(前編からの続き)

しかしながら、「審査報告書」の「配付先」のひとつである「受審組織」からすると、「指摘された内容は熟読するが、審査報告書本文は、正直どうでもいい」というのが本音でしょう。

その理由は、審査報告書本文は、自分たちで「規定していること」、「運用していること」の「事実」が記載されているだけなので、丹念に読んでも、あまり「組織で活用できるところ」がないからです。

 

けれども、審査報告書は「認証登録の可否や継続を判定する判定会議」や場合によっては、「受審者の顧客」が「配付先」となるので、どうしても、上記で引用した認定基準を満たすためには、ある程度のボリュームが必要になります。

 

しかし、認証費用という対価を支払う受審組織からしたら、「たいして読みもしない審査報告書作成費用」に多大な費用は払いたくありませんし、認証機関へのアンケートにも「認証審査費用を下げて欲しい」と要望するでしょう。

けれども、認証機関は、担当した審査チームに、「認定基準を満たすそれなりの報告書」を書いてもらわねば、認定基準を満たしません。

また、本来であれば、しっかりと対価を払う必要がありますが、このご時世、経費を縮小し、利益を上げるためには、「契約審査員への支払いを縮小する」という手段が手っ取り早いです。

 

そうなると、審査員は、現地審査では「組織の仕組みや事情をよく調査し、よく話しを聞くこと」より「審査報告書を手っ取り早く作成するための情報集め」が一番の関心事になります。

「審査を通じて、自分たちが普段気づかなかったことを指摘や示唆してもらいたい」と考える組織からすれば、「審査で自分たちのことをよく知って欲しい」と考えると思いますが、「審査報告書」の作成に時間を掛けられないので、審査員は、ある業務に対する「手順書」、「検査記録や議事録等運用事例」、「記録の概要」の確認に時間を使い、「その業務の手順や中身の良し悪し」については、ほとんど確認しない方もいます。

この状況は、審査を価値あるものにするためには、「不幸なこと」だと思います。

 

仮に、認定機関が「認証機関の審査は、手順や記録の確認が主体で深みがない」と指摘しても、この構造は、替え難いので、「審査員に○○の確認の重要性を再徹底し、審査でよく確認するよう指示した」といった対応で終わりでしょう。

 

この状況の「解決」ですが、ひと言で言えば、「認証審査制度に対する社会的価値」を向上させなければ、相応の認証費用、審査員への委託報酬などは是正しがたいので、解決しない問題だな、と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ786号より)
 

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