2022年4月1日付けのダイヤモンドオンラインが、

「【スクープ】丸井G元役員がエポスカードを巡る特許で古巣を提訴、発明対価90億円と主張」

という見出しの記事を掲載していました。

 

記事によれば、(※筆者が記事を一部編集)

◆丸井グループの元常務執行役員が、丸井を相手に東京地方裁判所に提訴した

◆元常務は、傘下のエポスカード社長在任時にビジネス特許を生み出した

◆発明が業績に貢献したとして、受け取るべき対価は約90億円に上ると主張している

◆小売業のイメージが強い丸井Gの成長をけん引するのはエポスカード

◆丸井Gの2022年3月期の連結営業利益は365億円となる見込み

◆エポスカードを中心とするフィンテック事業はそれを上回る410億円に達する見込み

ということだそうです。

 

この報道が、これまでの特許の発明者への対価を巡る裁判と若干異なる点は、なんと言っても、「ビジネスモデルを実現する情報システムの特許」に関するものだからです。

特許の発明者への対価を巡る裁判で有名なのは、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二博士(高輝度青色発光ダイオードの発明)、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑博士(オプジーボの発明)や舛岡富士雄博士(フラッシュメモリーの発明)など多くの事例がありますが、いわゆる「ビジネスモデル特許」では、少なくとも私は聞いたことがありません。

 

ただ私は、「知財ポータルサイト」で、この特許をすぐに検索してみました。

すると、該当する特許として、

・特許権者:株式会社エポスカード

・特許番号:5663696

・登録日:2014年12月12日

・発行日:2015年2月4日

・発明の名称:ポイント管理システム

が見つかりましたが、「発明者」は、ダイヤモンドオンラインの記事にあった「元常務」ではありません。

 

弁理士の栗原潔氏によれば、特許法において「発明者」の明確な定義は規定されていないそうです。また、栗原弁理士は、

(栗原氏の記事から引用)

「・・・「発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指し、単なる補助者、助言者、資金の提供者あるいは単に命令を下した者は、発明者とはならない」とされています。そうなると、今回の訴訟の原告の役員は、自分が実際に技術的アイデアを創作したことを立証しなければなりません。・・・」

(引用ここまで)

と述べており、裁判の最初の争点は「元常務が発明者であることの立証」になることは間違いありません。

 

外野目線だと、常務の立場にあった人は、「エポスカードの構想」や「開発業務命令者」であっても、具体的な「情報システムの開発行為」には、関わっていないような印象を受けます。

元常務が、ポイント管理システムの開発チームに属し、設計図書の作成者に名前を連ねていれば、「発明者」として立証できるかもしれませんが、通常は、打ち合せや議事録に名前が残っている程度ではないかと思います。

ただ、この元常務は、経歴的には、1982年丸井グループ入社し、月賦の集金、売場、新規事業、企画、ITシステム開発などの業務に従事してきたそうなので、単なる「開発業務命令者」ではなく、実務にも携わっていた可能性はあります。

この裁判の今後の動向に注視したいと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ796号より)
 

 

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