧客」のケースはどう考えるか。同一組織の営業部門を顧客とし、限られた小さい範囲で認証をとるケースは、2015 年版の認証では認められるのか。

<回答>

組織の定義は、「自らの目標を達成するため、責任、権限及び相互作用を伴う独自の機能を

もつ、個人又はグループ」である。

論理上は「社内顧客」という形を考えることは可能である。

しかし、社内顧客以外に利害関係者が存在しない状況は少なく、そもそもの規格の意図「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する場合」や、「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合」を考えると、そのような認証の意味があるのか疑問である。

第三者認証とは、認証機関が社会に向かって認証組織の適合性を証明することである。そのことを認識し、どのような範囲で認証を行うか判断いただきたい。

(引用、ここまで)

 

つまり、

・QMSの構築にあたって、理論上は「社内顧客」は、有り得る

・「社内顧客」とするQMSの場合、「何のために」「誰の要求で」認証取得しているか

がポイントになると言うことです。

 

例えば、組織が、

・経営者が、製造部門のマネジメントシステムの強化を図るために認証取得する

・本社が、製造部門の人材育成や業務効率化促進のために認証取得する

とQMS認証の目的を説明するなら、「社内顧客」とするQMS構築(つまり、8.3項適用不可能)認証取得は、「あり」でしょう。

 

しかし、組織が、

・化粧品メーカーから、QMSの認証取得要求があった

・QMSを取得していると、化粧品メーカーからの二者監査が免除されるため

といった理由で認証取得をしている、と説明するなら、この「社内顧客」とするQMSによる認証取得は、認証機関は、認めてはならないと思います。

 

私見ですが、認証取得申請にあたって、「社内顧客」としたQMS組織については、認証機関は、「申請組織」(○○会社△△工場)のISO事務局だけでなく、場合によっては、「社内顧客」として位置付けられた本社部門に、認証取得目的を確認して、申請受理を検討するべきと思います。

 

また、「社内顧客」のQMS認証については、『認証書』(登録証)に「組織のQMS上の顧客は本社○○部門」、かつ、「QMS 8.3項は適用不可能」と、しっかり明記するべきだと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ830号より)
 

【好評発売中!】

『事例で学ぶコンプライアンスⅠ』(トータルEメディア出版)

 

『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓

(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html

(携帯でアクセスしている方)

http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html

Twitter:https://twitter.com/ariga9001