組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「FSSC22000の附属書2「設計開発」」について。
早速ですが、食品安全マネジメントシステム規格のひとつである「FSSC22000」の附属書2「審査報告書の要求事項」の「インストラクション5」には、以下の規定があります。
“(省略)認証の内容に設計と開発を追加することが許される場合、FSMSとのプロセスの境界を含む審査された内容の記述に注意を払わなければならない。これには、審査計画、審査プログラム、審査報告書における設計と開発の詳細が含まれる”
つまり、
・食品の設計・開発と加工及び製造は、別個の活動としてはならない
・同一法人で設計・開発と加工及び製造が実施されている場合は、審査で考慮しなさい
ということでしょう。
FSSCは、Ver.5になるまで、原則、認証範囲が「工場単位」という考え方でした。
しかし、ISO9001(QMS)では、2000年版発行当時から「製造部門でしっかりモノを作るだけでは、顧客要求事項を満足させることは不可能」という考えは、常識と化していました。
したがって、「なぜ、食品安全マネジメントシステムの世界は、製品規格書以降(製品の設計開発以降)のプロセスだけを審査の対象としているのだろう?と疑問でした。
よって、FSSCのVer.5が発行された時は、「ようやく、食品安全に、製品の設計・開発段階が不可欠で審査に含めなさいよ、という考えになったか」と思いました。
しかし、こうなると影響を受けるのは、認証審査を受ける組織と認証機関です。
組織の立場で言えば、設計開発部門を審査対象にすることで、これまで審査が工場で完結していたにもかかわらず、本社にある設計開発部門が対象になり、食品安全マネジメントシステムの運用上の見直しや調整が必要になります。
認証機関は、組織の設計開発部門が本社にある場合は、審査プログラムやその移動、認証審査コスト増といった変更が生じます。
本来、Ver.5の変更により、組織と認証機関は、この変更に伴う根本的な対応策を取るべきなのですが、組織も認証機関も「現場任せ」になっていると「設計開発部門の取り扱い」が曖昧なまま(要は、Ver.5以前と認証範囲や審査工数、審査方法の変更無し)のケースが多いです。
私見ですが、Ver.5以降は、組織は、例えば「トップマネジメントが工場長から本社役員に変更する必要がある」でしょうし、認証機関は、審査方法や工数(例:審査プログラムに本社設計開発部門を含める、審査工数を増やす)の見直しが必要です。
しかし、それをせずに「従来の食品安全チームの審査の中でなんとか審査したことにしている」認証機関が意外と多いと思います。
FSSCでは、認証機関は、専用ポータルサイトに審査報告書などの情報をアップするので、FSSC財団は、サンプリングで定期的に監視(デスクトップレビュー)しています。
しかし、審査報告書では、設計開発について、なんとなく触れられていれば、その登録組織の事情に詳しくないFSSC財団では、ちゃんと審査されているかどうかは、確認できないでしょう。
組織と認証機関の立場で言えば、従来の枠組み(例:認証範囲や審査方法)をあまり変えたくないのが本音だと思いますが、組織不祥事など、登録組織に問題が発生した場合は、刑事的には警察、民事レベルでは、顧客、取引先はもちろん、認証機関のこれまでの判断の適切性が問われることになります。
つまり、認証範囲がグレー、あるいは、審査方法が甘い場合は、コストを掛けてでもしっかり見なししておくことが重要でしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ805号より)
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