2022年4月30日付けの北海道新聞が、

「航路の大半が通信圏外の携帯 船長が通信手段と申請 観光船の事故前検査で」

という見出しの記事を報じていました。

 

記事によれば、

◆「KAZU I」は、事故3日前の20日に、船舶設備の法定検査を受けた

◆法定検査で、豊田徳幸船長は、陸上との通信手段として携帯電話を申請した

◆申請した携帯電話は、航路上の大半が通信エリア外だった

◆陸上との通信手段は、GPS電話を申請していたが故障のため、携帯電話に切り替えていた

ということです。

 

記事では、「日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が20日に、船舶安全法に基づく年1回の中間検査を行った際に、豊田船長が通信手段を衛星電話から携帯電話に変更すると申請し、JCI側が「海上でつながるか」と確認すると、船長は「つながる」と答え、その場で変更を認めた」そうです。

 

JCIが実施する船舶安全法に基づく年1回の中間検査の実態について、わからないので、あくまでも、私見ですが、「陸上との通信手段の変更」という「命綱」にもなる重要な変更について「聞き取りによる口頭の確認で変更を認める」中間検査方法にも問題があるように思います。

船舶安全法では、20トン未満(カズワンは19トン)の小型船舶の通信手段として携帯電話の使用を認めているそうですが、少なくとも、申請変更の際に、「申請した携帯電話番号と契約キャリア」、「契約キャリアの通信エリアの適切性(航路で使用できるか)」についてチェックして変更を認める必要があるでしょう。

 

また、知床遊覧船は、海上運送法に基づき、緊急時の連絡手段として衛星電話と無線を届け出ていたが、すでに各メディアが報道しているように、衛星電話は、少なくとも1年前から故障し、無線も数カ月前から会社事務所のアンテナが壊れ、自社では受信不能だったそうです。

素朴な疑問ですが、この海上運送法に基づく通信手段の確認は、JCIの年1回の中間検査では、確認する仕組みではないのでしょうか。

 

JCIの検査では、「衛星電話から携帯電話への変更」を確認するのみで、無線設備が使用できる状態の確認は必須では無いのかもしれません。

しかし、そうだとしたら、海上運送事業者に対する国のチェック体制には、「不備がある」とまでは言えませんが、改善の余地があると言えるでしょう。

 

今回の海難事故は、運営会社の管理体制のまずさだけでなく、国のチェック体制の脆弱さも重なった「人災」であったことは、間違いないでしょう。
 

 

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