2022年8月17日に、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(現在は解散)の高橋治之理事が、受託収賄容疑で逮捕されました。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の役職員は、「みなし公務員」とされるため、「職務に関する請託を受け、これを了承したうえで賄賂を受取った(あるいは要求したり、約束する)」と東京地検特捜部は判断したわけです。

 

今回、「贈賄」容疑で逮捕されたのは、大会スポンサーである紳士服大手の「AOKIホールディングス」の創業者である前会長、元副会長(前会長の弟)とAOKIの前社長の3人です。

 

今回の「受託収賄」と「贈賄」の容疑は、「AOKIホールディングス」側(正確には、青木前会長らの資産管理会社)から高橋容疑者に渡された「総額5100万円」が、

・東京五輪のスポンサー契約の減額

・大会公式ライセンス商品の製造・販売契約の手続きに関する審査を早める

といった、AOKIに有利な取り計らいをするための「賄賂」であるとされました。

 

時系列としては、

・高橋理事のコンサルティング会社(コモンズ)は2017年9月に青木前会長らの資産管理会社とコンサルタント契約を締結

・2018年にAOKIホールディングスは、大会スポンサーとなり、公式ライセンス商品を販売していた

ので、状況的には、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事として、AOKIに便宜を図ったように映ります。

 

逮捕前の任意の事情聴取では、高橋理事は、

・オリンピックに関することは協力できないとAOKIに伝えていた

・受け取った資金はAOKIの事業全般に関するコンサルタント業務の正当な報酬だった

などと説明し、不正を否定したと報道されてます。

また、青木前会長は、

・元理事の人としての力に期待した

と説明していたそうそうです。

 

これまでの報道情報では、

・AOKIの大会スポンサー料が15億円から半額の7.5億円になった

・AOKIから5億円が大会組織委員会に振り込まれた

・2.5億円(7.5億-5億円)は、電通子会社を通じてコモンズに振り込まれた

・コモンズに振り込まれたうち、数千万円がJOC加盟の2競技団体に支払われた

・2.5億円は、スポンサー料の先払い名目だった

ということが報じられています。

 

ここから想像できることとして、

・コモンズ(高橋理事のコンサル会社)に約1.5億円が残った

(電通子会社から振り込まれた額と競技団体に支払われた差額)

・AOKIにスポンサー料が半額になったことを伝えつつ、実際のスポンサー料は5億円だった

・仮に5100万円が、五輪に関与しないAOKIの社業に関するコンサル料だったとしても、コモンズが得た約1.5億円は、不正に高橋理事(コモンズ)が搾取したのではないか

といったことが考えられます。

 

贈賄側、収賄側が逮捕されたことで、今後の動向は司直の手に委ねることになりますが、今回の事件に関する感想としては、「大会組織委員会が設定したスポンサー料はざっくりしたものなんだなぁ」ということです。

スポンサー料には、支払額によってクラスがあるそうですが、AOKIのクラスのスポンサー料15億円が、7.5億円になってしまう時点で「金額設定はあってないようなもの」と私は感じました。

 

また、7.5億円を「先払い名目のスポンサー料(2.5億円)」と「正式なスポンサー料(5億円)」に分けて、AOKIに支払わせたのも、組織委員会にそのまま7.5億円が振り込まれると高橋理事には、うま味がないので考えられたスキームではないかと思います。

 

受託収賄罪容疑となった「5100万円」については、高橋理事は、「AOKIの事業全般に関するコンサルタント業務」と説明しているようですが、そうだとしたら、「具体的に何をコンサルティングしたのか」について、立証する必要がありますが、もしかしたら、何も出てこないような気もします。

 

話は逸れますが、私の業種は「経営コンサルタント」ですが、一般論として、「事業に関するコンサルタント」であれば、コンサルの成果物としては、教育資料、講習会資料、経営戦略や業務分析に関する資料、コンサル訪問毎の議事録、コンサル報告書などがあるはずです。

つまり、今回の収賄に関してはそう言った成果物を裁判で示し、「五輪スポンサーに関する件とは一切関わりがなかった」と立証できない限り、「クロ」ではないかと思います。

仮に「クロ」ではなかったとしても、「コンサル」というより「口利き」や「仲介」に近いのではないかと思います。

 

それにしても、大会組織委員会のような「公職」に就いた人は、仮に「事業全般に関するコンサルタントで五輪とは一切関係がない」としても、例えば、「スポンサー企業と直接的な利害関係が生じた/ている、場合は、公職を降りる、あるいは、3年以上経過していなければ公職に就けない」といった「公平性に関するルール」を組織委員会は、明確に決めて、役職員の身体検査をするべきだったと思います。
 

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