組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「認証審査におけるサンプリング」について。
2021年度で認証機関を定年退職した業界関係者と約3~4年ぶりに会食をしたときの話です。
この方は、認証機関でスキームマネージャーをされていた方なので、会食が終わった後に振り返れば、私に色々と伝えたかったようです。
印象に残った話は、「最近の若手審査員の審査は、迫力が無い」、「これでは、日本の会社はよくならない」という熱い思いです。
私は、年のせいか、若い頃のように「仕事で熱くなること」は、減退しましたが、それでもわずかに、「矜持を持って仕事をする」、「マネジメントシステムを利用した経営や監査へ有効活用を追求したい」という気持ちは、まだ持っていますので、この方が私に言いたかったことはよくわかりました。
この方がおっしゃっていた「最近の若手審査員の審査は、迫力が無い」の意味は、よく言えば「淡々と審査する」、悪く言えば「審査トレイルがない」ということでしょう。
自分の主観や経験に基づき「べき論」で審査をすると、客観的には「熱い審査」になります。
組織からコンサルティングスキルを信頼されてコンサルタントとして活動する場合やその人の経験則に基づく審査が、組織とマッチした場合は、「組織に役立つ」結果になるでしょう。
しかし、認証審査は、「組織の適合性を確認することは、その組織の認証を活用する市場における“客観性、公平性、信頼性”を確保することが第一」です。
つまり、当然「べき論」は、厳禁ですし、冷静に、淡々と要求事項の適合性を評価することが大事です。
また、この方が言いたかった「審査トレイルがない」(審査トレイル=オーディットトレイル=審査のストーリー)は、よくわかります。
最近の認証審査は、「ISOバブル」の時と違って、殆どが、認証登録から10年、20年、30年と長期間認証継続している組織が多く、食品安全分野など一部のスキームを除き、初回登録案件は、おそらく認証審査全体の5%未満でしょう。
わかりやすくするために、極端な表現になりますが、初回登録審査であれば、「規格要求事項の適合性」をしっかり確認することが、認証審査では優先されるでしょう。
しかし、登録年数が長い組織において認証審査は「健康診断」のようなものなので、これまでの審査結果やその組織の業界トレンドを考慮した「いくつかのストーリーを計画して審査すること」が重要です。
例えば、トップマネジメントの指示がどのように各部門に展開され、計画され、実施され、報告されて、見直しがなされているのか、・・・つまりPDCAを認証審査では確認します。
その「審査の流れをどういうストーリーで確認していくのか」(どの部門やプロセスで確認するのか)を計画することが、認証審査のポイントのです。
言わずもがなですが、短時間で、審査員がすべての業務を確認することは不可能ですから、組織の主要な製品や業務をサンプリングして、どのような手順があり、計画され、実施され、検証され、見直しを行っているのかを、実際の運用事例で審査するのが認証審査です。
しかし、「認証審査は健康診断」と捉えるなら、例えば、毎回の審査で「代表的な業務事例」ばかりをサンプリングするのは、必ずしもよい審査ではありません。
その組織における業務事例としては、業務の割合が低い、または季節的な業務、あるいはレアケースの事例に焦点を時としてあてる審査ストーリーがあってもよいのです。
つまり「淡々と審査する」は、冷静・着実性は高いのですが、「これまでの傾向や意外な見落とし箇所」は、結果として検証が弱くなるわけです。
「この組織に対して、気づきを促し、隠れたリスクを見つけ、経営に役立ててもらいたい」という「熱い思い」がある意味、審査員には必要です。
月並みな表現ですが、審査ストーリーを重視した審査計画やサンプリングがよい認証審査につながるのだと言えるでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ802号より)
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