2022年6月1日付けの朝日新聞が、「クローズアップ現代などを制作するNHK子会社の元社員の横領事件」が報じられていました。
記事によれば、
◆元社員は、取材の移動のためだと偽って旅行会社から新幹線の乗車券などを詐取した
◆警視庁に逮捕されたのは、「NHKグローバルメディアサービス」元社員(44)
◆元社員は、スポーツセンターの庶務・経理を担当していた
◆2021年10月頃、旅行会社に虚偽の申込書を提出し、乗車券などをだまし取った
◆だまし取った乗車券・特急券は、120枚(販売価格計約105万円)
◆スポーツ取材で大阪や博多にスタッフが移動するためだと偽り、即日換金(約101万円)
◆元社員は、同様の手口で2017年7月~21年10月に計780回(総額約1.8億円)を搾取
◆換金して得た現金の一部は新たな購入代金に充て、約1.8億円のうち約2800万円が未払
◆元社員は、住宅ローンの支払いや遊興費に使った
◆元社員は、21年11月に渋谷署に出頭し、2021年12月に懲戒解雇になった
といった経緯だったようです。
このニュースを読んだときに、
・先日報道された博報堂子会社の事件(250億円のギフトカードを発注)に似ている
・結局この手の犯罪は、自転車操業になって、最後は破綻する
・犯罪としては、発覚は時間の問題で、効率も悪いのになぜ手を染めるのだろう
といったことが頭に浮かびました。
※「先日報道された博報堂子会社の事件」については、ご承知の方も多いと思いますが、本コラム(2022年5月27日付)でも触れていますので、興味のある方は、下記URLにアクセス下さい。
http://blog.logcom.jp/?day=20220527
記事からわかることとして、
・額面は105万円分の乗車券等でもJR窓口で換金すると手数料等が引かれ101万円になる
・旅行会社に虚偽の申請を780回行って約1.8億円搾取しても、殆ど返済に充てられていた
・実質的に個人で使用したのは、旅行会社に返済が滞ってると思われる2800万円程度
ということです。
博報堂子会社の事件でもコメントした点もありますが、
・JR側は払い戻し手数料を得るので損はしない
・この犯罪スキームは、搾取し次の発注をしても殆どが返済に充てられ自転車操業になる
・何度も大量の換金をJRの窓口で実行すれば、発覚しやすい
といった特徴があります。
ただ、博報堂子会社の件では「総額250億円もの大量の虚偽のギフトカード発注を受けた印刷会社が、なぜ、事件を起こした担当者以外の博報堂子会社の人に照会しなかったのか」という疑問がありました。
しかし、今回のNHK子会社の場合は、発注した乗車券等が約4年で総額1.8億円と「実際に有り得る発注額」だったので、多少の返済遅れはあるにせよ、自転車操業(虚偽の発注)を繰り返す間は、旅行会社に入金があるので、旅行会社は、NHK子会社に問い合わせをすることもなかったのでしょう。
けれども、結果的に元社員自身が「もうダメだ」と悟って警察に自首するに至るわけです。
勝手な予想ですが、今回、旅行会社への未返済分は、2800万円とのことなので、元社員は自らの資産から返済可能で、金銭的には、NHK子会社が被る被害はないと思います。
ただ、今後の対策として、780回ものJRでの換金情報が、乗車券等を発行した旅行会社や元々の発注したことになっているNHK子会社間で情報共有できる仕組みはできないだろうか、という気がします。
それにしても、想像力が働けば、いずれ破綻し、効率の悪い犯罪なので、元社員は、なぜこんなことをやってしまったのか、思考経路を知りたいと思います。
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