組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「疑問を感じる知識とセンスが大事」について。
ISOマネジメントシステムの認証審査は、基本的に、「性善説」で審査を実施します。
例外があるとすれば、組織不祥事が発生した後に実施する特別審査やフォローアップ審査です。
組織不祥事の内容にもよりますが、「検査不正」や「法令違反」が、過失ではなく、故意に組織ぐるみで実施していたケースや以前の認証審査時に、「虚偽の説明をしていた」ケースは、「疑いを持って組織の説明を聞き、関係者にインタビューする」ことになります。
私の経験ですが、上記のケース以外に、「組織の説明に疑いを持って審査をしたケース」が、何度かあります。
詳細は、差し障りがあるので、少し脚色しますが、2つのケースを紹介します。
ひとつ目は、「認証範囲の対象人数をごまかしていたケース」で、もうひとつは、「限られた案件しか提示されなかったケース」です。
前者は、「地方都市にある地場ゼネコン(建設会社)」です。
初回登録審査でしたが、私が「あれ?」と気になったのは、売上と受注リストでした。
受注リストには、受注金額が記載されていましたが、ざっくり暗算しても、説明を受けた売上の半分程度です。
建設業の場合、工事完了時期により、売上を当該年度にするか、翌年度分にするか、といった経理上の事情があるのはわかりますが、それにしても、差がありすぎます。
事務所を巡回しているときに、タイムカードを見つけ、ざっと人数を数えると申請書で申告されている人数よりはるかに多い人数がいます。
色々資料をチェックすると、どうやら、この建設会社は、下請けで工事を請けて、実際に施工する直営班がいるようなのです。
また、インタビューをしている際に、工事部の責任者が、なんとなく「建設業に従事している人っぽくないな」という直感が働き、休憩時間に検索すると「コンサル会社」に所属していることが判明しました。
(※おそらく、認証審査対応として、コンサルタントが組織の工事部責任者を名乗り、回答している)
組織に、審査の中で気づいたこれらの疑問を直接ぶつけることもできましたが、「故意に認証機関に事実を隠して説明している」状況が多く、トラブルを生みそうなので、審査自体は、「何事もなかったかのように」実施しました。
認証機関の事務局に、各状況証拠を提示し、その後の対応を任せました。
後者は、「ITシステムの企画・提供」をしている情報サービスの会社です。
このケースも、最初に感じた疑問は、売上とプロジェクト数、組織人数が、合わないことでした。
この時は、「提示していただいた案件以外に、案件はありますよね?」とダイレクトに質問したところ、「ISOで規定した手順で実施できている案件は、これだけなんです」と正直に組織が吐露してきました。
この時は、確か、「マニュアルや手順書で規定した手順に則って実施されていないプロジェクトが散見された」というような指摘を検出しました。
要は、認証審査では、基本的には、性善説で、組織から提示された文書や記録を検証しますが、「あれ?変じゃない?」という性悪説の視点がないと、ズルい組織に、都合良くだまされてしまうのです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ791号より)
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