ISOマネジメントシステム規格の認証機関に対する要求事項である「ISO17021-1:2015」において、「認証表記」に関する要求事項は、主に以下の箇条が関係します。

 

(以下、“認証表記”に関連する規格の箇条を引用)

5.1.2 認証の合意

認証機関は、認証活動の提供に関し、この規格の該当する要求事項に従って、各被認証組織と法的に拘束力のある合意書を結ばなければならない。

さらに、認証機関が複数の事務所をもち、又は依頼者が複数の事業所をもつ場合、認証機関は、認証をご使用者授与し、証明書を発行する認証機関と依頼者との間で、その認証範囲に含まれる全ての事業所を網羅する、法的な拘束力のある合意が結ばれることを確実にしなければならない。

 

8.1 情報の公開

8.1.2 認証機関は、次の事項に関する情報を、要請に応じて提供しなければならない。

c) 特定の被認証組織についての名称、関連規準文書、認証範囲及び地理的所在地(国及び市)

 

8.1.3 認証機関が依頼者又は市場に提供する情報は、広告を含めて、正確でなければならない。また、誤解を与えるものであってはならない。

 

8.2 認証文書

8.2.2 認証文書は、次の事項を明示しなければならない。

f) 該当する場合、各事業所における活動の種類、製品及びサービスの種類に関する認証の範囲。誤解を招いたり不明瞭にならないように明示する。

 

8.3.4 認証機関は、法的に拘束力のある取決めをもって、次の事項を被認証組織に要求しなければならない。

e) 認証範囲が縮小された場合、全ての広告物を修正する。

g) 認証範囲外の活動及び事業所にも認証が及んでいると受け取られないようにする。

 

9.1.1 申請

認証機関は、申請組織の権限をもつ代表者に対し、次の事項を確定させるために必要な情報の提供を求めなければならない。

a) 希望する認証範囲

 

9.1.2 申請のレビュー

9.1.2.1 認証機関は、次の事項を確実にするため、認証についての申請及び補足情報のレビューを実施しなければならない。

d) 希望する認証範囲、(※以下省略)

 

9.2.3.3 審査チームの業務の通知

審査チームが実施する業務を明確にしなければならない。この業務は、審査チームに次の事項を要求するものでなければならない。

b) これらが、対象となっている認証範囲に関連する、全ての要求事項を満たしていることを決定する。

 

9.4.2 初回会議の実施

b) 認証範囲の確認

 

9.4.6 審査結論の作成

d) 審査プログラムの適切さを確認する、又は今後の審査に必要な修正(例えば、認証範囲、審査工数又は審査日、サーベイランスの頻度、審査チームの力量)を特定する。

 

9.4.8.3 審査報告書には,次の事項に関する記述も含めなければならない。

b) 認証範囲の適切さに関する結論

 

9.5.2 決定を行う前の処置

認証機関は,認証の授与,範囲の拡大及び縮小,更新,一時停止,復帰,並びに取消しの決定に先立って、効果的なレビューを実施するためのプロセスをもたなければならない。また、次の事項を確認しなければならない。

a) 審査チームによって提供された情報が、認証要求事項及び認証範囲に対して十分であるか。

 

9.6.3.1 再認証審査計画

9.6.3.1.1 再認証審査の目的は、マネジメントシステム全体としての継続的な適合性及び有効性、並びに認証範囲に対するマネジメントシステムの継続的な関連性及び適用可能性を確認することである(※以下省略)

 

9.6.3.2.1 再認証審査は,次の事項を取り扱う現地審査を含まなければならない。

a) 内部及び外部の変更に対するマネジメントシステム全体としての有効性、並びに認証範囲に対するマネジメントシステムの継続的な関連性及び適用可能性

 

9.6.4.1 適用範囲の拡大

認証機関は、既に授与した認証範囲の拡大申請に対しては、申請内容のレビューを行い、拡大の可否の決定に必要な審査活動を決めなければならない。(※以下省略)

 

9.6.5.5 認証機関は、認証範囲のいずれかの部分に関し、認証要求事項について常態化した不適合又は深刻な不適合があった場合、要求事項に適合しないこれらの部分が除外されるように被認証組織の認証範囲を縮小しなければならない(※以下省略)

(引用、ここまで)

 

上記に挙げた関連箇条を確認すると、言わずもがなですが、最終的には、「認証表記」については、「認証機関が確認する責務」を負っています。

ただ、そのプロセスにおいては、現地審査において、「審査チーム」が“認証範囲”について確認し、その結果について審査報告書などを通じて認証機関に報告する事項がたくさんあることがわかります。

 

私の感覚では、「認証機関と担当審査チーム」で、「責任の押し付け合い」っぽくなってしまいますが、傾向として、

・認証機関→認証表記に関する情報は、審査チームが収集し、判断するべきこと

・審査チーム→認証表記は、申請レビュー、認証決定部門が組織と決めること

という認識が強いように思います。

 

ざっくりした表現で、表せば、認証機関は「審査チームからの情報に基づいて最終的には決定します」、審査チームは「機関事務局から指示された範囲を審査するだけで表記は、事務局が組織と調整下さい」という感じです。

 

さて、話題は少し逸れますが、産業分野28(建設)における認証表記について、個人的にISO認証制度が始まった頃から気になっていることが、『建設業の組織にとって、製品は、“建設工事”なのか“建設物(建設構造物)”なのか』です。

 

例えば、大手ゼネコン以外で、「設計事務所登録をしている建築工事請負業」の業態の場合、認証表記は、

『建築工事の設計及び施工』

『建築物の設計及び施工』

といった認証表記が一般的です。

 

「設計・開発」には、「製品設計」と「製品を作るための工程設計」や「工法の開発」がありますが、大手ゼネコンや工法特許を保有する建設会社でない限り、「自社で工法を開発する」ことは滅多にないので、一般的に、地場の建設業においての設計は、「製品設計」か「施工計画の作成」でしょう。

 

ただ、「組織が顧客に提供する製品・サービスは何か」という視点で捉えた場合、「建築工事」と「建築物」では、やや意味合いが違いと思います。

感覚的には「建築工事の設計」は、「施工計画の設計(作成)」、「建築物の設計」は、「製品設計」という印象です。

つまり、「建築事務所登録をしている建設請負業」においては、一般的には、多くの仕事が「施工または、施工管理」ですが、建築物の設計業務を行う場合は、「建築工事の設計及び施工」より「建築物の設計及び施工」の方が、表記としては、適切だと私は思います。

 

さらに、付け加えれば、職人を自ら抱え「自社施工」しない業態の場合は「施工」より「施工管理」という認証表記の方が適切でしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ838号より)
 

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