組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「環境側面に関する順守義務と環境影響を与える緊急事態」について。
環境マネジメントシステム規格は、国内に数多く存在します。
最も代表的な認証規格は、ISO14001ですが、その他にも、エコステージ、エコアクション21、KES環境マネジメントシステムスタンダード、みちのくEMS、環境自治体スタンダード、三重県版環境マネジメントシステムスタンダード、鳥取県版環境管理システム規格、北海道環境マネジメントシステムスタンダード、・・・などゴマンとあります。
これらの環境マネジメントシステム規格の認証審査で、よく議論になるものとして、「順守義務」があります。
要は、事業に関連する法令や条例、地域住民との協定や顧客や取引先からの要求事項を明確にして、定期的に順守評価しなさい、という要求事項です。
この「順守義務」については、「事業に関連する」という観点で捉えると、組織が順守すべき順守義務は、際限なくなってしまいます。
極論を言えば、例えば、今の時代は、コンプライアンスの時代ですから「○○ハラスメント」や「個人情報」といった類いのものも順守義務の対象になってしまいます。
環境省が作成したエコアクション21ガイドライン(要求事項)では、組織が順守義務の対象とすべき環境法規などを以下の2つの区分にしています。
#1 エコアクション21で対象とするもの
環境に関して組織に具体的な義務(届出,許可,規制,基準など)が課せられるもの
(注:ガイドラインでは、具体的な法規名が挙げられてる)
#2 エコアクション21で対象とするかどうかは組織の判断によるもの
罰則がなく努力義務が課せられているものや,法規の目的が労働安全に係るものなど,環境関連法規とは必ずしもいえないもの
つまり、エコアクション21では、規格(ガイドライン)で、管理の対象とする環境法令などを規定しているのです。
ISO14001では、どうなっているかと言えば、規格では、「組織の環境側面に関する順守義務」と規定されています。
言わずもがなですが、「環境側面」は「環境に影響を与える要素(環境影響の原因)」です。
つまり、「環境に影響を与える要素に関して組織が順守すべき事項」が、「組織の順守義務」となるわけです。
ただ、詳細は割愛しますが、ISO14001における「環境」の定義は幅広いです。
したがって、自然環境だけでなく、景観など社会環境や健康など労務環境まで含めれば、「順守義務の範囲」は際限なくなります。
したがって、個人的には、自分が認証機関の審査員なら、
・組織が「環境マネジメントシステム」で管理する順守義務についての考えを聞く
・組織の環境か否かは別にして、適用される法令に関する認識を確認する
・組織が、その法令等について、実質的に管理できているかどうか確認する
・組織が、その法令等について、結果的に管理できているか確認する
といった点を確認し、観察事項や改善の機会として、環境マネジメントシステムとしての管理方法の検討を促すような指摘をするか、あるいは、口頭コメントで終わらすか、「状況を見てから判断」ということになると思います。
少し前に、造園工事や樹木の伐採作業やこれらの工事で生じた木材を中間処理(最終的には木材チップや堆肥となる)する組織に訪問しました。
組織が環境影響として、「高所作業による架線の断線」を環境影響評価表で抽出しているのですが、「順守義務」や「緊急事態」として、例えば、
【順守義務の例】
・森林法(第 10 条の8(地域森林計画対象民有林内の森林の伐採の届出)
・労働安全衛生法第59条(チェーンソーを使用する立木伐採作業者)
・厚生労働省省令(2019年8月1日施行:チェーンソー防護ズボンの義務化)
・労働安全衛生規則第194条の9(作業指揮者)
労働安全衛生規則 第194条の10(転落等の防止、高所作業車作業計画書の作成)
【緊急事態の例】
・送電線や電話線の切断に伴う近隣住民の生活環境への影響
などについて、組織に確認することは必要(※適合か不適合かという2分法の議論では無く)かもしれません。
1996年にISO14001規格の初版が制定されましたが、それから、26年経過し、環境マネジメントシステム認証組織に期待する利害関係者の認識も変化してきたことは言うまでもありません。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ812号より)
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