2022年2月8日付けのヤフーニュースに、「東京海洋大学准教授」で「海の幸を未来に残す会理事」の勝川俊雄氏が「アサリ産地偽装の構造的な問題」という見出しの提言を寄稿されていたので、気になった箇所を以下にまとめてみました。
〈目をつぶれば誰もがハッピーなアサリ産地偽装〉
勝川氏は、「アサリの産地偽装には構造的な問題がある」と主張します。
つまり、
・国産のアサリを安く買いたいという現実離れした消費者
・購買力を背景に、消費者の希望を川上に押しつける大手量販店
・産地偽装などの不正をしてでも、納品する水産流通
・漁場を産地ロンダリングのために貸し出して延命を図る漁協
という構造です。
勝川氏は、構造的な問題を「消費者」、「大手量販店」、「水産流通業者」、「漁協」の立場で捉えていますが、「卵が先か鶏が先か」でこの問題を考えれば、「国産アサリの漁獲量が急激に減少している現実を知らない消費者」がこの構造的な問題を作る発端であることは間違いないでしょう。
農水省のデータによれば、国産アサリの漁獲量は、
・1960年代から1980年代まで12~16万トン程度
・2000年は4万トン弱
・2020年に4305トン
となっており、「国産アサリは、ほぼ消滅」という実態です。
つまり、スーパーに、お手頃価格で国産あさりが並んでいるなどあり得ないのですが、多くの国民は、この現実を理解していません。
アサリ以外の魚介類も、ウナギ、サバ、ホッケ、シシャモなど、すでに日本では、外国産の食材に依存しているのが現実なのに、消費者は、外国産を避け、結果として、売れないから、業界が暗黙の了解で結託して、産地を偽装するわけです。
〈産地偽装は真っ当な業者を駆逐する〉
勝川氏は、「産地偽装は国内の真っ当な水産業者を駆逐し、在来種の水産資源が消滅する」と主張します。
つまり、
・中国産など海外から安価な水産物が輸入される
・水産物の産地が偽装されることで、ホンモノの国内産の水産物の価格が上がらない
・真っ当な業者の経営状態が悪化する
・漁獲制限と沿岸環境の改善をおこなって、水産資源の回復を待つ余裕が無くなる
・少なくなった資源から獲れるうちに獲ってしまい水産資源が急激に枯渇する
という流れになるわけです。
また、勝川氏は、「アサリの産地偽装の問題を突き詰める」と、消費者は、
1)これまで通り、消費者の希望に合わせて産地偽装された虚構の世界に安住し、お値打ち価格の国産と表示された輸入アサリを食べ続ける
2)不正表示を無くして、外国産のアサリしか選択肢がないという現実を理解した上で、アサリを食べるかどうかを考える
の選択をするしかないと主張します。
私は、「在来種の水産資源を守る」という生物学的な観点で考えると、農水省と環境省が主導して、「漁獲制限」と「アサリの生息域の環境改善」をルール化し、「水産物のトレーサビリティ制度確立」と「産地偽装の徹底取り締まり」をする必要があると思います。
ただ、そうなると、
・国産アサリは高騰する
・スーパーには、中国産など海外産アサリがあふれ、国産アサリは皆無になる
という状況になります。
仮に消費者が、中国産アサリにそっぽを向けば、スーパーなど小売店やそこに下ろしていた水産流通業者は、打撃を受けますが、消費者は国内水産物の漁獲量の現実を正確に認識し、「食べるか、高い金を出して食べるか」を選択するはずです。
漁港は、国内水産物の水揚げが減っているので、「アサリの畜養」という漁場を貸し出すことで利益が得られていましたが、国が「漁獲制限」と「アサリの生息域の環境改善」を徹底することで、国内水産物の個体数回復を待ってもらうしかないと思います。
個人的には、おそらく「国産アサリ」と「中国産アサリ」の品質の違いは、見分けられません。
多くの日本人は「国産アサリを食べた」という「体験」が「価値」と感じるわけです。
しかし、「国産と中国産の品質に差がない」ということを理解し、「中国産を食べて国内水産資源の回復を日本全体で応援しようぜ」という社会常識を作るのが最善策と思います。
「どうしても国産アサリを食べたかったら、いまや国産アサリは高級品」という認識に多くの国民の認識を変えていくことが、国産水産物の個体数の保護の観点からも重要なのでしょう。
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