ISO適合性評価制度において「ISO/CASCO」という組織があります。

適合性評価制度について、国際的な相互承認協定を締結するためには、各国の適合性評価制度(認定・認証制度)が国際ルールに従って運営されている必要があります。

そのために、ISO/CASCO(適合性評価委員会、Committee on conformity assessment)は、各種適合性評価(マネジメントシステム、製品、要員、試験所など)の手続き及び適合性評価機関に対する要求事項等を規定した国際規格を作成しています。

 

CASCOは、ISO理事会に直属するPDC(政策開発委員会)の一つで、CASCOの委任事項は、

#1 適合性評価の方法に関する調査検討

#2 適合性評価に関する基準文書の作成

#3 基準文書の理解と使用の促進

があります。

 

ISO/IEC 17021-1:2015の箇条「7.2.9」、「7.2.10」、「7.2.11」に関する「CASCO Clarification」 が 2022年7月25日に公開されているので、下記に紹介します。

 

【質問概要】

ISO/IEC 17021-1:2015の各条項は、以下の要求事項を規定している。

箇条7.2.9

認証機関は、審査及び他の認証活動に関与する全ての要員による的確な業務の実施を確実にしなければならない。要員の起用の頻度及びその活動に関連するリスクの程度に基づいた、関与する全ての要員の力量及びパフォーマンスを監視するための文書化されたプロセスがなければならない。特に、認証機関は、教育・訓練の必要性を特定するために、要員の力量をその実績に照らしてレビューし、記録しなければならない。

 

箇条7.2.10

認証機関は、審査員が力量をもつとみなせる、それぞれのマネジメントシステムのタイプを考慮し、各審査員を監視しなければならない。審査員に対する文書化された監視のプロセスは、現地での評価、審査報告書のレビュー、及び依頼者又は市場からの情報を組み合わせたものを含まなければならない。

この監視は、特に依頼者の視点で見て、認証の通常のプロセスに対する障害が最小限になる方法で設計しなければならない 。

 

箇条7.2.11

認証機関は、それぞれの審査員のパフォーマンスを、定期的に現地で評価しなければならない。現地での評価の頻度は、入手できる監視に関わる全ての情報から決定した必要性に基づかなければならない 。

 

《主な質問事項》

質問1:

規格の意図は、現地評価を各審査員及び審査員が能力を有すると判断したマネジメントシステムの種類ごとに実施することか?

質問2:

コンピテンス(=知識+技能)はパフォーマンスとは異なり、モニタリングのプロセスは、モニタリング方法の組み合わせにより、両方の要素を評価するように設計されなければならない。そこで、パフォーマンスの評価が指示されているものの、定義されていないが、規格の意図は何か、明確にできないか? 評価すべき要素として、どのようなパフォーマンスが含まれるか? 具体的な定義は?

 

【CASCOメンテナンスグループの合意事項(回答)】

質問1の回答:

審査員毎に現地評価を実施する必要があります。

ただし、審査員に対する現地評価は、審査員が能力を有するとみなされるマネジメントシステムの種類ごとに実施する必要はありません。

しかし、モニタリング活動の全体(様々な方法/手段の組み合わせ)により、審査員が、力量があるとみなされる全てのタイプのマネジメントシステムに対して、審査員をモニタリングしていることを示さなければなりません。

 

質問2の回答:

ISO19011:2018 では、力量を「意図した結果を達成するために,知識及び技能を適用する

能力」と定義しています。

ISO 19011:2018 では、パフォーマンスを「測定可能な結果」と定義し(1)パフォーマンスは、定量的又は定性的な所見のいずれにも関連し得る。(2)パフォーマンスは活動、プロセス、製品、サービス、システム又は組織の運営管理に関連し得る。・・・としています。

この規格では、審査及びその他の認証活動に関わるすべての要員について、力量とパフォーマンスの両方を監視することを要求しています。

パフォーマンスとは、サービス(審査及びその他の認証活動)の提供方法に関連し、審査の有効性の尺度となるものです。

規格は、パフォーマンスを評価するための特定の要素を規定するのではなく、パフォーマンスを評価しなければならないことを示し、認証機関が能力及びパフォーマンスを監視するためのプロセスを定義することに委ねています。

(以上、「CASCO Clarification」(2022年7月25日)の紹介)

 

ISO認証機関では、箇条7.2.9、7.2.10、7.2.11を根拠に、審査員の現地評価(ウィットネス)の手順書を作成しています。

多くの機関では、おそらく、例えば、審査員が、ISO9001、14001、45001、27001の4規格の審査員資格を有している場合、それぞれの規格毎に現地評価を実施して、審査員の力量やパフォーマンスを監視・評価する手順になっていると思います。

しかし、ISO/CASCOの説明では、

・規格毎の現地評価は、必ずしも必要ではない

・ただし、監視活動全体で、全ての規格の監視・評価をしていることを示す必要がある

といっています。

 

コロナ禍においては、組織審査に、審査員以外の人(例:認証機関の現地評価者や認定機関の審査員等オブザーバー)が参加することを組織は嫌がります。

したがって、なかなか、規格毎に現地評価を実施することは難しい現実もあるので、この機会に、審査員の力量とパフォーマンス評価の手順を見直す機会にするのもよいのかもしれません。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ820号より)
 

 

【好評発売中!】

事例で学ぶコンプライアンスⅠ』

(トータルEメディア出版)

事例で学ぶコンプライアンス Ⅰ | TEM出版書店 (total-e-media.jp)

事例で学ぶコンプライアンス | 有賀正彦 |本 | 通販 | Amazon

 

『できるビジネスマンのマネジメント本』

(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001