組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「サーベイランス審査確認事項」について。
ISO認証機関に対する要求事項として、ISO/IEC 17021-1:2015があります。
その中に、「サーベイランス審査確認事項」の要求事項として以下の規定があります。
(規格より引用)
9.6.2.2 サーベイランス審査
サーベイランス審査は、現地審査であるが、必ずしもマネジメントシステムの全面的な審査ではない。
また、依頼者の認証されたマネジメントシステムが再認証審査までの期間においても、要求事項を継続して満たしているとの確信を認証機関が維持できるように、サーベイランス審査は、他のサーベイランス活動と併せて計画しなければならない。
該当するマネジメントシステム規格の各サーベイランス審査は、次の事項を含まなければならない。
a) 内部監査及びマネジメントレビュー
b) 前回審査で特定された不適合についてとられた処置のレビュー
c) 苦情処理
d) 被認証組織の目的の達成及び各マネジメントシステムの意図した結果の達成に関するマネジメントシステムの有効性
e) 継続的改善を狙いとする計画的活動の進捗状況
f) 継続的な運用管理
g) 変更があればそのレビュー
h) マークの使用及び/又は認証に関する引用
9.4.8.3 審査報告書には、次の事項に関する記述も含めなければならない。
a) 証拠の要約と併せて、マネジメントシステムの適合性及び有効性に関する記述で、次に関係する事項。
- 該当する要求事項及び期待される結果を満たす、マネジメントシステムの能力
- 内部監査及びマネジメントレビューのプロセス
b) 認証範囲の適切さに関する結論
c) 審査目的を満たしたことの確認
(引用ここまで)
箇条「6.6.6.2のa)~h)」については、多くの認証機関では、管理責任者、または、ISO事務局に対する審査の中で確認していると思います。
また、多くの認証機関では、これらの確認を確実に実施し、検証した証拠を残すために、チェックリスト的なツールを用意して、確認します。
そのため、審査員によっては、「航空会社の機内安全の案内」のごとく「儀式」と化して、形式的な確認になっている場合もあります。
例えば、製造手順や検査方法に関する審査であれば、手順について担当者に聞き取りすれば、併せて手順書の確認や「もし○○だったら」的なイレギュラーなケースを質問するなど、掘り下げて確認します。
しかし、この「サーベイランス審査確認事項」は、例えば、「苦情は発生していますか?」→「ありません」、「前回審査以降の変更はありますか?」→「ありません」といったように、「聞き取りによる確認だけ」の審査員も意外と多いです。
それと、「審査報告書」では「認証範囲の適切さに関する結論」を記載することになっていますが、こちらも、多くの認証機関では検証漏れが生じないようにチェックボックス形式の確認欄を設けています。
したがって、「現状の認証範囲でマネジメントシステムが運用されていたこと」を理由に「適切」と判断しているケースが多いように思います。
本来は、例えば、認証範囲外としている部門や製品、活動があれば、「組織の認証目的」や「組織の状況の変化」、「リスク及び機会や利害関係者のニーズの変化」などに応じて、審査員は、組織と意見交換し、組織の認証範囲に対する考え方や今後の方向性や意向を確認して「適切か否か」を判断するべきです。
私見ですが、「認証範囲の適切さ」については、管理責任者やISO事務局の審査で確認するか、「審査全体を通じて確認します」とおっしゃる審査員が多いように感じますが、基本的には「トップマネジメント」に投げかけて検証すべき項目だと思います。
審査員の立場で考えれば、現状の仕組みを変更することになる意見交換や提言は、組織と対峙するリスクがあるので、避けたい質疑なのです。
しかし、認証審査に対する認証機関の基本姿勢(例:経営に役立つ審査、社会に貢献できる審査)やISO認証の信頼性向上に深みを持たせる観点からも、頑張って組織とプチ議論や意見交換してほしいものだと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ796号より)
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