組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「審査範囲と認証文書の適用範囲」について。

 

認証機関の認定基準である「JIS Q 17021-1:2015」の「9.2.1.3項」には、次のような規定があります。

(以下、規格から引用)

審査範囲には,審査の対象となる事業所,組織の単位,活動及びプロセスのような,審査の範囲及び境界を記述しなければならない。

初回認証プロセス又は再認証プロセスが複数の審査からなる場合(例えば,異なる事業所に及ぶ場合),個別の 審査の範囲は 認証範囲全体に及ぶものでなくてもよいが,審査全体として 認証文書の適用範囲と整合したものでなければならない。

(引用、ここまで)

 

つまり、

「審査範囲と認証範囲が異なる場合に利害関係者にわかりやすくそれらを示す活動、及び関連文書を通じて、公表する必要」

があるのです。

 

例えば、以下のようなケースで考えます。

・組織は製造業

・組織の製造プロセス(工場)に構内外注業者が4社存在する

・組織は、認証機関事務局との間で、構内外注業者は認証範囲外として調整している

・認証審査チームは、審査範囲に、構内外注業者4社を含めた

・認証審査チームは、構内外注業者4社に関する指摘を組織に提起した

・同一住所内に認証文書の適用範囲と適用範囲外がある

・工場と別の住所に倉庫があり、社員が使用するエリアは認証範囲で、構内外注業者の作業エリアは認証範囲外だった

・審査計画書には、工場と倉庫の住所の表記はなかった

・認証機関事務局から組織に対して「構内外注業者に審査協力を求めることがあっても審査には影響を与えない」と伝えられている

 

この場合、客観的に、わかりにくいのは、「認証審査チームが認証文書の適用範囲をチームとしてしっかり認識していたのか」という点です。

認証審査チームは、後日談として「組織(元請)の管理状況を確認するために構内外注業者に審査協力してもらった」という考えを示しました。

個人的には、「後から付けた言い訳」に感じましたが、額面通り捉えると、「元請の管理状況やマネジメントシステムの有効性を検証するため」に「認証文書の適用範囲外組織」を審査するケースはあり得ます。

しかし、そうであれば、認証審査における指摘の主語は「構内外注業者を管理する組織の担当部門」にして指摘を起票するべきでしょう。

 

次に、認証審査チームは、「認証文書の適用範囲」について、「認証機関事務局が組織に伝えたことをしっかりと理解し、考慮して審査したのか?」という点です。

組織が「認証機関事務局からは、構内外注業者に審査協力してもらう場合、審査に影響を与えない」といわれたことを主張していますが、それが事実だとすれば、認証機関事務局の伝え方には、改善の余地があるでしょう。

また、認証審査チームは、構内外注業者に対する認証規格に対する適合性の問題があったとしても、指摘の記載方法と組織への説明は工夫するべきだったでしょう。

 

いずれにせよ、

・審査範囲と認証文書の適用範囲の整合性

・審査範囲に認証文書の適用範囲外の組織を審査するときの指摘方法

・認証文書の適用範囲と同一住所の適用外エリアと適用外組織の明確化

といった点について、この事例のケースについては、組織はもちろん、組織が認証された後の利害関係者を含めて、誤解のないように工夫が必要だと言えるでしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ784号より)
 

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