組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「製造及びサービスを外部委託する場合の審査工数」について。
ISOマネジメントシステム審査における「審査工数」を決定する要素として一番大きなものは、対象組織の有効人員数です。
審査工数を決定するために考慮する要素には、対象組織の産業分野リスク、サイト数、シフト、一時的サイトなど色々な要素がありますが、単純に「有効要員数」だけで、例を示せば、以下のとおりです。
例:ISO9001の場合の有効要員数と審査工数(初回審査)
・10人:2人日
・45人:4人日
・125人:7人日
・425人:10人日
・1175人:13人日
・4350人:18人日
感覚的な話になってしまいますが、対象要員数が多くても、対象としてる製品及びサービスの産業分野が単一(例:金属部品の製造)の場合と複数(例:化学製品の製造と分析サービス)の場合だと、断然、産業分野が単一組織の方が、時間に余裕があります。
目標管理、文書管理、内部監査、マネジメントレビュー、力量管理・教育といった規格要求事項は、同一組織なら、共通のマネジメントシステムですから、全部門で確認せずともサンプリングすればよいです。
しかし、製造及びサービスの管理プロセスは、産業分野毎にマネジメントシステムが異なるので、サンプリング審査ではあるものの、産業分野の種類が増えれば、それだけ確認する要素が増えるので、「時間が足りない」という感覚を審査員は持つと思います。
審査員が「審査時間が足りない」と感じる例としては、「製造及びサービスを外部委託してる組織」の審査です。
近年は、「ファブレス」といって、製品製造のための自社工場を持たない組織のISO認証組織も多くなっています。
誰もが知っているファブレス組織の代表例は、任天堂やキーエンスで、製造は、他社にアウトソーシングして、製品を調達し、自社ブランドで販売するOEMの形態を取ります。
ファブレスの業態を取るメリットとしては、設備投資や設備維持の投資コストや管理コスト、リスクを回避でき、設計・開発や販売に資源を集中できることが挙げられます。
ただ、ISO認証機関が、審査工数を見積し、こうしたファブレス、あるいは、製造プロセスのほぼ全て(多くの製造委託管理組織の場合は、最終検査以外を製造委託するケースが多い)をアウトソーシングする場合は、注意が必要だと思います。
まず、審査工数ですが、有効要員数は、「製造部門が自社に無い」ので、売上規模に比較して極端に少ないです。
そうなると、例えば、前述した審査工数例で考えると、「電気装置の製造(電気装置の製造委託管理)」という製品の場合、自社に製造部門がある組織で「有効要員425人」だと審査工数は「10人日」ですが、ファブレス組織で「有効要員数が45人」だと「4人日」となります。
言わずもがなですが、ファブレス組織は、製造プロセスを外注しているので、「卸売業や小売業」のように、自社の製造管理の責任が回避されるわけではありません。
したがって、組織は、調達先に対して、製品規格書や製造仕様書を要求し、製造管理、製造記録、検査記録、要員の教育記録や製造プロセスに関する4M 変更(設備、原材料、要員、手順)や品質異常発生時や品質監査等の取決めとそれらのマネジメントをする必要があります。
しかし、審査では、製造委託先について「単なる購買管理レベルの審査」(品質、価格、納期とその実績)で終始しているケースが多いように感じます。
IAF MD5(品質、環境及び労働安全衛生マネジメントシステム審査工数決定のための IAF 基準文書)では、「外部から提供される機能又はプロセスの管理」について、「供給された活動を管理する上での依頼者のマネジメントシステムの有効性、及びこの活動が目標や顧客及び適合要求事項に対してもたらすリスクを審査し評価する」、「(製造委託組織の)リスクを理解して追加の審査工数を決定する」旨が規定されています。
しかし、審査工数の算出や審査でこれらが、しっかりと考慮されているケースは、少ないのではないかと思います。
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