2022年2月に、「早稲田大学商学部で、複数の授業動画を同時に視聴したことは不正に当たるとして、この授業の受講者250~300人近くのうち100人ほどの単位を認定しない」としたという報道がありました。

 

この報道のきっかけは、授業動画を配信するオンデマンド授業システム「Moodle」上で、大学側が通知した文書が、Twitterで2月11日に投稿されたことです。

早稲田大では、メディアからの取材に対して、以下のような回答をしているようです。

 

・不正があったのは、商学部の必修科目である「ビジネス法入門」

・受講者の視聴状況を確認したところ、複数の動画の視聴完了時間が同一かほぼ同一だった

・これらの受講者は、パソコンなどで複数のタブや複数の機器を使用した

・したがって、同時視聴(再生)することで、出席扱いにしていた

 

早稲田大学商学部では、単位を取得するには、「出席時間数が授業時間数の3分の2以上が必要」としているそうです。

また、この「ビジネス法入門」では、単位取得の前提条件として、「すべての授業動画を視聴すること」があるそうです。

 

早稲田大学が、オンデマンド授業システム「Moodle」で学生に通知した文章では、

(以下引用)

「もしかしたら、試験でいい点数さえとれればそれでよいと考えている受講生がいるかもしれませんが、それは違います。試験はあくまで単位認定および成績評価を行ううえでの一断面にすぎず、科目によって異なりますが、試験以外に様々な形で所定の勉学を行ったことに対して単位認定および成績評価がなされるのです。そして、このことは法律によって裏づけられています」

(引用ここまで)

と説明しているそうです。

 

個人的には、大学の「単位認定」についての考え方は、「正しい」と考えます。

ただし、「同時視聴は不正と判断します」と事前に、単位取得の条件に補足しておくべきだったと思います。

 

今回の件で、当事者の学生や世間からは、「大学側の判断は妥当」とする意見と「単位不認定の処分はしっくりこない」という意見がそれぞれあるようです。

おそらく「処分はしっくりこない」派は、

・動画を正しく再生したとしても、ながら視聴や寝ていて、ちゃんと見ていないことがある

・同時に再生しても、テキストがあるとしたら、講義の内容は理解できる

・ペーパーテストに合格すればいいのではないか

といった考えがあるからでしょう。

 

しかし、学校における「単位取得システム」の背景には、「講義で伝えられる内容を事前に理解していたとしても、講義を受講し、そしてペーパー試験に合格したことを持って、単位を認定する」という前提があるので「結果さえ良ければ単位を与える」というのは、「学歴」に対する信頼度が無くなるものだと思います。

 

例えば、「高等学校卒業程度認定試験」(高卒認定試験)です。

この認定試験は、「高等学校を卒業していない人が、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験」です。

つまり、高卒認定試験に合格していても、「高卒」ではありません。

「大卒」とは、規定された単位を取得することを持って「卒業」が大学当局から認定される訳ですが、「ペーパー試験が合格なら大学卒業と認定する(大卒)」としたら、「大学の講義」そものもの価値の否定になり、「大学卒業」の信頼度が低下してしまうから、早稲田大学では「動画の不正視聴は単位認定しない」としたわけです。

 

「知っていることでも、(講義を受けるなど)時間を掛けることが単位取得の条件なら、大学は無意味だ」という人は、「大学に行かず社会で活動」すれば良いだけです。

良し悪しは別にして、「学歴」とは、僧侶のように「ある一定の期間、特定分野に関する学業の修行をしたことを証明するもの」なので、「実力(ペーパ試験の結果)があるなら単位を与えてもいいでしょ」というものでは、ないと言うことです。

 

コロナ禍をきっかけに、オンライン授業の機会が以前より増えました。

講義が、オンラインではない時代も、「代返」など出席に関する不正はありましたが、今回の早稲田大学商学部の件は、オンライン時代における「学歴とはなんぞや」をあらためて考える契機ではなかったのではないかと思います。
 

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